• 検討中リスト
  • 閲覧履歴

注目度が高まる「産業医」の働き方・資格要件・給料相場は?

産業医とは、職場で働く人の健康のために、組織や労働者に対して専門的な立場から指導・助言などをする医師のことです。労働安全衛生法により、従業員が50人以上の職場は、産業医を選任することが義務付けられています。

労働者の健康に対する意識は、社会全体で高まってきています。2015年12月には、従業員50人以上の職場で、産業医が実施者になることが望ましいとされている「ストレスチェック」の実施が義務化されました。メンタルヘルス疾患による休職・復職や労災など、企業だけで解決することが難しい問題も増えており、産業医の社会的需要は、今後ますます高まっていくことが予想されます。

働く人の心身の健康を守る産業医の仕事内容には、どのようなものがあるのでしょうか。働き方や報酬の相場、産業医になるための要件と合わせて紹介します。

産業医は労働者の健康について、専門的立場から指導・助言を行う医師

産業医の行う仕事の内容

産業医は、職場で労働者の健康管理について、専門的な立場から指導・助言を行います。

産業医の法的な職務は、労働安全衛生規則第14条第1項に示されている9つです。

  • 1:健康診断、その結果に基づく労働者の健康を保持するための措置
  • 2:面接指導、その結果に基づく労働者の健康を保持するための措置
  • 3:ストレスチェック・高ストレス者への面接指導、その結果に基づく労働者の健康を保持するための措置
  • 4:作業環境の維持管理
  • 5:作業の管理
  • 6:そのほかの労働者の健康管理
  • 7:健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進を図るための措置
  • 8:衛生教育
  • 9:労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置

また、少なくとも毎月1回(※)は作業場などを巡視する「職場巡視」をしなければいけません。

作業方法や衛生状態に有害なおそれがあるときは、ただちに、労働者の健康障害を防ぐための必要な措置を講じなければならないとされています。※事業者から産業医に所定の情報が提供され、事業者の同意を得ているときは、巡視の頻度を2カ月に1回以上にすることも可能です。

産業医と主治医の違いとは

産業医は、主治医とは異なり、基本的に診断や処方をすることはありません。

主治医は「日常生活ができるレベル」、産業医は「就業可能なレベル」を基準に従業員を見ます。

また、主治医は患者の利益を優先しますが、産業医は労働者と企業の中立の立場です。

月1回勤務の嘱託産業医の報酬相場は、1時間3万円程度

50人以上の従業員がいる職場では、事業者は産業医を選任しなければいけません。

従業員の健康管理を効果的に行うためには、医学に関する専門的な知識が不可欠だからです。

産業医の働き方としては、月に1回企業を訪問する「嘱託産業医」と、常勤で企業にいる「専属産業医」がいます。選任されている産業医の多くは、嘱託産業医です。

報酬については、専属産業医は週4日程度の常勤で年俸約1,200~1,500万円、嘱託産業医は月1日程度の勤務で1時間約3~5万円が相場です(株式会社エムステージ調べ)。

また、嘱託産業医の勤務予定は、企業側と調整して決めることが多いため、比較的、常勤の仕事やプライベートとの両立をしやすい仕事と言えます。

企業が選任しなければならない産業医の人数は、職場の規模に応じて決まります。

  • 従業員50人以上3,000人以下の規模の職場:産業医1人以上選任
  • 従業員3,001人以上の規模の職場:産業医2人以上選任

そして。従業員1,000 人以上の職場と、特定の業務で500人以上の従業員がいる職場は、専属産業医を選任しなければなりません。

従業員50人未満の職場には産業医の選任義務はありませんが、医師などによる労働者の健康管理が努力義務となっています。実際、従業員50人未満でも、産業医を選任している企業もあります。

産業医科大卒でなくても、特定の研修を修了すれば産業医になれます

産業医になるには、まず医師であることは当然ですが、合わせて以下のいずれかの要件を備えなければなりません。

(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者

(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学などの大学を卒業し、その大学が行う実習を履修した者

(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者

(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師またはこれらの経験者

産業医科大学などの卒業生ではない場合、産業医になる最も一般的な方法は、(1)の日本医師会や産業医科大学が行う研修を修了することです。

例えば、日本医師会の研修は、1時間の研修を1単位として、50単位以上の修了が必要です。

日本医師会産業保健委員会答申(2016年3月)から厚生労働省が推計したデータによると、産業医の養成研修・講習を修了した医師は約9万人ですが、実働している産業医は推計約3万人とされています。

一方で、産業医の選任義務がある事業所は16万カ所(2010年労働安全衛生基本調査、2014年経済センサスによる厚生労働省データ)。産業医の需要は高まっています。

産業医として働くことで、労働衛生やヘルスケアの知識、実務に関するスキルを得ることができます。医師としての働き方の選択肢を増やすためにも、研修を受けてみてはいかがでしょうか。

Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

医師の転職、キャリアアップ応援コンテンツを提供する「Dr.なび」編集部です。医師転職サービスを提供する株式会社エムステージが運営しています。

転職・アルバイトの情報をお探しの医師の方、キャリアアップをお考えの方、ぜひお問い合わせボタンからご相談ください。

関連記事

ページトップへ戻る