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【調査】4割以上の医師が経験!バーンアウト(燃え尽き症候群)の実態と対処法は

医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)の実態と対処法を解説

バーンアウトとは、今まで真摯に仕事に取り組んできた人が まるで燃え尽きてしまったかのように急激に意欲や熱意を消失してしまう状況のことをいいます。

このバーンアウトは、1970年代にアメリカの精神心理学者のハーバート・フロイデンバーガー博士が提唱した概念で、「燃え尽き症候群」とも呼ばれています。

50年以上も前から、警鐘を鳴らされてきたバーンアウト。

一般企業で働く社会人だけではなく、医療機関で働く「医師」にとっても、決して珍しくないものとなっています。

そこで今回はDr.なびの医師会員584名のご協力のもと、「医師のバーンアウト」の実態について調査しました。

バーンアウトとは、どのような状態?

最初に、バーンアウトの定義や具体的な症状を確認していきましょう。

ICD-11におけるバーンアウトの定義は?

WHOが策定する「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)」は、傷病や障害などについて国際的に統一された統計分類を行うことを目的に、世界中の医療機関や研究機関向けに策定されるガイドラインです。

2022年発効の最新版である「ICD-11」では、ゲームする時間をコントロールできないといった症状が続く「ゲーム障害」が新たな依存症として盛り込まれたことが話題となっていました。

実はこの「ゲーム障害」と同時に追加されたのが、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に関する定義です。

このなかでバーンアウトは、「適切に管理されていない慢性的な職場ストレスに起因するもの」とされています。

また、特徴として「エネルギーが枯渇するかまたは消耗したという感覚」「仕事への忌避感の増加、または仕事に関する否定的ないし冷笑的な感情」「能率の低下」の3つの点が挙げられています。

なおIDC-11におけるバーンアウトは、病気・障害とは区別されており、あくまで職場におけるストレスによって健康に悪影響が及んでしまう不調の一つと分類されています。

バーンアウトすると出現する、具体的な3つの症状

バーンアウトについては、さまざまな研究が進んでいます。

国際的に用いられている指標では、アメリカの社会心理学者であるマスラック博士を中心とした研究グループによって開発された尺度「マスラック・バーンアウト・インベントリー (Maslach Burnout Inventory:以下 MBI)」というものがあります。

このMBIによると、バーンアウトの代表的な症状は以下の3つとされています。

バーンアウトの代表的な症状

①情緒的消耗感

情緒的に仕事に力を尽くした結果、疲れ果ててしまった状態をいいます。

単なる疲労や消耗感ではなく、「情緒的」な消耗感であることが特徴とされています。

例)自分の仕事がつまらなく思えてしまう、身体も気持ちも疲れ果ててしまっている など

②脱人格化

顧客(医師の場合は患者)に対して、彼らの人格を無視した 思いやりのない態度を取ってしまう状態をいいます。

①の情緒的消耗感で情緒的なエネルギーを消耗してしまうと、人は自分を守るために非人格化の行動を取るようになります。

例)思いやりに欠けた言動をする、相手を威圧する、紋切り型(マニュアル通り)の対応をする、同僚や顧客の顔を見たくなくなる など

③個人的達成感の低下

上記の①情緒的消耗感や②脱人格化の状態によって、患者や同僚など周囲とのコミュニケーションに齟齬が出てしまいます。

その結果として提供するサービスの質そのものが低下し、仕事に対する達成感や有能感が著しく低下した状態をいいます。

例)自分には能力がない、やりがいが得られない、今の仕事は自分に向いていない など

医師は、バーンアウトしやすい職業?

このような症状が発現するバーンアウトは、顧客と直接コミュニケーションを取りながらサービス提供することを職務とする人が陥りやすいとされています。

代表的なものとしては、教員、ヘルパー、看護師などが挙げられます。

そして日々患者の健康や命と向き合い、多職種で連携しながら、マニュアル通りには進まない難易度の高い仕事を担っている医師という職業も、その1つです。

また、患者など他者とのコミュニケーションのほかにも、長時間労働や人材不足による過重な負担や、研修医制度や医局への所属など医師という職業ならではの特殊な労働環境も、医師として働く一人ひとりの心身に影響を与えていると考えられます。

近年では、なかなか収束のめどが立たず長引く新型コロナウイルスへの対応をしてきた医師にバーンアウトの症状がみられる例もあるようで、本アンケートにおいてもその兆候がみられました。

際限なく繰り返される診療と、こなせないほどの過重な業務、慢性的な人材不足といった環境の中でもひたむきに患者と向き合う医師たちが、極度の消耗ののちにバーンアウトに陥ってしまうことは想像に難くありません。

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医師584名の回答にみる「医師のバーンアウト」の実態

ここからは、Dr.なび会員に実施したアンケートでお寄せいただいた回答をご紹介していきます。

バーンアウトの経験がある医師は、全体の4割を超える

今回のアンケート調査では、約42%の医師が「バーンアウトと思われる状態を経験したことがある」と回答しました。

また、先輩や同僚など自分以外の身近な存在についても聞いたところ、こちらも約42%の医師が「身近にバーンアウトした医師がいる」と回答しており、医師のバーンアウトは決して珍しくないという状況が伺えます。

Q:医師として働き始めてから、「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と思われる状態になったことはありますか?

Q:医師として働き始めてから、「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と思われる状態になったことはありますか?

Q:まわりに「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になった先輩や上司、同僚、後輩の医師はいますか?

Q:まわりに「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になった先輩や上司、同僚、後輩の医師はいますか?

フリーコメントでは、以下のような意見も寄せられました。

・先輩や後輩、知り合いだけでも、何人も該当者を知っています。失踪した人も、何人かいます。
普段から抜きどころがないとそうなりやすいようで、特に人付き合いが少ない人に多い印象です。(30代女性/大学病院勤務)

当てはまったら要注意?バーンアウトした医師に起きた「異変」は?

次にバーンアウトした経験のある医師へ、具体的にどのような不調が見られたか聞きました。

回答では、

・「身も心も疲れ果てたと感じる」

・「仕事を終えても達成感が生まれない」

・「今の仕事は自分に向いていないと感じる」

という異変を多くの医師が挙げています。

また、選択肢のうち1つだけをピンポイントで挙げる医師は少なく、79.8%の医師が2つ以上の不調を挙げているという点も印象的でした。

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になった時、以下のいずれかに当てはまることはありましたか?(複数選択可)

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になった時、以下のいずれかに当てはまることはありましたか?(複数選択可)

「専門医取得後」と「初期研修・後期研修時」にバーンアウトした医師が特に多い

続いてバーンアウトした経験のある医師へ、どのようなタイミングで不調が出現したかを聞きました。

回答は、多い順に「専門医の取得後(20.1%)」「初期研修時(19.8%)」「後期研修時(16.5%)」でした。

この3つの回答数を合算すると全体の56.4%となり、バーンアウトした経験のある医師の半数以上を占めているということになります。

医師としてのキャリアをより高めていく礎となる「専門医」を取得し終えた医師、そして医師として歩み始めたばかりの初期研修・後期研修の若手の医師たちが置かれている状況は、バーンアウトするリスクが比較的高い環境であることが推測されます。

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になったタイミングやきっかけを教えてください。(複数選択可)

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になったタイミングやきっかけを教えてください。(複数選択可)

フリーコメントで寄せられた医師のエピソードも抜粋してご紹介します。

専門医取得後の喪失感

・ほぼ専門医、指導医資格取得して、もう充分と思った。(50代男性/一般病院勤務)

・心カテをやり尽くした感じがした。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

初期研修・後期研修

・実際の業務を通じて初期研修の視点で将来像を意識した時に、希望する将来像と異なると感じた時。(30代男性/クリニック・診療所勤務)

・研修医一年目なんて、休みは全くなかった。夜中に家にいると輸血を外してくれとか、コールが来たりした。
あほくさくなって、一週間逃避旅行した。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

・研修医2年目の時。頭に靄がかかったような感覚から始まり、疲労が日に日に増し、ある日朝布団から出られなくなった。
医師3年目に再燃。投薬のお陰で暫く勤務を続けられたが、ギリギリの状態で地獄の辛さだった。
再燃後 半年で退職し、3ヵ月間、海外を旅した。
首都圏へ転居を契機に、慢性疲労に陥った。電車通勤に強いストレスを感じる。
結局は、週2日非常勤に落ち着いた。(40代男性/一般病院勤務)

・初期研修半年で先輩から厳しく指導され、初めて担当したガン末期の患者がお亡くなりになった。
もうすべての役目が終わったと思い、自殺しようとした。(40代女性/一般病院勤務)

・初期研修医1年目は寝ている時間以外、休日もなくほぼ病院で1年間を過ごした。
研修医2年目に入った頃、朝起きて病院に向かうとすると吐き気がして、タフだと思っていた自分の体にストレスによる変調を実感した。
たまたまローテート先が変わる時期に重なり、新しい研修先で理解ある指導医に恵まれ、生活にon-offを作れるようになり、その後「ストレス」が「やり甲斐」に変わっていった。
その指導医に支えられ現在の科に進み、いまの自分がある。(50代男性/一般病院勤務)

・研修医の頃、意地悪い指導医に耐え切れず、突発的に出勤できなくなった。
当時は、家に帰って寝るまではずっと病院で過ごしており、周囲に相談できる人がいない環境であった。
家族にも、相談はできなかった。(40代男性/一般病院勤務)

・初期研修を終え、後期研修になったとたん働く意欲が低下した。(30代無回答/大学病院勤務)

バーンアウトした原因で最も多いのは、「業務量の多さ」

続いて バーンアウトした経験のある医師へ、バーンアウトしてしまった原因について聞きました。

特に多くの医師が選択した回答は、以下の4つとなりました。

・「業務量の多さ」

・「長時間労働」

・「十分な休日を確保できない」

・「上司や先輩医師との人間関係」

業務量の多さや長時間労働などの量的な意味での過重な負担がある労働環境におかれた医師が多く、さらには上司や先輩との人間関係でエネルギーを費やした結果、心身ともに消耗してしまうといった状況が伺えます。

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になった原因は、どんなことだと思いますか?

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になった原因は、どんなことだと思いますか?

そのほか、フリーコメントで寄せられた医師のエピソードも抜粋してご紹介します。

ハードな当直業務

・当直で忙しくなったころ。眠れなくなり、胃腸の調子が悪くなった。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

・当直が週3回あったのがきつく、涙が止まらなかった。(30代女性/クリニック・診療所勤務)

・当直が増えたあと、起き上がれなくなった。(40代男性/一般病院勤務)

月28日くらいオンコール。平均2~3回は呼ばれる。下手すれば徹夜という状況が続いた。(50代男性/その他勤務)

・三次救急病院に勤めていたころ、当直・救急待機の負担が大きく、疲れ果ててしまった。(30代女性/一般病院勤務)

・救急医療強化のために、医師2人態勢で365日自宅待機を強いられた。(50代男性/一般病院勤務)

長時間に及ぶ労働

・1週間で7時間しか寝られないほどに、仕事が続いた。
救命できてもうれしいとは思えなかったし、余命を即座に見据えることができ、まるでベルトコンベアーの上に患者さまが流されてくるように思えた。(60代女性/非常勤のみ)

・とにかく忙しかった。家にいるのは8時間、当直も月10回。
そこそこ仕事が出来たので、仕事が出来ない数人の同期の仕事をどんどん回されたのが1番きつかった。(50代無回答/一般病院勤務)

・病院勤務中も業務量の多さや、責任感から、常に疲れがとれないと感じていた。
そこで、環境変化の期待もあり、退職。
在宅診療中心のクリニックでの仕事へ変えたところ、ほぼ24時間365日常にオンコールの状態に。心身共に休むことができなくなり、気力が尽きたような状態になってしまった。(50代男性/その他施設勤務)

・休みのない忙しさと、自分の能力以上の物を求められて鬱になった。(40代女性/クリニック・診療所勤務)

・連日の看取りと、激しいせん妄患者の対応で疲弊。看取り退院の数時間後に、また新規入院を受けるという連続だった。
入院待機患者リストが貼りだされていたが、対応しても対応しても、そのリストが減っていかない状況を見て、負荷が一気にかかった。(30代女性/一般病院勤務)

・NICU勤務で、当直でも泊まり、当直じゃなくても遅くまで病棟に残り、専門医試験の準備や勉強もした。
専門医試験が無事に終わった時に、色々な事がどうでもよくなった。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

・毎週のように、夜中0時を跨ぐ手術があった時期。
さらに術後緊急で再手術となることを繰り返し、丸々2日くらい睡眠が取れなかった事があり、疲れ果ててしまった。(30代女性/クリニック・診療所勤務)

・大学医局から、病床1000床の総合病院へ派遣された。内科研修も終了していないのに、当直時 ER担当となり、同時に病棟も見なくてはならなかった。
上司が自分の当直をすべて振ってくるなどで、2年で14kgも痩せた。
医局長も大学医局も教授も何のサポートもなかったので、バーンアウトするのは当然であったと思う。(60代女性/一般病院)

・激務の病院で残業200時間/月を越えるような環境で頑張っていたが、1年半ほど経過した時点で心身ともに疲れ果ててしまった。(30代男性/一般病院勤務)

上司や同僚医師との人間関係

・上司によるパワハラがひどく、だんだん朝起きられなくなった。
仕事をしていてもミスを多発するようになり、体重もひと月で6キロ落ちた。
教授から休んだ方がいいと言われ、休職に入った。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

・結局、日本では年功序列。
自分よりも能力が低いと思う上司の命令が「絶対」という環境に、やる気をなくした。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

・全ての気力・体力で誠実に仕事をしたいという気持ちがあっても、上司同士の派閥争いに巻き込まれてストレスのはけ口にされたり、看護師さんからの集団いじめに合ったりして、もうほんの少しも頑張れなくなった。
それでも患者さんが途切れる事はないので、一人でゆっくり泣く時間さえ取れず、精神的におかしくなってしまった。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・診療、手術など忙しいながらも実績を上げてきているところに、新しい医師が入職。
その医師が診療に協力的でなく、多忙とは反対の勤務をしている状況が続き、自分との対比でバーンアウトに至った。(40代男性/一般病院勤務)

・ある民間病院に内科部長で赴任して暫くして、部下が他科の医師からいじめを受けうつ病を発症し、休職してしまった。(60代男性/一般病院勤務)

人事異動の件で、上司より心無い言動を受けた。現在休職中。(40代男性/大学病院勤務)

・手術件数を増やそうと努力していたが、部下がやる気がなくて馬鹿らしくなった。(40代男性/一般病院勤務)

看護師などスタッフとの人間関係

・主治医として、重症患者の診療が続いていた。
看護師の心ない言葉が、最終的に引き金となった。(30代男性/一般病院勤務)

患者との人間関係

・担当入院患者に罵られ、診療・医療の意思が無くなった。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

出産・育児と仕事の両立

・大学院卒業直後。仕事では臨床、研究の両立、プライベートでは出産、子育てが院の重なった。
院の卒論を論文化すると、燃え尽きてしまい、何も集中できない時期があった。(40代女性/大学病院勤務)

新型コロナウイルスへの対応

・感染した。もうヤダと思った。(60代男性/一般病院勤務)

・患者家族の対応と、クラスター対応で疲れてしまった。(30代女性/一般病院勤務)

・土曜日の一人外来に、コロナ患者が集中。(50代男性/一般病院勤務)

仕事内容のミスマッチ

・重症例ばかりを受け持ちになり、孤軍奮闘の気分だった。(50代男性/一般病院勤務)

・手術をしない病院に転職したとき。(60代男性/一般病院勤務)

医師不足による業務過多

急に部長が退職して、代わりの医師が半年こなかった。
子どもが小さかったので、大変だった。(30代男性/一般病院勤務)

・同僚の常勤医が、突然開業。
定員に欠員が生じて、多忙になった時。(50代男性/一般病院勤務)

開業・院長職の重責

・開業後。
精神的にも肉体的にも診療が負担になった。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

・雇われ院長と開業立ち上げに2回携わり、2回とも結局上手くいかなかったとき。
リスクを負えない性格だから仕方ないと思いつつ、自力開業を頑張るべきだったと後悔。
さすがにもう、自分が前面に立って仕事を頑張ろうという気がなくなった。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・卒後12年目くらいで クリニックの雇われ院長になった。
しかし、客層の良くない土地柄でクレームというより暴力・暴言をしばしば受けていた。
また上司からのパワハラや、就任6年目で冠攣縮性狭心症になったことも加わり、電車に乗れない・家から出られないなどの症状が出て、退職した。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

医師の働き方改革による労働環境の変化

・全く寝ることができない当直+後輩の手技の呼び出しで、今現在ただでさえ休みが少ない状態。
なのに、医師の働き方改革でこれから労働環境が劣悪かつ、給与も減ることがわかった。(30代男性/一般病院勤務)

正当な評価が得られない環境

自分の仕事が、周囲には認められていないという感覚。(40代男性/大学病院勤務)

・同じ職場に7年ほど勤めていたが、就労条件の改善や給与の見直しがなく、頑張る気力がなくなった。(40代男性/一般病院勤務)

医局の理不尽な人事と、過剰な業務。(30代男性/一般病院勤務)

・コロナ患者が増え業務多忙となるも、手当などもつかず安月給のまま。(30代女性/クリニック・診療所)

・健診会社に勤めていた時に古いルールなどを刷新するなど色々な改革をした。
それなりの成果を出したが、古くからいる人や改革反対派の対応に疲れ改革終了後に辞職した。(30代女性/その他施設勤務)

家庭・プライベートの事情

家族の病気。(40代無回答/一般病院勤務)

家庭で莫大なストレスがかかり、仕事に影響が出てしまい、仕事に打ち込めなくなった。(30代男性/一般病院勤務)

・厳しい指導のおかげで医師としてはいろいろ学べたが、自宅にいる時間がほとんどなかった。
家にいても妻と会話できる状態でもなく、家庭を大事にできなかったことを今でも後悔している。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

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バーンアウトしたときや、バーンアウトしそうになったときの対処法は?

バーンアウトしたとき、バーンアウトしそうになったときの対処法

ここまでみてきたように、医師にとってのバーンアウトは、いつ自分に起こってもおかしくないともいえる身近な脅威であることが分かります。

それでは、もしバーンアウトしてしまったとき、またはバーンアウトしてしまう可能性があるとき、dのように対処したら良いのでしょうか。

バーンアウトをきっかけに転職する医師は、全体の3割以上

バーンアウトした経験のある医師に、バーンアウトしてしまったとき どのような行動をしたか聞いたところ、最も多かったのが「何も対応せず、そのまま勤務を続けた/続けている(42%)」、次いで多かったのは「退職して、別の勤務先へ転職した(36.2%)」という回答でした。

「休職して復帰した/現在休職している(10.7%)」という医師は、全体の1割程度となっています。

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になった時、どのように行動しましたか?

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」になった時、どのように行動しましたか?

バーンアウト後は、大きく分けて環境を変えないまま働き続ける、もしくは 転職で環境を変えて働く医師が多いようです。

「その他」としては、以下のような意見が寄せられました。

働き方を変えた

・仕事量を減らす、帰宅する努力をした。(60代男性/一般病院勤務)

・無理にすべてを両立させようと頑張らないようにし、休日はしっかり休み、趣味や気分転換の時間を持つようにした。(40代女性/大学病院勤務)

・当直を止め、夜勤もへらした。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

・医局人事からおりた。(30代女性/クリニック・診療所勤務)

・教授と相談し、配置に配慮してもらった。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

・常勤から非常勤に勤務を変更(別病院の非常勤に変更含め)。(40代男性/一般病院勤務)

異動した

・別の病院に異動になった。(40代女性/クリニック・診療所勤務)

産業医や精神科医に相談した

・産業医と相談し、受け持ち患者数を限定して、抗うつ薬を服薬した。(30代女性/一般病院勤務)

・精神科医を通して、仕事量を減らしてもらった。(40代無回答/一般病院勤務)

バーンアウトからの回復で役立ったのは「転職」や「業務量、勤務時間の調整」

続いて、実際にバーンアウトを経験した医師へ バーンアウトからの回復するために役立ったことを聞いたところ、以下の3つが特に多く回答されました。

・環境をガラッと変える「勤務先を変える(転職する)」

・環境を変えずに働き方を変える「業務の量を減らす」「勤務する時間や日数を減らす」

・適度な気分転換や休息を確保する「趣味などでリフレッシュする時間を増やす」「睡眠など 休息する時間を増やす」

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」から回復するために、役立つと思うことはありますか?(複数選択可)

Q:「燃え尽き症候群(バーンアウト)」から回復するために、役立つと思うことはありますか?(複数選択可)

フリーコメントでは、以下のような意見が寄せられました。

・新しい仕事内容にチャレンジする。(30代男性/一般病院勤務)

・複数の収入源を作る。(40代男性/一般病院勤務)

・自分の人生をどう生きたいのかを考える。

睡眠時間やリフレッシュする時間など、医局に属している限りは自由に取れない。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・チームを入れ替える。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

・家庭のストレスを減らす。(30代男性/一般病院勤務)

・無になる。(40代男性/一般病院勤務)

・なにもない。(50代女性/大学病院勤務)

勤務先による、医師へのストレスケアは?

個人だけではなく、上司や同僚をはじめとする周囲の方が「なんだか、いつもと違うかも…?」と異変を察知することも、バーンアウトを未然に防ぐために非常に重要と言われています。

次に、勤務先で実施されている医師へのストレスケアについて聞きました。

バーンアウトの経験がある医師とバーンアウトの経験がない医師の回答では、それぞれ異なった傾向がみられます。

Q:バーンアウトの経験が<ある>医師へ

勤務先で、医師のストレスケアやメンタルケアのために実施されているものはありますか?(複数選択可)

勤務先で、医師のストレスケアやメンタルケアのために実施されているものはありますか?(複数選択可)

Q:バーンアウトの経験が<ない>医師へ

勤務先で、医師のストレスケアやメンタルケアのために実施されているものはありますか?(複数選択可)

勤務先で、医師のストレスケアやメンタルケアのために実施されているものはありますか?(複数選択可)

バーンアウトの経験がある医師の場合は「実施されているものは特にない・知らない」が突出して多くなっています。

一方、バーンアウトの経験がない医師の場合には「定期的なストレスチェック」が最多でした。

実際にバーンアウトの経験がある医師は、勤務先における相談や対策・救済の方法を知ることができないまま、孤立無援となってしまったケースも多かったのかもしれません。

医師からは、以下のような意見も寄せられています。

・ストレスチェックしても、結果が返ってくるのみ。(40代女性/一般病院勤務)

・仕事のストレスで体調が悪くなることはしょっちゅうある。

職場ストレスチェックは、ただやっているだけで、全く無意味。

少しでも休みを取って体を休めるようにしているが、それも近々制限がかかりそうな様子なので、どうすればよいか思案中。(50代女性/一般病院勤務)

・仮にバーンアウトしたとしても、具体的な相談窓口が設けられていたとしても、相談しやすい環境とはとてもいえないと思います。(30代男性/一般病院勤務)

ストレスチェックを実施していても、実際には形骸化していたり、医師が相談しやすいと思える環境の整備には至っていなかったりする医療機関も、残念ながらまだ多いのかもしれません。

医師が考える、バーンアウトから自身を守るための対策

医師が考える、バーンアウトから自身を守るためにできる対策

最後に、医師から寄せられた意見・コメントをご紹介します。実体験をもとにバーンアウトしないために日ごろから意識していることや工夫などを含め、たくさんの先生方か言及してくださっています。

オンオフの切り替え

・とにかく終わったら帰る。(40代男性/一般病院勤務)

・無理しすぎない。帰れるときは早めに帰る。(30代男性/一般病院勤務)

・今までに、嫌になったことは何度もある。そんなときは早めに帰宅し、その環境から離れることにより気持ちを切り替えている。(50代女性/一般病院勤務)

・やはりプライベートの時間、オフをしっかり保つというのが大きいと思う。(40代女性/一般病院勤務)

・気持ちの切り替えと共に、自分の時間をしっかりとる。心身を休めるための環境整備を行う。(60代男性/一般病院勤務)

・時間の管理を第一にしている。

翌日に回せるものは割り切って、切り上げて帰社することにより、ストレス解消のための趣味の時間や睡眠時間の確保に充てることができて、結果的に効率が良くなることを実感している。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

頑張りすぎない

・適当に手を抜く。無理なものは無理という。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

・抜けるとこは抜いていく。(20代男性/大学病院勤務)

・能力の7割以上使いそうになったら、そこで休息をとる。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

・普段から自分がいなくても、職場はまわると割り切って頑張らない。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・どの職種でもあり得ることと認識している。

無理だと気づいたら、ペースを落とすように意識することが大事。

特に若いうちは職場で利用されやすいので、良い人にならないよう気をつけることです。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・頑張りすぎると燃え尽きることを経験してから、なるべく定時帰宅を心がけ、規則正しいパターンで仕事をするようにしている。(40代女性/大学病院)

・「もうちょっと頑張ればできる」と頑張ることが、心の見えない部分を差し出していることに気づくこと。

個人的にはRPGのようにMPを消費する、と表現している。(30代男性/一般病院勤務)

・ある程度 適当に生きること。(40代男性/一般病院勤務)

・勤務医ですが、限界まで頑張りすぎないことが大切と思う。

成功すれば上手くいって感謝もされるし、自尊心も満たされて疲労とトレードオフできる。

失敗した(頑張りすぎてしまった)場合には、肉体的にも精神的にも疲弊して、追い込まれてしまいまう。(30代男性/大学病院勤務)

業務量が過多にならないように調整する

・ハードワークが続いたら、仕事量を調整する(40代男性/大学病院勤務)

・2日連続でオンコールや当直に入らないようにしている。(50代男性/一般病院勤務)

・業務の多い場所に就職しない。(40代女性/クリニック・診療所勤務)

・必要性の低い業務を行わないようにすることが、とにかく大事。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

・自分の認識している能力以上のことをしないように(そうせざるを得ないような状況にならないように)、予め周りに迷惑が掛からないような配慮をしつつ、環境を調整する。

それができないような職場であれば、転職も考慮する。(50代男性/その他勤務)

・主治医制から複数主治医制へのシフト。(40代女性/一般病院勤務)

・休みの日は、必ず設ける。

主治医制が悪いとは言わないが、時間外は別の担当が必ず対応するようにすべき。医師の自己犠牲に頼らないようすべき。(30代無回答/クリニック・診療所勤務)

休暇や休息をとる

・ストレスがたまったら、迷惑かけないように有給をとって休む。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・家族がいる医師は、やはり家族と過ごせる休日が必要だと思う。(40代男性/大学病院勤務)

・有給休暇をしっかり取る。オンオフ切り替える。(40代女性/一般病院勤務)

・睡眠はしっかりとるようにする。寝不足だと、ろくな事を考えない。(50代女性/その他の施設勤務)

・曜日の感覚がなくなってくれば心配な状況に近いと判断して、無理をしてでも休日の時間をとるようにしている。(60代男性/教育機関勤務)

・他人から指摘されないと、分かりにくい時もある。

睡眠時間など、自覚しやすい指標を意識したい。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

友人や仲間、家族と話す

・どこかで気分転換したり、話をしたり、聞いてもらえる仲間を持つことが大事だと思う。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・仲の良い女医と不満を言いあう、会食をする。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・家族との時間。仕事の他人には言えない様な話も家族には聞いてもらえるから。

思い切り愚痴れるのは、家族ぐらいだから。(40代女性/一般病院勤務)

・不満を溜め込んではいけないと考えを変え、周囲に愚痴をたくさん言うようにした。(40代男性/一般病院勤務)

趣味や旅行で気分転換する

・コロナ前は、海外旅行に一年に一度行っていた。気持ちがリセットされる。

病院から絶対に電話がかかってくることはないし、呼ばれないから。国内だと電話がかかってきてしまう。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・卓球をしています。身体を動かして、ストレス発散!(40代男性/一般病院勤務)

・おいしい料理を食べたり、お酒を楽しんだりする。定期的な運動を行う。旅行する。(40代男性/一般病院勤務)

職場内のサポート

・医局内でお互いに補完し合う関係が、一番重要だと思う。(40代男性/大学病院勤務)

・最近は、私の部署では職員がバーンアウトするまで追い込まれる前に、周辺のものが気が付きサポートする体制ができつつあるように思う。

すべては、職場各部署の管理者の意識によるところが大きいように思う。はた目から見て、まだまだ駄目と思われる部署も多くある。(60代男性/大学病院勤務)

客観的な視点を持つ

・仕事人間にならないように、常に客観的に自分を見つめられるような余裕を持つこと。(60代男性/一般病院勤務)

・不調な兆候を意識する。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

・医師という仕事は職責上からも、冷静さが大切でありながら、感情的な対応も求められてしまう。

難しいバランスを要求される職であると考えているが、自身が支障なく仕事を続けるためには、仕事に理想を求めるのではなく、ある程度の割り切りが必要だと思う。仕事に縛られすぎないように、本来自分は何がしたいのかを常に考えながら細かい修正をする。

他者から見たら冷たいように思われるかもしれないが、自分の中の侵されない領域を作っておく。必要以上のことには手を出したり、考えたりしないというのも一つの方法であろう。そうすることで、結果的には余裕をもって良い仕事ができるのではないかと思っている。(50代男性/その他勤務)

ストレスケアや法的制度などの知識を身に付ける

・自分を自分で守るための法的制度や勤務先の就業規則などを知っておく。

産業医がいるなら相談する。

勤務先以外にも、相談できる専門家を確保しておく。(60代女性/一般病院勤務)

・心理関係の記事に積極的に目を通し、ストレスを溜めないような考え方を身に付けた。(40代男性/一般病院勤務)

モチベーションを維持する

・医師も任されてなんぼの世界なので、頼りにされなければされないで、燃え尽きる可能性があるかなとは思う。(30代男性/大学病院勤務)

・忙しさだけでなく、どこにでも落とし穴はあると思う。暇なら暇で、バーンアウトしそう。(40代男性/大学病院勤務)

・学位や専門医取得後は短期的な目標がなくなり、モチベーションを維持するのが難しいと感じることはある。(40代男性/一般病院勤務)

・仕事から得られる充実感は、大切なプレゼントのようなものだと思っている。

そう感じられるまで成長の痛みがあるのは、仕方ないこととは思う。一方で、指導側の心や気持ちが伴っていないと、教えられる側は仕事面だけでなく人格面でも否定されたように感じ、心に傷を残す。

お互いにこうあるべきだと求めても解決にならないので、自分の方で、事態を落ち着いて捉えることができるような、尊敬できる先輩や先生の言葉や模範、感動した格言やエピソードなどをメモしておいて、落ち込んだ時に見返すと自分を取り戻せるように思う。(40代男性/クリニック・診療所勤務)

バランスを維持する

・育児や家事、仕事とのバランスを大事にする。(20代女性/大学病院勤務)

・質と量と給与のバランス。(50代無回答/一般病院勤務)

転職する

・我慢ならないときは転職をする。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・バーンアウトしてしまった後は、一旦その職場から離れることが必要だと感じた。(30代男性/一般病院勤務)

・ストレスの多い場合(職場)には自分は無用と考え、さっさと転職している。(60代男性/一般病院勤務)

・2年くらいで職場を変える。(40代女性/一般病院勤務)

・最悪もうダメだと思ったらいつでも辞められると思って、日々頑張っている。(30代女性/クリニック・診療所勤務)

・「いざとなったら、仕事はいくらでもある」というのが、心の支え(ちょっと大げさですが)でもある。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

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視野を広く持つ

・仕事一筋に生きない。医師でも仕事は生活の為。

医師は万能ではないので使命感を持たず、「仕事した結果として人の役に立っていればそれでいい」くらいに思っていれば、ストレスはない。(70代以上男性/一般病院勤務)

・現在の職場の中が、世界の全てではない。

他の世界を広くみようとすること。(50代女性/クリニック・診療所勤務)

・仕事のみに集中しないようにしている。

良くも悪くも、熱心にやりすぎないことが大事だと思う。そのほうが、細く長く勤務できそう。(30代男性/大学病院)

・他の施設を見てみることも良いと思う。(50代男性/一般病院勤務)

・今は医局に縛られないで医療機関を探せるので、良い時代になった。(50代男性/一般病院勤務)

・多様な価値観を受け入れることを心掛けている。(40代男性/一般病院勤務)

国や厚労省、医療機関などでの取り組みが必要

・労働基準監督署に報告しても動いてもらえないため、この上司の下の医師の労働環境の改善は不可能なのだと諦めた。(40代男性/一般病院勤務)

・バーンアウトを予防するために、医師が個人でできることはそれほど多くはないと思う。

医師になるような人間は、使命感でオーバーワークしがちになってしまうので、自分では前兆に気が付きにくいはず。

なので、国や厚労省、組織(病院)がバーンアウトに対して意識的に取り組まなければ、解決しないのではないだろうか。

医療界は他の業界に比べて 労働条件の改善に対する議論が大幅に遅れていると感じるので、何とかしていただきたい。(50代男性/クリニック・診療所勤務)

・医局という法律にも何もしばられない管理団体に、政府が主導で法整備を行うしかない。(30代男性/一般病院勤務)

その他

・バーンアウトしてしまう人はしてしまうので避けられないと思う。

病院では医者の健康は最も軽んじられているもののひとつなのでこの職業を選んだ以上諦めるしかない。(30代男性/一般病院勤務)

・若い時は勉強のためと思い重労働をしていたが、今にして思えば給料も一番安く、辛かった。

身体には気をつけるべき。(40代女性/一般病院勤務)

・自分はバーンアウトしない人間だと思っていたが、だれでもなりうるものだと実感した。(40代男性/大学病院勤務)

患者や周りの人たちと丁寧にコミュニケーションを行いながら、真摯に診療に向き合う医師、長時間労働が常態化した環境で働く医師などが陥りやすいとされるバーンアウト。

少しでもバーンアウトの兆候を感じたら、深刻化する前に予防策から取り組んでみてはいかがでしょうか。

上記で多くの先生方が挙げられていた「頑張りすぎない」「仕事から離れる時間をしっかり作る」「睡眠や休息を確保する」そして「転職する」といった対処を行うことで、心身の不調を減らすことができるかもしれません。

また、キャリアや働き方については、Dr.転職なびのコンサルタントもご相談を受け付けています。

個人情報は厳守いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

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