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75.3%が「困った経験あり」―他科コンサルがスムーズになる「対診書」の書き方とは?

75.3%が「困った経験あり」―他科コンサルがスムーズになる「対診書」の書き方とは?

コンサル(コンサルテーション)とは、医師が他科や他院の医師に診療や治療方針について相談をしたり、診察を依頼したりすることをいいます。

コンサルは医療現場において頻回に行われていますが、複数の医師間で円滑な情報共有を行うために重要になるのが対診書と呼ばれる書類です。

しかし「Dr.転職なび」の調査によると、48.0%の医師は「対診書の作成に苦手意識がある」と答えました。
またコンサルを受ける側の立場となったときには、「他医師からの対診書で困った経験がある」と回答した医師は75.3%にものぼっています。

そこで本記事では医師の声をご紹介しながら、対診書で記載すべき項目や受け手となる医師を困らせないためのポイントを解説します。

他科コンサルで対診書を「作成する」医師が、困っていることは?

まずは、他の診療科へのコンサルで用いられる対診書を作る際、医師が困っていることを確認していきましょう。

48%の医師は、「対診書作成が苦手」と感じている

最初に、医師は対診書作成にどのような向き合い方をしているのか尋ねました。

Q:対診書を作成することに、苦手意識はありますか?

Q:対診書を作成することに、苦手意識はありますか?

最も多いのは対診書作成に苦手意識が「少しある」(37.8%)で、次いで「あまりない」(36%)、「全くない」(16%)となりました。
全体的に見てみると、対診書作成に苦手意識のある医師がおよそ半数にのぼることが分かります(「少しある」「大いにある」を合計)。

対診書作成が苦手な理由は「記載内容に自信がない」「時間がかかる」から

さらに、対診書作成への苦手意識が生まれる理由を尋ねたところ、「記載すべき項目や内容について、自信がないから」「作成に時間がかかってしまうから」(いずれも回答数:97)が最多となりました。

(上記で「苦手意識がある」と回答した医師へ)
Q:具体的には、どのような理由からですか?(複数選択可)

Q:具体的には、どのような理由からですか?(複数選択可)

▼医師からのコメント

・お互いの医師の感情が入りやすい案件もあり、ソワソワしながら対診書を作成することも。
精神的に負担になることも多いです。(30代/一般内科/勤務医(非常勤のみ))

60.6%の医師は、対診書作成に関する指導を受けたことがない

なお、医師が「対診書」の作成方法について学ぶ機会は多くないようです。

今回の調査でも、対診書の作成方法について上司や先輩などから「指導を受けた経験がある」と回答した医師は、全体の約4割にとどまりました。

一方で約6割の医師は他の医師からの指導を受けたことはないと回答しており、大半の医師は自身の経験則から対診書を作成していると推測されます。

Q:対診書の書き方について、これまで指導を受けたことはありますか?

Q:対診書の書き方について、これまで指導を受けたことはありますか?

このように半数以上の医師は 対診書作成に関する指導を受けた経験がないことから、

・対診書に何を記載すべきか良いか分からない

・記載内容に自信がないために、作成に時間がかかってしまう

といった困った状況に陥ってしまうのかもしれません。

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他科コンサルで対診書を「受け取った」医師が、困っていることは?

他科コンサルで対診書を「受け取った」医師が、困っていることは?

続いて、他科の医師からコンサルを依頼され、「対診書」を受け取る医師が困っていることを聞きました。

75.3%の医師は、他医師からの対診書で「困った経験がある」

まず 他科からの対診書で困った経験があるかどうかを尋ねたところ、7割を超える医師が「困った経験がある」と回答しています。

Q:対診書を受け取った際に、困ったことはありますか?

Q:対診書を受け取った際に、困ったことはありますか?

コンサルを受ける医師が最も困っていることは「対診書の情報不足」

さらに、他科の医師からの対診書で困った理由を尋ねたところ、「必要な情報が不足している」(回答数:217)が最多となりました。

(上記で「困ったことがある」と回答した医師へ)
Q:それは、どのような理由からですか?(複数選択可)

Q:それは、どのような理由からですか?(複数選択可)

▼医師からのコメント

カルテをいちいち解読しなければならないような、情報不足なものは困ります。(30代/腎臓内科/勤務医(大学病院))

全体的に見てみると、記載内容や項目の不備や、受け取る側の読みやすさ・分かりやすさへの配慮が欠けていることにより「困った状況」に陥ってしまう医師が多いようです。

他科コンサルを行う際、医師が「対診書」に記載すべき5つの項目

受け取り手を困らせない「対診書」の書き方と2つのポイント

続いて、苦手意識のある医師でも受け取り手を困らせず、他科コンサルが円滑に進む対診書を作成する方法を解説します。

他科コンサルの対診書に記載すべき項目は、この5つ

相談・依頼したい内容や患者様の状況を相手へ正確に伝えるために、対診書に記載しておきたい項目は以下の通りです。

【1】プロブレムリスト

診断名だけではなく、患者を診察していく上でコンサルを依頼する医師に知っておいて欲しい項目を記載します。
初診時に得られる医療面接での問題点や臨床症状、診察所見、検査値の異常などからリストアップしましょう。

例)
#1 高血圧
#2 心筋梗塞
#3 認知症

参照:日本内科学会「病歴要約を作成する上でのチェックポイント

▼医師からのコメント

必ず「#プロブレム」を一番上に書きます。(30代/呼吸器内科/勤務医(大学病院以外の病院))

プロブレムリスト毎に 文章が書いてあり、分かりやすかった。(40代/総合診療科/勤務医(大学病院以外の病院))

【2】宛先

コンサルを依頼する医師名(別の医療機関の場合は、医療機関名も)を記載しましょう。

もし主治医が分からない場合には、「〇〇科 御担当医 御侍史」とします。

例)
整形外科 〇〇先生御侍史

【3】挨拶文

同じ医療機関内の医師や 顔見知りの医師である場合にも、必要最低限の挨拶文を入れておくと、受け取る側の心証が良くなります。

例)
平素より大変お世話になっております。
貴科的な御高診のほど、よろしくお願い申し上げます。

▼医師からのコメント

御礼の言葉が添えてあると、好印象です。(50代/一般内科/勤務医(非常勤のみ))

【4】依頼・相談したい内容

コンサルを依頼する医師にお願いしたい内容を、具体的に記載します。

例)
当科にて、〇年〇月ごろに手術を予定しております。
つきましては、貴科にて術前・術後の血糖コントロールをお願い申し上げます

【5】連絡先

質問や意見に対応できるように、自分の連絡先を記載しておきましょう。

例)
整形外科 山田 太郎
電話:〇〇〇
院内PHS:〇〇〇
Email:〇〇〇

▼医師からのコメント

・「不明点あれば気軽にご連絡ください」「このような状況になるときは、再度ご紹介ください」など、紹介を受けた後もコンタクトが取りやすい文言が入っていると安心します。(30代/一般内科/勤務医(非常勤のみ))

相手に伝わる!効果的な対診書を作るための3つのポイント

相手に伝わる!効果的な対診書を作るための2つのポイント

最後に、相手に自分の意図をしっかりと伝えるために知っておきたい対診書作成のポイントを 3つご紹介します。

効果的な対診書作成のポイント①要点は冒頭で、簡潔に伝える

他科の医師も、多忙な勤務のなかでコンサルを受けています。
相手の医師に不要な負担をかけないためにも、対診書では「何のためにコンサルをしているのか?」を明確に示すことが重要です。

具体的には、重要な情報から記載するという方法があります。

挨拶文などの前置きとなる情報は必要最低限にとどめたうえで、

「術前・術後の血糖コントロールのご相談です」

「虫垂炎の手術適応について、ご相談させてください」

など、今回のコンサルで依頼したい内容は冒頭に記載すると良いでしょう。

依頼事項が冒頭にあることで相談意図をスムーズに理解してもらえるため、後に続く詳細な情報にも注意を向けてもらいやすくなります。

▼医師からのコメント

・ぼんやりとした内容を書くのではなく、何をしてほしいのかを明確にする。(20代/眼科/勤務医(大学病院)

依頼したい事、鑑別したい疾患などがあれば明確に伝える。(30代/産業医)

最初にお願いしたい点を簡潔にまとめ、詳細は後で記載する。(40代/総合診療科/勤務医(大学病院))

依頼主旨→病名→経過→処方→データの順に記載している。(60代/一般内科/勤務医(診療所・クリニック))

効果的な対診書作成のポイント②情報を整理し、優先順位をつけて記載する

また、記載する情報を取捨選択することも大切です。

「自身がコンサルを受ける立場であったら、どのような情報を知りたいか」という視点に立って情報を整理し、過不足のないように記載していきましょう。

▼医師からのコメント

電子カルテに記載した申し送りのようなまとめを、そのままコピー&ペーストしただけの文書を受け取ったことがある。(30代 眼科 勤務医(大学病院以外の病院)

「患者を送りますので、後はお願いします」という一文だけの対診書を受け取ったときには、どうしようか悩んだ。結局は、一から自分で診察・検査して対処した。(50代/一般内科/勤務医(非常勤のみ))

・情報が極端に少なく、丸投げ感が露骨にある対診書を受け取ったことがある。(30代/消化器外科/勤務医(大学病院))

短時間で重要事項を伝える「SBAR」の活用も有効

ここで、情報を整理する際に便利なツールを一つご紹介します。

アメリカのAHRQ(医療研究・品質調査機構)では、医療のパフォーマンス向上と患者の安全を高めるために「チームステップス(Team STEPPS®)」というツールを開発しました。
このチームステップスの代表的なコミュニケーションツールの一つが、「SBAR(エスバー)」です。

SBARは、看護師が医師へ必要な情報を正確に伝えるために活用するなど、医療の現場でも多く導入されています。
情報整理の際に、ぜひ活用してみてください。

◆「SBAR」の4つの要素

・S(situation):患者様に何が起こっているか。
例)〇月〇日〇時〇分、発熱と呼吸苦で救急外来を受診しました。

・B(background):患者様の臨床的な背景は何か。
例)既往症に糖尿病・高血圧があります。

・A(assessment):問題に対する自分の考えは何か。
例)胸部レントゲンにて肺炎の所見あり、抗生物質を投与しています。

R(recommendation) 問題に対する自分の提案は何か
例)貴科にて、入院治療をお願いしたいと考えています。

効果的な対診書作成のポイント③相手の「分かりやすさ・読みやすさ」に配慮する

もう一つのポイントは、対診書の読みやすさです。

対診書は、自分以外の人が読むことを前提に作成する書類です。

相手が誤った解釈をしてしまわないよう最大限配慮しながら、コンサルを依頼する医師の専門性や経験、理解度などに応じて、理解してもらいやすい内容にしましょう。

▼医師からのコメント

相手がどのような医師かに合わせて、内容を作成している。
専門家であるか そうでないか、勤務医か、開業医かなど。(50代/消化器外科/勤務医(大学病院以外の病院))

長すぎる対診書は読まれない…分量は「A4用紙 1枚程度」におさめよう

長すぎる文書は、受け取り側が面倒に感じてしまうことにより、しっかりと内容を確認されなくなってしまう可能性があります。

今回のアンケートにおいても、93.7%の医師が「対診書が長すぎて、読むのが面倒・大変と感じたことがある」と回答しています。(「全くない」以外の回答を合計)。

Q:受け取った対診書の分量が多すぎて、正直「読むのが面倒・大変」と感じたご経験はありますか?

Q:受け取った対診書の分量が多すぎて、正直「読むのが面倒・大変」と感じたご経験はありますか?

なお、読みやすい・理解しやすい分量についても尋ねたところ、「A4用紙1枚程度」と回答した医師が7割以上を占めています。

Q:受け取ったときに、「読みやすい」「理解しやすい」と感じる対診書の分量は、どのくらいですか?

Q:受け取ったときに、「読みやすい」「理解しやすい」と感じる対診書の分量は、どのくらいですか?

▼医師からのコメント

・外来中に長文を読む時間はないので、「長い文章は読まれないもの」と思っていただきたいです。(30代/眼科/勤務医(大学病院以外の病院))

挨拶は簡潔に、必要最低限の情報を分かり易く記載する。(60代/循環器内科/勤務医(大学病院以外の病院))

できるだけ手書きは避け、略語などを使用しない

分量と合わせて気を付けたいポイントは、誰でも理解できるように体裁を整えることです。
具体的には、手書きの文字や普段何気なく使っている専門用語や略語を記載することはできるだけ避けたいところです。

▼医師からのコメント

手書きでほとんどの文字が解読できず看護師さんや事務さんにもトライしてもらったが、やはり不明。
結局、患者様から聞き取りをして対応した。(40代/呼吸器内科/勤務医(健診施設や老健など))

・手書きをするなら誰にでも誤解なく、苦労なく読めるクオリティで書いて欲しい。(30代/一般内科/勤務医(診療所・クリニック))

アルファベットの省略語は極力使わず、記載するようにしています。
自科では当たり前となっている言葉でも 他科の先生が知らないことはよくありますし、同じ省略語が別の意味になってしまうこともあります。(30代/眼科/勤務医(大学病院以外の病院))

以上、医師がスムーズにコンサルを行うために知っておきたい「対診書作成のポイント」をご紹介しました。

忙しい医療現場であっても、「どうすれば、お互いが気持ちよく仕事できるか」と考えることは大切です。

・相手の仕事を増やしてしまう事になるので、感謝の意を忘れない。(50代/循環器内科/勤務医(非常勤のみ))

・コンサルトの文章は、それをテーマにした本があるくらい深い話である。
しかし、医師同士の礼節さえ欠かさなければそう問題にはならないように感じる。(30代/泌尿器科/勤務医(非常勤のみ))

他科へのコンサルを行う際は、本記事でご紹介したポイントを押さえつつ、自分の意図や相手への感謝・経緯も上手に伝わる対診書を作成してみてはいかがでしょうか。

参照)

岩田 健太郎「コンサルテーション・スキル 他科医師支援とチーム医療」(南江堂)

東京慈恵会医科大学付属病院看護部・医療安全管理部「ヒューマンエラー防止のためのSBAR/Team STEPPS® チームで共有!医療安全のコミュニケーションツール」(日本看護協会出版会)

◆調査概要「他科依頼・コンサルテーションに関する文書(対診書)についてのアンケート」

調査日:2023年6月20日~6月27日

対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師

調査方法:webアンケート

有効回答数:381

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Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

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