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「外来機能報告制度」とは?「紹介受診重点医療機関」の要件やメリットも解説

【解説】令和4年度開始の「外来機能報告制度」とは?「紹介受診重点医療機関」の要件やメリットも解説

令和4年度を初年度としてスタートした、「外来機能報告制度」。

各医療機関からの報告は2023年春に完了し、地域での協議の場を経たのち、2023年10月3日までに全47都道府県が「紹介受診重点医療機関」を公表しています。

本記事では、勤務医の外来負担軽減や医師の働き方改革への寄与も期待される「外来機能報告」と、外来機能報告の結果を受けて協議・決定される「紹介受診重点医療機関」の要点を分かりやすく解説します。

「外来機能報告」とは?

外来機能報告とは、医療機関が外来実施状況等を都道府県に報告する制度

外来機能報告とは、対象医療機関の管理者が年1回、自院の外来実施状況や紹介受診重点病院・診療所になる意向の有無などを都道府県知事に報告する制度です。

この制度の対象として報告が義務付けられるのは病院および有床診療所で、無床診療所については任意での報告が可能とされています。

○ 外来機能報告の実施主体は、病床機能報告対象病院等(病院又は診療所であって療養病床又は一般病床を有するものをいう。)であって外来医療を提供するものの管理者である。

○ また、患者を入院させるための施設を有しない診療所(以下「無床診療所」という。)の管理者も、外来機能報告を行うことができる。

引用:厚生労働省「外来機能報告ガイドライン

外来機能報告制度の背景にある、患者の「大病院志向」

外来機能報告制度が始まった背景には、一部医療機関の外来へ患者が集中してしまうという外来医療における課題がありました。

厚生労働省の「外来機能報告等について」では、以下の2つが要因として挙げられています。

・患者が医療機関の情報を十分に得られず、どの医療機関の外来を受診すべきか分からない

・「大きな医療機関を受診しておいた方が安心」という、患者の大病院志向がある

参照:厚生労働省 医政局 地域医療計画課「外来機能報告等について

上記のような要因から患者が集中する大病院で、外来患者の待ち時間が長くなってしまったり、外来を担当する勤務医の負担が大きくなってしまったりする状況を改善すべく、患者の意識変容を促すこと。

そして、今後の外来医療を持続可能なものとするために始まったのが、外来機能報告制度です。

外来機能報告制度の目的は、医療機関の「分化」と「連携」の推進

外来機能報告制度は、地域における医療機関の役割分担を明確にし、それぞれの医療機関がスムーズに連携することを促すことを目的としています。

具体的には、外来受診を希望する際は

  1. まずは、かかりつけ医機能を有するクリニックや中小病院を受診する
  2. 必要に応じて、高機能病院の専門外来を紹介してもらう
  3. 状態が落ち着いたら、逆紹介を受けてかかりつけ医の外来に戻る

といった患者の流れを形成することが目指されています。

外来機能報告の流れ

外来機能報告は、地域の「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に行う医療機関(紹介重点医療機関)」を明確化することを目指して、以下のような流れで進められます。

ステップ1_ 病院・有床診療所が、都道府県へ「外来機能報告」を行う

一般病床・療養病床を持つ医療機関(病院・有床診療所)は、1年に1回、都道府県に外来医療の実施状況や「紹介受診重点医療機関」となる意向の有無等を報告します。

医療機関から都道府県へ報告する内容は以下の3点です。

1:「医療資源を重点的に活用する外来(重点外来)」の実施状況

・医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来
例)がんの手術のために入院する前に術前の説明・検査や術後のフォローアップを外来で受けた患者等

・高額等の医療機器・設備を必要とする外来
例)CT・MRIの撮影や人工透析、外来化学療法・放射線治療を実施した患者等

・特定の領域に特化した機能を有する外来
例)精密検査や専門的医療、高度医療が必要であるとして他院から紹介された患者等

2:紹介受診重点医療機関となる意向の有無

3:地域の外来機能の明確化・連携の推進のために必要なその他の事項

・紹介・逆紹介の状況、外来における人材の配置状況

・外来・在宅医療・地域連携の実施状況(生活習慣病管理料や在宅時医学総合管理料等の算定件数) 等

ステップ2_ 地域の協議の場において、協議を行う

医療機関からの外来機能報告を踏まえて、郡市区医師会等の地域における学識経験者や代表性を考慮した病院・(有床)診療所の管理者、医療保険者、市区町村等で、地域の実情に応じながら必要な協議を行います。

ステップ3_協議の結果を受けて「紹介受診重点医療機関」を都道府県が公表

上記の協議を経て決定した「紹介受診重点医療機関」の一覧を、都道府県がホームページなどで一般に公開します。

引用:厚生労働省 医政局 地域医療計画課「外来機能報告等について

なお、初年度となる令和4年度の外来機能報告および地域での協議結果を受け、令和5年10月3日までに全47都道府県が「紹介受診重点医療機関」をホームページ等で公表しています。

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「紹介受診重点医療機関」とは?

紹介受診重点医療機関とは?

続いて、外来機能報告で明確化される「紹介重点医療機関」の概要や特徴などを解説します。

「紹介受診重点医療機関」は、紹介患者に対して医療資源を重点的に活用する外来を提供

紹介受診重点医療機関とは、外来機能報告やそれを受けた地域の協議の場を経て、都道府県ごとに決定される「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」のことです。

紹介受診重点医療機関は、かかりつけ医からの紹介状を持って受診する患者の対応に特に重きをおく医療機関として公表されます。

具体的には、手術・処置や化学療法等を必要とする外来や、放射線治療といった高額医療機器・設備等の重点的な医療資源を必要とする外来を提供します。

紹介受診重点医療機関となるための3つの要件

紹介受診重点医療機関に認定されるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

参照:厚生労働省 医政局 地域医療計画課「外来機能報告等について

要件①医療資源を重点的に活用する外来(件数)の割合が一定以上

すべての外来患者の中で、「医療資源を重点的に活用する外来」に該当する患者の割合が「初診の外来件数の40%以上 かつ 再診の外来件数のうち25%以上」である。

要件②紹介受診重点医療機関となる医療機関の意向

紹介受診重点医療機関となることについて、医療機関の意向が「ある」。

(要件①を満たさない場合)要件③紹介率・逆紹介率やその他参考とすべき事情

「紹介率が50%以上 かつ 逆紹介率が40%以上」である。

※紹介率・逆紹介率の水準も満たしていない場合は、その他の参考とすべきデータや当該医療機関が地域で担っている役割等を活用して協議する。

紹介重点医療機関の受診時は、かかりつけ医からの「紹介状」が必要になる

なお紹介重点医療機関に受診をする場合は、原則 かかりつけ医から発行される「紹介状(診療情報提供書)」を持参する必要があります。

引用:厚生労働省リーフレット「始まります。紹介重点医療機関。」

引用:厚生労働省リーフレット「始まります。紹介重点医療機関。

紹介重点医療機関は、紹介状なしで受診する患者に対して一部負担金(3割負担等)とは別に特別費用(初診の場合は7,000円以上、再診の場合は3,000円以上)の徴収が義務付けられています。

この特別費用の負担増によって大病院志向であった患者の意識変容を促し、「まずは かかりつけ医を受診する」と患者の流れが変わることが期待されます。

「かかりつけ医」となる医療機関では、外来患者や紹介状の需要が増加する可能性も

上記のような大病院の外来への受診抑制策によって、かかりつけ医機能を有する医療機関では外来患者の増加が見込まれます。

また紹介重点医療機関への受診を希望する患者から、紹介状(診療情報提供書)作成依頼が増える可能性もあるでしょう。

その際には書類作成に関するタスクシフティングを行うなど、医師の業務負担を軽減する対策が必要になってくるかもしれません。

▼紹介先を困らせない「紹介状作成のポイント」をご紹介

医療機関が「紹介受診重点医療機関」となることのメリットは?

医療機関が「紹介受診重点医療機関」となることのメリットは?

紹介受診重点医療機関のメリット①「紹介受診重点医療機関入院診療加算」を算定できる

上述のように、かかりつけ医機能を有する医療機関では外来患者や紹介状の需要増が期待できます。
その一方、紹介受診重点医療機関では外来患者の減少による外来収益減が懸念されます。

この収益減を補填する意味も込めて、令和4年度の診療報酬改定では、新たに「紹介受診重点医療機関入院診療加算」が創設されました。

この加算では、地域医療支援病院以外の病院 かつ一般病床200床以上の病院において、800点を入院初日に算定できます

また、外来機能報告で各医療機関における外来の機能分化が進むことで、今まで外来患者対応に費やしていた勤務医のエネルギーを入院診療に向けられるようになります。

つまり「入院診療の質が向上する」とも考えられることから、紹介受診重点医療機関を入院基本料等加算で手厚く評価するという側面もあるようです。

紹介受診重点医療機関のメリット②外来患者の待ち時間を短縮できる

外来機能報告で地域における医療機関の役割分担が明確になることで、効率的かつ質の高い外来医療提供体制の整備が可能になります。

その結果、患者はより円滑に診療や検査などを受けられるようになり、外来の待ち時間短縮にも繋がることが期待されています。

紹介受診重点医療機関のメリット③勤務医の外来負担を軽減できる

外来機能制度施行をはじめ、政府では「大きな医療機関を受診しておいた方が安心」という大病院志向から、「まずは、かかりつけ医を受診する」という患者の意識変容を促しています。

かかりつけ医および紹介受診重点医療機関の役割分担が浸透することで、一部の医療機関に集中していた外来患者の流れを分散することが可能になるでしょう。

その結果として、これまで多くの外来患者に対応していた勤務医の業務負担が軽減することにも繋がります。

以上、令和4年度を初年度としてスタートした「外来機能報告」と「紹介受診重点医療機関」の要点をご紹介しました。

今後も最新の動向・情報を入手しながら、ご自身の業務内容や働き方への変化や影響を随時キャッチアップしていきましょう。

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Dr.転職なび編集部

ライター

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