SNSとは、「Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス)」の略で、日本語に訳すと「社会的なネットワークを築くためのサービス」となります。
このSNSはいまや日常生活に溶け込み、誰もが情報を簡単・気軽に発信できる時代となっています。昨今ではSNSを利用して積極的に情報を発信する医師も増えているようです。
本記事では、会員医師へのアンケート結果をご紹介しながら、医師の上手なSNSとの向き合い方と注意すべき点について考えていきます。
どのくらいの医師が、SNSを使っているのか?
最初に会員医師へのアンケート結果から、医師のSNS利用状況を確認してみましょう。
どのくらいの医師が、SNSを利用している?
上記のように、SNSを「利用している」医師と「利用していない」医師は、おおむね二極化されています。
なおSNSを利用している医師のうち約33%が「発信・閲覧の両方で利用」、約67%は「閲覧のみでの利用」と回答しており、およそ7割の医師は投稿を行わずに閲覧のみでSNSを利用していることが分かります。
多くの医師が利用するSNSとその特徴は?
次に、医師がどのようなSNSを利用しているのか見てみましょう。
医師が利用しているSNSでは、TwitterやFacebookといった文章投稿型のSNSが上位を占めています。
文字で発信するTwitterとFacebook
文章投稿型のSNSでは、日常生活の出来事や考え方などを発信することが可能です。
投稿内容に共感した人が「いいね」などの評価を付けたり、投稿した人へメッセージを送ったり、意見を交換したりすることでコミュニケーションを図ります。
今回実施したアンケートでは最も多くの医師が利用していると回答した「Twitter」は、140文字以内で今感じていることや今の気持ち等をつぶやくSNSです。
匿名でリアルタイムな情報を気軽に発信できることや、短い文章がスマートフォンでの受発信に向いていることなどから、若い世代を中心にユーザーを増やしています。
「Twitter」に次いで利用していると回答した医師が多かった「Facebook」は、原則として実名での登録と顔写真の掲載が求められるSNSです。そのため、コミュニティーの核となるのは実際の友達・知人です。
実名での交流であることも影響して投稿される内容に一定の節度が保たれやすく、比較的年齢層が高めの世代の方を中心に人気が高いSNSです。
最近では企業のみならず医療機関でも、集客や人材採用、ブランディングなどを目的としてFacebookを利用しているというケースも多く見かけるようになりました。
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動画で発信するYouTube
「Twitter」や「Facebook」に次いで利用していると回答した医師が多かった「YouTube」は、動画投稿型のSNSです。
動画を投稿する人は、自分の趣味や特技、専門を生かした動画を制作・投稿して「チャンネル登録」や「いいね」の数を増加させることを目指します。
このYouTubeは、再生回数が伸びると投稿者に広告収入が入る仕組みである点が大きな特徴で、いわゆる「ユーチューバー」と呼ばれる動画投稿を職業にする人も増えています。
最近では医師を本業としながら医療に関する動画を投稿する「医師ユーチューバー」も活躍しています。
医師がSNSを使う目的は?
多くの医師がSNSを利用している目的は、どのようなことなのでしょうか。
医師同士で情報を交換・共有する
SNSの目的としてまず挙げられるのは、医師同士で情報交換するためということです。
▼どのような情報を「発信」しているか
▼どのような情報を「閲覧」しているか
上記のように、医師たちはSNSを通じて「自身の専門分野における知見や情報」を発信する、またはキャッチアップするケースが多いようです。
また情報を閲覧する医師は、「自分の専門以外の分野における知見や情報」も含む幅広い医療情報に高い興味を持っていることも分かります。
一般の人に向けて、病気や健康に関する情報を発信する
SNSで情報発信をする目的を尋ねた質問では、次に多くの医師が挙げた情報発信の目的は、「病気や健康に関する情報を、一般の人に広く知ってほしい」という選択肢が最も多く選ばれました。
対・医師と情報を交換してつながりを深めたいという目的だけではなく、「自身の専門分野の疾患について知ってほしい」という思いから、広く一般の人に向けた情報を発信している医師も多いようです。
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「医師インフルエンサー」として活躍する医師もいる
SNSで特にフォロワーが多いアカウントは「インフルエンサー」と呼ばれ、社会的な影響力を持つことがあります。
昨今では、医師を本業としながらSNSで情報を発信し、多くのファンを獲得する「医師インフルエンサー」も年々増加。
今回のアンケートでも約2%の医師が「医師インフルエンサーとして活動している」と回答しています。
医療に関する専門的知識や医学的根拠に基づく詳しい内容を、一般の人にもわかりやすく解説する医師インフルエンサーは、一般ユーザーにも高い訴求力を持つ希少な存在として 医療機関のみならず企業などからも注目を浴びています。
今回のアンケートでは「機会があればぜひ自分もやってみたい」や「気になる存在ではあるが、自分にはハードルが高いと感じる」といった回答が全体の約半数を占めており、「医師インフルエンサー」に興味を持っている医師も多いということが伺われます。
スタッフの採用や集患のために発信する
多数ではないものの、「勤務する病院やクリニックのSNS担当として」SNSを利用しているという医師も、SNS利用がある医師全体の1割ほど存在しています。
なお、「勤務する病院やクリニックのSNS担当」として発信する情報をみてみると、「勤務する医療機関や医局の宣伝」よりも、「自分の専門分野における知見や情報」がメインとなっているようです。
また「勤務する病院やクリニックのSNS担当」として情報を発信する目的では「健康や病気に関する情報を、一般の人に広く知って欲しい」が最多となっており、次いで「自身や勤務先の知名度を上げて、集患につなげたい」が多くなっています。
SNSを活用した集患施策では、直接的な宣伝をするのではなく、まずは一人の医師として患者さんが知りたいと思っていること・必要としている情報を発信し、医師への信頼感や親近感を醸成していくことがポイントとなっているようです。
なお「自院や勤務先における医師やスタッフの採用活動の一環として」という回答も3番目に多く、医師が発信するメッセージが活用されている点も注目すべきポイントです。
医師がSNSを利用するときの注意点
誰でも簡単に、気軽に情報を発信できることはSNSの大きな魅力です。
しかし、それゆえに自身が何気なくした発言がトラブルに発展してしまうという可能性もあるということをしっかりと確認しておきましょう。
住所や勤務先が特定されてしまう可能性を認識する
個人や勤務先、居場所が特定されてしまうような書き込みや写真を投稿する際には、特に注意が必要です。
最近ではGPS機能のついたスマートフォンやデジタルカメラで撮影した写真には、目に見えない形で、撮影日時や撮影した場所の位置情報(GPS情報)などのさまざまな情報が含まれている場合もあります。
SNSに、こうした位置情報付きの写真をよく確認せずに掲載してしまうと、自分の自宅や居場所が他人に特定されてしまう危険性があり、迷惑行為やストーカー被害などの犯罪の被害に遭う可能性もあるため、十分注意が必要です。
位置情報もプライバシー情報であるということを十分理解して、むやみに位置情報をつけて写真を投稿しないように心がけましょう。
また 投稿する内容についても、プライバシーへの配慮が必要です。
投稿者自身の情報だけでなく、症例や患者さんに関わる情報を取り扱う際には、特に細心の注意を払うようにしましょう。
なお本調査では、医師個人としてSNSを利用している医師の約半数の医師は、個人や勤務先が特定されてしまう情報を「開示していない」と回答しています。
一方で「実名ではないが、一部開示している」医師はおよそ27%、個人や勤務先が特定されてしまうような情報を「実名で開示している」医師は2割ほどとなっています。
▼医師から寄せられたコメント
・個人情報は載せない。(30代/大学病院勤務)
・仕事先の情報は出さないようにしている。(40代/非常勤のみ・フリーランス)
・症例が特定されようにする。(20代/一般病院勤務)
SNSに書き込んだり写真などを投稿したりする際には、不特定多数の人が見ても問題がない情報かどうかをしっかり見極める判断力を養うように心がけましょう。
誹謗中傷と捉えられるリスクがある発言をしない
自分の発言や言葉遣いが意図しない形で受け取られてしまった場合には、特定の個人に対して多くの誹謗中傷の書き込みが行われてしまう「炎上」のリスクがあるということも知っておく必要があります。
SNSは気軽で簡単に発言や情報を発信することができるため、受け取る側に対するしかるべき配慮が欠けてしまうというケースも少なくありません。
インターネット上での情報拡散力は非常に大きく、情報はあっという間に広まります。
一度投稿してしまった内容を慌てて削除しても、画面等を保存されてしまう等でインターネット上にはずっとその投稿内容が残り続けてしまいます。
また、投稿した内容について勤務先にクレームが入ってしまったり、家族や友人にまで被害が及んでしまったりするリスクもゼロではありません。
▼医師から寄せられたコメント
・老若男女、誰が見ても分かりやすく表現する。(60代/非常勤のみ・フリーランス)
・相手が不快になる文章や表現は投稿しないように推敲している。(30代/非常勤のみ・フリーランス)
・閲覧はともかく、書き込む際には、常に発信源は開示されうると心に刻んでいる。(30代/大学病院勤務)
SNSでの発言は、不特定多数の人が目にする可能性があることを忘れずに、投稿前に一息ついて、じっくり推敲してから投稿するとトラブルに発展するリスクを大きく軽減できるはずです。
情報の発信元や信頼性を確認する
SNSには、不特定多数のユーザーが発信したさまざまな情報があふれており、なかにはデマやフェイクニュースと呼ばれる不確かな情報も含まれています。
正しい情報がどうかを確認するためには、ネットで検索して複数の情報を読み比べてみたり、本や新聞などのネット以外で調べるのもお勧めです。
その情報が引用や伝聞だった場合には、オリジナルの情報源を探して確かめてみるという方法も誤情報を見極めるために有効でしょう。
昨今では、怪しいリンク(ワンクリック詐欺、フィッシング詐欺など)に誘導される危険性もあるため、信頼に足る情報元かどうかの確認は必ず行うようにしましょう。
今回実施したアンケートでも、「情報の発信元や根拠の確認は重要」という意見が多くの医師から寄せられました。
▼医師から寄せられたコメント
・誰が書いた情報なのか、は必ずチェックする。(50代/非常勤のみ・フリーランス)
・ただの個人的な意見や感想なのか、エビデンスに基づいた発信なのかを区別する。(50代/クリニック・診療所勤務)
SNSを利用する際には、目にした情報をうのみにせず、情報元が信頼できるか確認する。
そして、もしも正確性が判断できない場合には、安易に情報を投稿・拡散しないことも大切です。
注意点を踏まえたうえで、SNSを賢く活用しよう
医師にとってSNSは、意見交換やお互いを高め合うことができたり、普段なかなか繋がることができない方とも繋がることができたりなど、さまざまな魅力を持つコミュニケーションツールとなっているようです。
▼医師から寄せられたコメント
・特にコロナに関する最新情報は、SNSでフォローすることが出来てよかった。(40代/非常勤のみ・フリーランス)
・有名な先生にダメもとで質問をしたら、きちんと返信をいただけた。(40代/一般病院勤務)
一方でSNSの利用に際しては、使い方によってトラブルに発展するリスクもあるということをしっかり認識しておく必要もあります。
SNSを利用する際には「一人の医師」としてだけではなく、「医局や医療機関に所属する医師」でもあるということを忘れずに、適度な距離感を保ちながら賢く付き合っていきましょう。
◆調査概要「医師のSNS利用についてのアンケート」
調査日:2022年9月20日~9月23日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
回答数:563