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医師の地域偏在とは?地方勤務による仕事・収入・プライベートの変化を調査

地方勤務で、医師の仕事や収入・プライベートはどう変わる?地域偏在や医師不足の実態も調査

厚生労働省の統計(※)による医師数は343,275名で、年々増加の傾向にあります(2022年12月時点)。

その一方で、過疎地における医師不足(地域偏在)や診療科の偏り(診療科偏在)は深刻化している状況があり、医師偏在の是正に向けたさまざまな対策が検討・実行されています。

今回「Dr.転職なび」では現役医師470名にアンケートを実施し、地域偏在の実態や地方で働くことによる仕事内容や年収、プライベートの変化について調査しました。

(※)参照:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

医師の「地域偏在」の概念と実態

医師偏在とは、医師が偏っている状態のこと

医師偏在とは、医師が適切に配置されていないために、特定の診療科や地域に医師が偏っている状態を表す言葉です。

大きく分けて2つに分類され、特定の診療科に医師が偏っている状態を「診療科偏在」、特定の地域に医師が偏っている状態を「地域偏在」といいます。

「骨太の方針2024」でも、医師偏在対策が明記された

なお、2024年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)」でも、医師の偏在是正に関する方針が示されたことから、日本の医療において医師偏在が喫緊の課題であることがうかがわれます。

具体的には、経済的インセンティブの付与や医学部定員の適正化、管理者要件の大幅な拡大等の規制的手法を組み合わせた総合的な対策のパッケージを、2024年度末までに策定すると明記されました。

(医療・介護サービスの提供体制等)

(前略)
医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在の是正を図るため、医師確保計画を深化させるとともに、医師養成過程での地域枠の活用、大学病院からの医師の派遣、総合的な診療能力を有する医師の育成、リカレント教育の実施等の必要な人材を確保するための取組、経済的インセンティブによる偏在是正、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大等の規制的手法を組み合わせた取組の実施など、総合的な対策のパッケージを2024年末までに策定する。
あわせて、2026年度の医学部定員の上限については2024年度の医学部定員を超えない範囲で設定するとともに、今後の医師の需給状況を踏まえつつ、2027年度以降の医学部定員の適正化の検討を速やかに行う。
(後略)

内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~

約8割の医師は「地域偏在」を感じたことがある

なお今回のアンケートでは、77.0%に上る医師が「地域偏在」を感じたことがあると回答しました(「頻繁に感じている」「何度か感じたことがある」を合計)。

Q:これまでに医師の「地域偏在」を感じたご経験はありますか?

Q:これまでに医師の「地域偏在」を感じたご経験はありますか?

また、地域によって医師数や医療機関数に明確な差がある、患者が受けられる医療の内容にも格差が存在している、医師一人当たりの業務が過重になってしまう等のコメントも寄せられています。

◆地域による医師数、医療機関数の差

大都市の人口集中地域に医療機関が集中しているのを感じている。(30代/産婦人科/勤務医(民間病院)/三重県)

離島や過疎地の開業医や病院が極端に少ない。(40代/腎臓内科/勤務医(民間病院)/大阪府)

◆患者が享受できる医療の地域格差

・在宅復帰した後に、壊れたり変形したりした装具をそのまま使っている人が多い
交換等のためには都市部にあるリハビリテーション科や一定規模以上の病院に赴く必要があるが、元々モビリティが低下した方には大変なことである。(50代/リハビリテーション科/勤務医(民間病院)/静岡県)

・北海道の地方病院、離島の総合病院で、医師不足により手術や処置ができない事例を目の当たりにした。(50代/麻酔科/勤務医(民間病院)/宮崎県)

・北海道の地方部では、脳神経外科と心カテができる病院が離れている。
心筋梗塞や脳梗塞では、治療ができる病院からの距離が延びると明らかに死亡率が上昇していく。
住む場所で、その人の寿命が変わってくることを実感する。(40代/一般内科/勤務医(民間病院)/山形県)

◆診療科の縮小等により、医師一人の業務負担が増加

・私の勤務していた地方の病院では脳外科、産婦人科が無くなった。泌尿器科も1人の医師が担当し、透析は外科が担当している。(70代以上/消化器内科/産業医/北海道)

・外勤で地方に勤務した際、何でも診ざるを得ない状況でした。(40代/健診・ドック/勤務医(非常勤のみ、フリーランス)/岡山県)

地方勤務に対する、医師の期待と不安

地方勤務に対する、医師の期待と不安

「地域偏在」と聞くと、地方勤務を希望する医師が少ないという要因を連想しがちです。

しかし今回の調査では、一定数の医師は地方勤務に対して前向きな関心を寄せていることがわかりました。

約7割の医師は、「地域医療への参画」に関心がある

将来的に地域医療に携わりたいと回答した医師は、全体の7割弱に上ります(「積極的に携わりたい」「機会があれば携わりたい」を合計)。

Q:今後、地域全体で住民の健康を守る「地域医療」に携わりたいと思いますか?

将来的に地域医療に携わりたいと回答した医師は、全体の7割弱に上ります(「積極的に携わりたい」「機会があれば携わりたい」を合計)。

Q:今後、地域全体で住民の健康を守る「地域医療」に携わりたいと思いますか?

都心部で働く医師の約半数は、「地方で働くこと」に関心がある

さらに、現在都心部で働いている医師の49.6%は、将来的に地方で働くことに関心があると答えています(「大いに関心があり、具体的に検討している」「ある程度関心はある」を合計)。

Q:将来、ご自身が地方(※)で「勤務する」ことに関心はありますか?
※東京都23区や政令指定都市、県庁所在地等の都市部以外

Q:将来、ご自身が地方(※)で「勤務する」ことに関心はありますか?
※東京都23区や政令指定都市、県庁所在地等の都市部以外

地方勤務で期待することのトップは「年収や待遇の向上」

地方で働くことに関心がある理由では、「年収や待遇が向上しそう」(回答数:67)が最多で、次いで「プライベートの時間を確保しやすそう」(回答数:62)、「地域医療に貢献したい」(回答数:59)という回答が続いています。

Q:地方の勤務に関心がある理由として、当てはまるものを教えてください。

Q:地方の勤務に関心がある理由として、当てはまるものを教えてください。

地方勤務で不安なことのトップは「交通の利便性が悪い」

一方、地域で働くことを想定した場合の不安要素では、「交通の利便性が悪い」(回答数:69)が最多でした。

Q:地方で働くことを想定した場合、不安を感じることを教えてください。

Q:地方で働くことを想定した場合、不安を感じることを教えてください。

また、医師不足によって1人あたりの「業務量が増える」(回答数:51)ことを懸念する声も多く寄せられています。

▼医師からのコメント

・医師偏在によって、自身に業務が集中してしまうのではと懸念する。(50代/一般内科(訪問診療)/勤務医(民間病院)/千葉県)

地方勤務の医師の声から紐解く、医師が「地方で働く」ということ

地方勤務の医師の声から紐解く、医師が「地方で働く」ということ

では、実際に医師が地方で働く場合、収入や仕事内容、プライベートにはどのような変化があるのでしょうか?

現在地方で働いている医師133名の声をもとに、医師の地方勤務の実情を読み解いていきます。

地方で働く医師の実情【1】地方で働く理由

現在地方で勤務している理由のトップは、「地元である」(回答数:59)でした。

具体的には、出身地の医療に貢献したいという思いからUターンで地元に戻って来る、実家が開業医の場合に承継するといったケースが多いようです。

「待遇・年収が良い」(回答数:36)は、三番目に多くなっています。

Q:現在、地方で勤務している理由を教えてください。

Q:現在、地方で勤務している理由を教えてください。

地方で働く医師の実情【2】地方で働くことによる変化

続いて、仕事内容・年収・プライベートが、都心部での勤務と比較してどのように変わったか尋ねました。

仕事における変化:「変わらない」が約6割

仕事内容については、都心部での勤務時と「変わらない」(57.9%)が最多となり、次いで「良い影響があった」(35.3%)が多くなっています。

Q:都心部での勤務と比較して、「仕事内容」にはどのような変化や影響がありましたか?

Q:都心部での勤務と比較して、「仕事内容」にはどのような変化や影響がありましたか?

なお「良い影響があった」と回答した医師からは、臓器別に担当医師が分かれるケースの多い都心部の診療スタイルとは異なり、地方では専門性によらない全人的な医療を身に付けられたとの声が複数寄せられていました。

▼良い影響があった

・都心部は病院が多く専門性の高い医師も多いので、いざとなればその医師に紹介すれば良い反面、専門外のことには対応する力にかける。一方、地方では病院が少なくどのようなことでも一時的な対応が求められるから、幅広い領域における初期対応力が身についた。(60代/健診・ドック/健診センター/鳥取県)

診療以外の医療活動を学べた。(60代/一般内科/開業医/大分県)

一方で「悪い影響があった」と回答した医師からは、医師不足による業務量や時間外勤務が増加した、資格を取得するための症例を集めにくいといった声が上がっています。

▼悪い影響があった

忙しい。(40代/一般内科/勤務医(民間病院)/山形県)

・やはり人手不足なので、時間外に拘束されることが多い。(60代/健診・ドック/健診センター/鳥取県)

・症例が少ないため、専門医など資格が取りにくい。(50代/循環器内科/勤務医(国公立病院)/香川県)

年収や待遇における変化:「良い影響があった」が約半数

年収や待遇の変化については、「良い影響があった」(47.1%)が最も多くなっています。

一方で「悪い影響があった」(6.6%)は全体の1割以下にとどまっており、年収や待遇が向上または維持するケースが大半であることがわかります。

Q:都心部での勤務と比較して、「年収・待遇」にはどのような変化や影響がありましたか?

「良い影響があった」と回答した医師からは、年収自体が上がったという声や、地方の物価や生活費が安いため結果として生活に余裕ができたという声が寄せられています。

▼良い影響があった

・都心部で働いているときよりも、年収が上がった。(50代/眼科/勤務医(民間病院)/香川県)

・総額としては減ったが単価は上がり、物価や生活費は安いので生活が楽になった。(40代/一般内科/勤務医(診療所・クリニック)/新潟県)

・転職する場所によっては、「地域赴任医師支援金」を受け取れることがある。(40代/眼科/勤務医(民間病院)/茨城県)

医師求人市場では、医師数が過剰な都心部よりも医師が不足している地方にある医療機関の方が、好待遇の条件で迎えてくれる傾向があります。

さらに物価が安く支出を抑えやすい環境であることから、今よりも収入を上げるために転職を検討する場合には、「地方での勤務」も候補に加えて検討するのがオススメです。

プライベートにおける変化:「良い影響があった」が約半数

プライベートについては「変わらない」(45.9%)が最多となり、僅差で「良い影響があった」(44.4%)が続きました。

Q:都心部での勤務と比較して、「プライベート」にはどのような変化や影響がありましたか?

プライベートについては「変わらない」(45.9%)が最多となり、僅差で「良い影響があった」(44.4%)が続きました。

Q:都心部での勤務と比較して、「プライベート」にはどのような変化や影響がありましたか?

「良い影響があった」と回答した医師からは、家族と過ごす時間が増えた、都心部より生活しやすいといったコメントが寄せられています。

▼良い影響があった

家族との時間が増えた。農業や自給自足など、今まで関心がなかったことに取り組むようになった。(50代/麻酔科/勤務医(民間病院)/宮崎県)

都心部より生活しやすいので、プライベートも安定している。(40代/呼吸器内科/開業医/石川県)

一方「悪い影響があった」と回答した医師からは、都心部のように交通の便が発達していないことで、通勤時間が長くなってしまったという声が散見されました。

▼悪い影響があった

・自宅からの通勤時間が長くなった。(60代/整形外科/勤務医(民間病院)/東京都)

生活するために時間が多く取られるため、ゆっくり自分の時間が取れない。都会のようにスキマ時間に手続きする等もできず、通勤帰りに食料調達も手間がかかったり地域の草刈りにも動員されたりでプライベートほぼない。(50代/リハビリテーション科/勤務医(民間病院)/静岡県)

医師が地方で働くメリットと求人探しのポイント

医師が地方で働くメリットと求人探しのポイント

最後に、医師が「地方で働きたい」と感じるメリットと、地方の求人を検討する際に注意したい点をお伝えします。

地方で働く医師の60.9%は「今後も地方で働き続けたい」

現在地方で働いている医師に今後のキャリアプランを尋ねた質問では、全体の6割を占める医師が「地方で働き続けたい」と回答しました。

Q:今後のキャリアプランについて、ご自身のお考えに近いのはどちらですか?

Q:今後のキャリアプランについて、ご自身のお考えに近いのはどちらですか?

医師が「地方で働きたい」と感じる理由とメリット

上記のように半数を超える医師が「今後も地方で働きたい」と感じているのは、どのような理由からなのでしょうか。

医師のコメントから、医師が地方で働くメリットを抽出してご紹介します。

①ワークライフバランスを取りやすい

有給休暇が取りやすい等、オンとオフを切り分けた働き方でワークライフバランスを整えやすいという声が多く集まっています。

ワークライフバランスを取りやすい。(40代/リウマチ科/勤務医(民間病院)/群馬県)

有給休暇を取りやすい。(40代/リウマチ科/勤務医(民間病院)/群馬県)

②職場や患者との信頼関係を築きやすい

また、患者や職場でのコミュニケーションが円滑で、信頼関係を構築しやすいという声も複数上がっていました。

・概して、患者が大らか。(40代/眼科/勤務医(民間病院)/茨城県)

患者やスタッフとの距離が近く、信頼関係を構築しやすい。(50代/麻酔科/勤務医(民間病院)/宮崎県)

③大きな裁量を持って、地域医療に深く関与できる

地域医療ならではの、1人の医師に任される業務領域の広さや裁量の大きさに魅力を感じている方も多くいます。

やりたい医療ができている。(40代/脳神経内科/勤務医(非常勤のみ、フリーランス)/静岡県)

・自身に任される業務上の裁量が大きい。(40代/一般内科/勤務医(民間病院)/山形県)

・仕事もいろいろな経験ができる。人材が足りないが、その分重宝してくれてこちらの要望も受け入れてくれやすい。(40代/一般内科/勤務医(診療所・クリニック)/新潟県)

それぞれの場所できちんとできることに取り組んでいけば、必ず良い経験ができる。(60代/健診・ドック/健診センター/鳥取県)

④医師として大きなやりがいがある

地域医療に深く関わり、地域にとって必要な存在とされることが働く上でのモチベーションとなるという声も複数寄せられました。

・1人の役割や存在感が大きく、医師としての更なる自覚が芽生えた。(60代/一般内科/開業医/大分県)

感謝される。(50代/一般外科/勤務医(診療所・クリニック)/岩手県)

必要としてもらえる環境がある。(40代/脳神経内科/勤務医(非常勤のみ、フリーランス)/静岡県)

地方勤務の求人探しでは「精度の高い情報収集」が重要

このようにさまざまなメリットがある地方での勤務ですが、転職検討時にはデメリットとなる部分も含めた多角的な情報収集が必要不可欠です。

とくに現在都心部に住んでいる医師が、物理的に離れた地方の医療機関を検討する場合には、まずは複数医療機関の情報を集めて比較検討することから始めるケースが大半です。

・地方が、都市部より必ずしも良い環境であるとはいえない。
巡り合わせ次第なので、どこで働くかは自分の目で見て選ぶしかない。(50代/皮膚科/勤務医(民間病院)/長崎県)

上記のコメントにあるように、地方であることにこだわりすぎることなく、「転職でどのようなことを達成したいのか」という軸を固めた上で、最適な選択ができるようにしたいものです。

地域に根差した求人情報なら、全国展開の「Dr.転職なび」がオススメ

医療機関の情報を集めるときには、医師専門の転職エージェントを活用するとスムーズです。

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「地方での勤務には関心があるが、なかなか踏み込めない」という先生は、まずはご自身が地方で働くイメージを膨らませるための情報収集から始めてみませんか。

Dr.転職なびに相談する

◆調査概要:「医師偏在」に関するアンケート

調査日:2024年5月28日~6月4日

対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師

調査方法:webアンケート

有効回答数:470

Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

医師の転職、キャリアアップ応援コンテンツを提供する「Dr.なび」編集部です。医師転職サービスを提供する株式会社エムステージが運営しています。

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