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日本で推進される「地域医療」4つのメリットや医師に求められる役割・能力を調査

日本で推進される「地域医療」とは?4つの魅力と医師に求められる役割

出生率低下による人口減少と高齢化が深刻な現在の日本では、地域全体で住民の健康をサポートする「地域医療」が推進されています。

今回「Dr.転職なび」が実施した調査では、将来的に地域医療に関わりたいと回答した医師は全体の67.0%を占めました。

そこで本記事では、多くの医師が前向きな関心を寄せる「地域医療」が推進されている背景や、医師の役割やメリット、よくある不安点等をわかりやすく解説します。

地域医療の概念と背景にあるもの

地域医療とは、地域全体で住民の健康を守る医療体制のこと

地域医療とは、地域医療構想をもとに各自治体で取り組んでいる医療体制の改革で、病院などの医療機関での治療やケアといった枠組みにとらわれずに、地域全体で住民の健康を支えていく体制のことをいいます。

医師やその他の医療従事者が中心となり、病気やケガの治療やケアはもちろん、地域住民の疾病予防や健康維持、高齢者や障害者への支援活動、妊婦への保健指導や相談、子育て支援などを実施します。

このような活動を特定の医療機関が単独で行うのではなく、各医療機関が連携し、行政や住民組織など地域全体で協力して住民の健康のための取り組みを実施するという点が、地域医療の大きな特徴です。

地域医療の対象は、その地域で暮らすすべての住民

なお、地域医療の「地域」は、都心部の対義語となる地方やへき地を意味するものではなく、住民が生活しているそれぞれの地域のことを指しています。

また地域医療の対象となるのは、支援を必要とする高齢者や子ども、妊婦、障がい者等に限定されることなく、その地域で生活するすべての住民という考え方をします。

地域医療が推進される背景には、人口構造の変化に伴う医療需要の急増がある

地域医療の需要が高まっている背景には、高齢化と少子化による人口構造の変化があります。

とくに団塊の世代である800万人が75歳以上となる2025年には、医療・介護のニーズが急増すると予測されています。

この大きな転機に備え、各自治体では「地域医療構想」を策定しました。

地域医療構想に沿った地域医療の推進が望まれている

地域医療構想とは、将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数を4つの医療機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとに推計した上で、地域の医療関係者の協議を通じて病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制を実現するための取り組みのことをいいます。

この地域医療構想に基づく地域医療の推進は、決して遠くない未来に起こると予測される医療ニーズの質や量の変化に対応し、質の高い医療サービスを効率良く提供し続ける体制を整備するために重要なこととされています。

参照:厚生労働省「地域医療構想」、全日本病院協会「地域医療構想

地域医療における医師の役割と必要な能力3選

地域医療における医師の役割と必要な能力3選

地域医療に携わる医師の役割や求められるスキルは、大学病院等で働く医師と比べてどのような違いがあるのでしょうか。

続いて、地域医療における医師の役割と必要な能力について主なものを3つご紹介します。

①専門性によらない、全人的な医療を提供する

地域医療の現場では、特定の臓器に着目する治療ではなく、日常的によくある病気や幅広い健康問題に関する知識を持ち、診断や治療を行うことが求められます。

▼現在地方で勤務している医師からのコメント

・専門に縛られない対応が望まれる。(60代/循環器内科/勤務医(民間病院)/長崎県)

・専門医以外の分野でも、一次対応ができると良い。(40代/一般内科/勤務医(診療所・クリニック)/新潟県)

②健康寿命を延ばす、予防医療や健康増進を実施する

また、具体的な症状の発現や疾患に至る前に実施する予防医療や健康増進も、地域医療に携わる医師が担う役割の一つです。

意識的に予防医療や健康増進を行うことは、医療や介護に依存せずに自分の心身で生命を維持し、自立した生活ができる健康寿命を伸ばすことにつながります。

また、症状が悪化してしまう前に病変を察知し、重症化や合併症、二次障害のリスクも減らせるでしょう。

③周辺の医療機関や福祉、保健の連携を行う

地域医療では、特定の医療機関単独ではなく地域全体で、急性期から回復期を経て自宅に戻るまで切れ目のない医療をスムーズに提供することが重要になります。

地域に混在する医療機関それぞれの役割を理解した上でネットワーク化しつなげていく地域連携のスキルも、地域医療に携わる医師に求められるものの1つです。

さらには医療機関だけではなく、介護施設や福祉施設、ソーシャルワーカーなどの他職種も含めて地域全体による包括的なケアを提供できる体制を整備することも望まれます。

▼現在地方で勤務している医師からのコメント

・地域連携のノウハウや繋がり。(40代/精神科/勤務医(民間病院)/長崎県)

・病態に応じて的確な診療科や病院を紹介できるように、日頃から情報を収集して連携をとれるスキルも重要になる。(60代/健診・ドック/健診センター/鳥取県)

医師が地域医療に携わる4つのメリット

医師が地域医療に携わる4つのメリット

それでは、地域医療に携わりたいと考える医師はどのくらいいるのでしょうか。

すでに地方で地域医療に関わっている医師のコメントをもとに、医師が地域医療に携わるメリットを4つご紹介します。

67%の医師が「今後地域医療に携わりたい」

「Dr.転職なび」の調査では、全体の67.0%に上る医師が「今後地域医療に携わりたい」と考えていることがわかりました(「積極的に携わりたい」「機会があれば携わりたい」。を合計)。

Q:今後、地域全体で住民の健康を守る「地域医療」に携わりたいと思いますか?

Q:今後、地域全体で住民の健康を守る「地域医療」に携わりたいと思いますか?

このように約7割を占める医師が地域医療に前向きな関心を寄せるのは、どのようなメリットを感じているからなのでしょうか。

地域医療に携わるメリット①患者様とじっくり向き合う医療を実現できる

臓器別で担当医師が分かれ、専門性が重視される医療機関では、多くの患者様の診察に追われてしまいがちな面もあるかもしれません。

一方地域医療では、現在の症状や病歴だけでなく患者様の人となりや生活の様子も含めたさまざまな要素を考慮した上で最適な診断・治療を行うことが求められます。

また病気を未然に防ぐという視点から健康に対する不安や悩みを聞き、必要に応じてアドバイスを行うことも重要になります。

▼地方で地域医療に携わる医師からのコメント

・診療以外の医療活動を学べた。(60代/一般内科/開業医/大分県)

地域医療に携わるメリット②プライマリ・ケアのスキルを磨ける

患者様の心身を総合的に診察し、初期段階での健康状態の把握や一時的な救急処置、日常的にみられる病気や軽度外傷の治療、訪問診療などを行い、特殊な症例については専門医に紹介する役割を担うことをプライマリ・ケアといいます。

このプライマリ・ケアはすべての臨床医に必要な能力ですが、とくに地域医療においては、日常的に必要となるシーンが多いことから、おのずとスキルアップにつながると考えられます。

▼地方で地域医療に携わる医師からのコメント

・都心部は病院が多く専門性の高い医師も多いので、いざとなればその医師に紹介すれば良い反面、専門外のことには対応する力にはやや欠ける部分がある。
一方、地方では病院が少なく、どのようなことでも一時的な対応が求められるから、幅広い領域における初期対応力が身についた。(60代/健診・ドック/健診センター/鳥取県)

地域医療に携わるメリット③高齢者医療、在宅医療で地域を支える経験ができる

高齢化が進む昨今、在宅医療の社会的需要や重要性がますます高くなっています。

「地域医療構想」においても、地域における効率的かつ効果的な医療提供体制を確保するために病床の機能分化を進めること、そして慢性期の患者様の受け入れ先として在宅医療の役割を強化することが基本施策として示されています。

自分が通院できなくなってしまった後も寄り添い続けてくれる地域の医師の存在は、高齢者が安心して暮らしていくために非常に大きなものといえるでしょう。

地域医療に携わるメリット④地方勤務の場合は、条件交渉がしやすいケースもある

慢性的な医師不足に悩む地方の医療機関では、とくに医師の採用活動に力を入れています。

そのため、当直なしや週4日勤務、時短勤務といった柔軟な働き方を許容してもらえたり、高い水準の年俸が設定されていたりするケースも少なくありません。

▼地方で地域医療に携わる医師からのコメント

・ワークライフバランスを取りやすい。(40代/リウマチ科/勤務医(民間病院)/群馬県)

・都心部で働いているときよりも、年収が上がった。(50代/眼科/勤務医(民間病院)/香川県)

地域医療に関心を寄せる医師が感じる不安と解決策

地域医療に関心を寄せる医師が感じる不安と解決策

一方、地域医療に関わる上で医師が不安に感じるのは、どのようなことなのでしょうか。

地域医療の課題と、医師偏在が起こる4つの要因

なお、地域医療を推進する上で現状課題となっていることの一つに、医師偏在があります。

厚生労働省の「今後の医師偏在対策について」によれば、地域偏在の要因として以下の4点が挙げられています。

・医師少数区域の生活・教育環境

・出身大学県への定着の低下

・大学病院等からの医師派遣の変化

・若手医師の価値観の変化(タイム・コストパフォーマンス)

参照:厚生労働省「今後の医師偏在対策について

とくに都心部にある大学病院等、大規模な病院で現在働いている場合には、1番目に挙げられている「医師少数区域の生活・教育環境」への懸念を感じる方が多いのではないでしょうか。

地方での生活環境に不安を感じる医師が多い

「Dr.転職なび」の調査でも、交通の利便性が低い等の地方における生活環境や子どもの教育環境の変化に関する不安を感じるとの声が複数寄せられています。

▼通勤に時間がかかる

・自宅からの通勤時間が長くなった。(40代/脳神経内科/勤務医(国公立病院)/愛知県)

・通勤に片道2時間程がかかっています。(60代/整形外科/勤務医(民間病院)/東京都)

▼子どもの教育環境に不安がある

・子どもの教育。(50代/一般外科/勤務医(診療所・クリニック)/岩手県)

▼紹介や学会参加のハードルが高い

紹介先の医療機関が近隣に存在しないので、紹介するハードルが高いことです。
10km程度の距離にあれば恵まれている方で、大学病院の規模となると50km以上離れていたりします。(40代/眼科/勤務医(民間病院)/茨城県)

・東京や大阪など、大都市での学会や講演会に行くのに時間がかかる。(40代/消化器外科/勤務医(民間病院)/福井県)

解像度の高い情報を入手して、不安を軽減させよう

とくに現在都心部で働く医師が地域医療に軸足を移行する際には、勤務先や仕事内容に関する情報のみならず、生活拠点となる地域に関する情報も入手することで、上記のような不安が軽減できる可能性があります。

「Dr.転職なび」のコンサルタントは全国8拠点に在籍し、候補先となる医療機関を取り巻く地域内の医療情勢はもちろん、生活環境や教育環境等の地域に根差した情報もご提供しています。

医療機関に直接聞きづらいようなことも、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Dr.転職なびに相談する

◆調査概要:「医師偏在」に関するアンケート

調査日:2024年5月28日~6月4日

対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師

調査方法:webアンケート

有効回答数:470

Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

医師の転職、キャリアアップ応援コンテンツを提供する「Dr.なび」編集部です。医師転職サービスを提供する株式会社エムステージが運営しています。

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