2023年5月8日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「2類」から「5類」に移行されました。この移行によって、医師の業務や医師が働く医療現場にはどのような変化が起こっているのでしょうか。
「Dr.転職なび」では、5類移行から2週間後となる2023年5月22日~5月29日で会員医師412名にアンケート調査を実施。
第一弾となる本記事では、5類移行の時期、行動制限・就業制限の緩和時期に対する医師の意見をご紹介します。
日々患者様と向き合い診療に取り組む先生方のリアルな声を、早速ご覧ください。
「コロナ5類移行の時期」に対する、医師の意見は?
新型コロナウイルスの感染症法上の類型が、インフルエンザウイルスと同等の「5類」へ変更された時期について、医師はどのように感じているのでしょうか。
移行時期は「適切」が5割を占め、「早い」は2割、「遅い」は3割に
Q:2023年5月8日、新型コロナウイルスの感染症法上の類型が5類に移行しました。この移行時期について、ご自身のお考えに最も近いものを教えてください。
医師の回答で最も多いのは「適切である」(50.7%)で、全体の約半数を占めました。
また残りの約2割は「早い」、約3割は「遅い」となり、医師の間でも意見が分かれるところのようです。
世間の許容が進み、死亡者数も減少している今が「適切」―50.7%
「適切である」と回答した医師からは、以下のようなコメントも寄せられています。
◆適切である
・いずれはやらないといけないので、仕方ない。(50代/整形外科/勤務医(大学病院以外の病院))
・世間の許容が進んでおり、適切な時期と考えられる。(40代/糖尿病内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・WHOなども同じ時期だったので、良いタイミング。(50代/呼吸器内科/勤務医(診療所・クリニック))
・死亡者数も落ち着いてきており、世界の趨勢を考えると適当と考えます。(60代/消化器外科/勤務医(大学病院))
まだコロナが終息していない状況下での5類移行は「早すぎた」―19.9%
続いて、「どちらかというと早い」「早すぎる」と回答した医師からのコメントをご紹介します。
◆どちらかというと早い
・感染外来の患者数が、軒並み増えた。(30代/糖尿病内科/勤務医(診療所・クリニック))
・コロナにかかっても、受診しない。また有料となったことで検査を受けたがらない方が多すぎる。そのため定点観測からの推定では、実際の陽性者数は全く分からなくなった。(60代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・コロナウイルス自体が変異しているので、半年程度先まで経過を見て決定しても良かったと思います。特に病院はクラスターが起こるとダメージが大きかったので、尚の事です。
また、コロナウイルスを軽く見る風潮が広がってきていることも心配です。(60代/心療内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・観光に力を入れすぎると、世界の色々な株が入ってくることに繋がる。その結果、デルタ株以上の重症化する株が今後流行するかもしれない。(60代/一般内科/勤務医(健診施設や老健など))
◆早すぎる
・まだ次の波が来ると思います。後遺症が残ることも多く、インフルエンザと同じと考えてはいけないと考えます。(30代/呼吸器内科/勤務医(大学病院))
・新型コロナウイルスの毒性が下がったわけではないから。(40代/消化器内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・連休明けの感染状況を確認したうえで、判断した方が良かった。(40代/血液内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・5類に移行したことで、感染者数の報告は週1回の定点報告のみとなった。
現在各所でクラスターも生じていて、緩やかではありますが感染者数も増加しているこの時期に、オンタイムで感染者増減傾向のトレンドを把握できなくなる5類移行は愚行だと思っている。(50代/耳鼻いんこう科/勤務医(診療所・クリニック))
重症化率等が低下した時点で移行すべき、判断が「遅すぎた」―29.4%
一方で、「どちらかというと遅い」「遅すぎる」と回答した医師からは、以下のような意見が寄せられました。
◆どちらかというと遅い
・慎重すぎた感がある。(60代/脳神経外科/勤務医(非常勤のみ))
・政治的な日程で決まったことであり、医学的にはもう少し早くても良かった。(60代/小児科/勤務医(大学病院以外の病院))
・「海外の情勢にようやく追いついた」というところだが、医療従事者は相変わらずマスク着用等を求められており、ダブルスタンダードは完全には解消されていない。(40代/泌尿器科/勤務医(大学病院以外の病院))
・医療費のことを考えれば、今年初めくらいに移行すべきだった。(40代/糖尿病内科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆遅すぎる
・弱毒化した時点で、変更すべきであったと思います。(50代/耳鼻いんこう科/開業医)
・若い人の死亡率が低いというデータが得られた時点で、移行するべきであった。(50代/形成外科/勤務医(大学病院以外の病院))
・寝たきりの高齢者以外は、ほとんど軽症。昨年の初めから、分かり始めていたことである。(40代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・医療機関でも、不毛な感染対策はすぐにやめるべき。(30代/小児科/勤務医(大学病院以外の病院))
「行動制限・就業制限の緩和時期」に関する医師の意見は?
コロナの5類移行後は、感染症法に基づく感染時の就業制限や日常生活に関する行動制限がなくなりました。
感染予防の方法や隔離の有無、外出を控えるかどうかについては個人の判断に委ねられていますが、このような状況を医師はどう感じているのでしょうか。
行動制限・就業制限の緩和時期は「適切」が5割を占め、「早い」は3割、「遅い」は2割に
Q:行動制限・就業制限を緩和する時期について、ご自身のお考えに最も近いものを教えてください。
医師の回答で最も多かったのは「適切である」(49.3%)で、全体の約半数を占めました。
また約3割の医師は「早い」、約2割の医師は「遅い」としており、5類移行の時期と同じく意見が分かれています。
制限なしでも、一人ひとりの理解や周囲への考慮を期待「適切」―49.3%
◆適切である
・ごく軽症者が割合的に多いので、現在流行のウイルス株では今回のような対応で良いと思います。(50代/小児科/勤務医(大学病院以外の病院))
・これ以上の制限は無理でしょう。(60代/眼科/開業医)
・自己の理解力が重要になると思います。(60代/一般内科/開業医)
・他の人に迷惑をかけない生き方を、個々人が考えて欲しい。(50代/小児科/勤務医(大学病院))
制限を緩和する根拠が不明瞭で、感染拡大が懸念される「早すぎる」―28.4%
続いて、「どちらかというと早い」「早すぎる」と回答した医師の意見をご紹介します。
◆どちらかというと早い
・就業制限は、人手としては非常に助かりますが、感染動向をもう少し見てからでも良かったかもしれないと思いました。(30代/腎臓内科/勤務医(大学病院))
・まだ医療現場では、以前通りです。(40代/精神科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆早すぎる
・感染者が、絶対拡大する。(40代/血液内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・職場内、学校、保育所、デイサービス等での「いつの間にかコロナ感染」が急増している。コロナに感染させないための教育を、徹底すべき。(60代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・緩和を「良し」とするエビデンスを示してほしい。(40代/一般外科/勤務医(大学病院以外の病院))
・発症から10日間はウイルスを飛散させることが分かっているのに、安易に療養日数を短くする理由が分からない。(30代/腎臓内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・マスク着用は全国民が継続すべきだと思うし、マスクせずに喋っている人を見ると「怖い」と感じる。(30代/放射線科/勤務医(大学病院))
すでに制限は機能していなかった、過剰すぎた「遅すぎる」―22.4%
◆どちらかというと遅い
・今年3月頃から実質的に制限は無視されており、移行前から制限自体が意味を為していなかった。(50代/麻酔科/勤務医(大学病院以外の病院))
・医療や介護従事者と一般の方で、制限内容を明確に分けた方がよい。(40代/糖尿病内科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆遅すぎる
・症状次第ですが、通常どおりで良いと思います。(50代/耳鼻いんこう科/開業医)
・何を根拠にしたのか分からない政策だったと感じる。(30代/整形外科/勤務医(非常勤のみ))
・そもそも、規制が過剰すぎた。(40代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
以上、コロナ5類への移行および行動・就業制限の緩和時期に対する医師の意見をお伝えしました。
今後も感染状況などに応じて、医療機関や医師に求められる対応が変更となる可能性もあるでしょう。
引き続き、最新情報を常にキャッチアップしていく必要がありそうです。
なお今回の調査をもとにした以下の記事も、公開中です。ぜひ合わせてご覧ください。
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◆調査概要「コロナ5類移行に関するアンケート」
調査日:2023年5月22日~5月29日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:412