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【厚生労働省の調査】医師の労働時間の実態とは?今の働き方、続けられますか?

突然ですが、先生は「今の働き方をこれからも続けたい」と思いますか?
「医師の働き方改革」運用開始まで2年を切った今、医師の働き方・労働時間についてさらに注目が高まっています。


医師が担う業務は、診療や教育、研究だけでなく、患者家族への説明や会議、事務作業など多岐にわたり、特に日本の病院で働く勤務医はオンコールや日勤後の当直勤務などによって長時間労働に陥りやすい傾向があると長年指摘されてきました。近年では新型コロナウイルス流行の影響で、さらに多忙となった先生も多いのではないでしょうか。

そのような医師の長時間労働や休暇・休息時間が確保しづらい労働環境を改善すべく、2024年4月からは労働時間の上限規制を含む「医師の働き方改革」の運用が始まります。

まもなく訪れる医療業界全体の大きな改革を前に、勤務先や働き方を選択する際に「ワークライフバランス」を重視する医師がますます増えてくると考えられます。

今回は、いま医師が置かれている労働環境ついて、厚生労働省実施の「医師の勤務実態調査(※)」の結果をもとに解説します。

令和元年 医師の勤務実態調査:令和元年9月2日~8日に実施。調査票の配布対象は19,112施設・医師141,880名。

回答のあった3,967施設・医師20,382名のうち、性別・年齢・診療科・主たる勤務先の回答のある調査票を分析対象として性別・年齢・診療科・重たる勤務先種別ごとの医師の1週間の労働時間(診療、診療外の別を含む)、タスク・シフト/シェアの取り組み状況等の調査を行ったもの。

時間外勤務が「年960時間」を超える医師は、37.8%

2024年度には、医師に対する時間外労働時間の上限規制が開始されます。その規制の基本となるA水準(休日含め年間960時間)を超えて勤務している病院勤務医は、なんと全体の37.8%を占めていることが分かりました。

なお、年間960時間は 週換算とすると80時間となります。週の労働時間が80時間、というのは、「過労死ライン」といわれる労働と過労死との因果関係判定に用いられる目安の時間と一致します。2か月~半年間で平均80時間を超える時間外労働をしている場合、健康障害の発症との因果関係を認めやすいとされています。

さらに回答者の上位10%の医師は「年1,824時間」を超える時間外勤務であり、長時間勤務している医師の多さが浮き彫りになる結果となっています。

病院・常勤勤務医の1週間あたりの勤務時間

病院で勤務している医師は、1週間にどのくらいの時間勤務しているのでしょうか。さまざまな切り口からの分析結果をご紹介します。

男女別の分布

病院勤務医の勤務時間は、男性医師の41%、女性医師の28%が、週60時間以上であることが分かりました。また男性医師の9%、女性医師の6%が、週80時間以上の勤務となっています。

性別・年代別平均

男性は年代が上がるにつれて減少する一方、女性は40代までは減少し50代で増加するという二峰性の傾向がみられます。

前回の平成28年(2019年)の調査と比較した全世代の平均勤務時間は、男性は減少、女性は増加しています。

性別・家族構成別分布

同居の子どもがいる場合は、いない場合よりも勤務時間が短くなる傾向がある一方、既婚の男性は、勤務時間が長くなる傾向がみられます。これは女性医師の大半が、出産後の育児負担の多くを引き受けているケースが多いことが推測されます。

診療科別平均・診療科別分布

診療科別の週あたりの勤務時間では、最も長いのが外科(61時間54分)、次いで脳神経外科(61時間52分)、救急科(60時間57分)となり、緊急での手術が発生する頻度が高い診療科の多くでは勤務時間が長いという傾向がみられます。

一方、オンコール対応や当直が比較的少ないリハビリテーション科や眼科、精神科、皮膚科などでは勤務時間が短い傾向があります。

なお、「診療時間」「診療外時間」「待機時間」それぞれの内訳も出ています。

外科、整形外科、脳神経外科といった手術のある外科系の診療科では「診療時間」が長く、産婦人科、精神科、脳神経外科では「待機時間」が長いなど、どのような業務に時間がかかっているかの割合は診療科により差が出ています。

病院種別(全体・救急・大学)

病院全体、救急病院、大学病院という勤務先の病院種別でみた週あたりの勤務時間は、大学病院で働く医師が約60時間で最も長くなっています。また、大学病院における診療外時間は約14時間半と長く、勤務時間に占める割合も約24%と高くなっていました。

診療外時間の大部分は、有床病院における当直やオンコール体制のなかでの緊急対応が占めていると推測されます。救急搬送を含めた診療時間外に診療を必要とする患者さまの対応や、それに伴う事務作業、長時間の手術など、所定の勤務時間内に収まらない要因は多くあげられます。

なお前回の平成28年調査と比較すると、診療時間・診療外時間・待機時間勤はすべてにおいて短くなっています。

都市部/地方部別・年代別

都市部と地方部の比較では、20代~50代で大きな差は見られません。60代では、地方部の方がやや少ない傾向がみられます。

なお、前回の平成28年調査と比較すると、60代を除いて都市部と地方部の勤務時間の差は小さくなっています。

医師の勤務実態を把握していない医療機関は、全体の6割

2022年3月~4月に厚生労働省が実施した「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査(※2)」が、今月3日に発表されました。これは2024年4月からの医師の時間外労働時間の上限規制等の適用開始に向けて都道府県及び医療機関における準備状況を調査したものです。

※2「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査:令和4年3月~4月に実施。47都道府県、調査対象病院3,613院に書面により調査。 2024年4月からの医師の時間外労働時間の上限規制等の適用開始に向け、都道府県及び 療機関における準備状況を調査するとともに、特に、規制の適用により見込まれる地域医療提供体制への影響につ いて把握し、必要な地域医療を確保しつつ医師の働き方改革を進めるための医療機関等への支援の在り方の検討に活かすことを目的とした。

医療機関(3,613病院。うち大学病院の本院82病院)からの回答では、副業・兼業先も含めた医師の時間外・休日労働時間を概ね把握していると回答した病院は全体の4割にも満たない1,399病院でした。さらに大学病院の本院においては、大学病院全体の24%という結果となりました。

医療機関が医師の勤務実態を把握することが難しい理由は、医師の勤務体系が所属病院の診療だけでなく、当直や自己研鑽、所属病院以外の勤務(アルバイト)など非常に多岐にわたるためと推測されます。

いまのご勤務先は、先生のご勤務状況の実態をしっかり把握していますか?

医療機関の採用担当の動向は?

2024年4月をターニングポイントとして今後のキャリアプランを考える先生がますます増えてくると推測されますが、同時に医師求人市場にも、様々な変化が予測されます。

実際にDr.転職なびにも 「医師の働き方改革によって、医師が選択する働き方に変化が出ているか」「勤務先や働き方を選択するうえで、ワークライフバランスを意識する医師は増えているか」 など、医療機関から複数のお問い合わせが入っている状況です。

2年後にせまる運用の前から長時間労働の是正に動く医療機関も増えており、人材不足を見込んで体制強化を目的とした求人を出す医療機関も見受けられます。

ぜひこの機会に、時代の流れを見据えながらご自身の今後の働き方について考えてみませんか。

今後の働き方を考える好機にはじめておきたいこと

2024年に運用がはじまる時間外労働の上限規制に先駆けて「ワークライフバランスを重視した働き方に切り替えたい」とお考えの先生は、 時間外労働の少ない医療機関や働き方改革に注力している医療機関の情報収集を早めにはじめておくことをおすすめします。

そのようなときには、Dr.転職なびをご用命ください。医師の働き方改革への取り組み状況など医療機関の内部情報に精通したコンサルタントが、さまざまな情報や選択肢をご案内いたします。

Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

医師の転職、キャリアアップ応援コンテンツを提供する「Dr.なび」編集部です。医師転職サービスを提供する株式会社エムステージが運営しています。

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