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補助はある?学会は「労働」?10の質問で迫る、医師の自己研鑽とは

補助はある?学会は「労働」?10の質問で迫る、医師の自己研鑽とは

医師の自己研鑽について、医師と医療機関の間に共通認識・ルールがある医療機関は わずか7%-。

前編記事でご紹介したこのような状況は、2024年4月からの「医師の働き方改革」に向けた対応を急ピッチで進めている医療機関にとって、大きな課題となっているようです。

医師469名に行った独自アンケートの結果をご紹介。
勤務先からの補助制度や労働として扱われるべきと考える研鑽などに関する10の質問から、なかなか知る機会のない医師の自己研鑽の実情を調査しました。

医師の「自己研鑽」の実情とは?

97%の医師にとって、継続的な自己研鑽は「重要」なもの

現代の医学や医療技術は、日進月歩で発展し続けています。
そのため医師は安全で質の高い医療を提供するためにも、常に新しい知識や技術を取り入れる姿勢が求められています。

今回のアンケートにおいても、97%の医師が「継続して自己研鑽を行うことは、医師にとって大切」と回答しています(「大いにそう思う」「そう思う」の回答を合計)。

Q1:医師として、継続して自己研鑽を積むことは大切だと思いますか?

Q1:医師として、継続して自己研鑽を積むことは大切だと思いますか?

76.9%の医師は「勤務時間内」で自己研鑽を行っている

それでは、医師はどのようなタイミングで自己研鑽を行っているのでしょうか。

Q2:自己研鑽を行うのは、どのようなタイミングですか?

Q2:自己研鑽を行うのは、どのようなタイミングですか?

最も多かったのは「勤務時間内・勤務時間外の両方で行っている」(60.3%)で、次いで「勤務時間外で行っている」(23%)、「勤務時間内で行っている」(16.6%)となりました。

手術や処置の見学や予習、振り返りといった医療機関内でないと難しい研鑽もあること等が影響しているのか、勤務時間内を含めて自己研鑽を行っている医師が全体の6割を占めています。

医師の自己研鑽に対する、勤務先のサポート状況は?

医師の自己研鑽に対する、勤務先のサポート状況は?

医師にとって欠かすことができない日常的な学びの機会である、自己研鑽。
続いて、勤務先の医療機関からの自己研鑽に対する費用補助などの支援状況について尋ねました。

62%の医師の勤務先には、自己研鑽に対する補助がある

勤務先に医師の自己研鑽をサポートする制度や補助はあるか尋ねたところ、6割を超える医師が勤務先に医師の自己研鑽をサポートする制度が「ある」と回答しました。

Q3:勤務先に、自己研鑽に対する制度や補助はありますか?

Q3:勤務先に、自己研鑽に対する制度や補助はありますか?

さらに具体的なサポート内容を尋ねたところ、学会参加に関連する補助制度がある医療機関が多いという傾向がみられました。

以下のグラフのように最も多いのは「学会の参加費用補助がある」(回答数:213)で、次いで「学会参加のための交通費・宿泊費補助がある」(回答数:201)、「学会参加は、出張扱いとする」(回答数:141)が多くなっています。

勤務先による自己研鑽に関する補助内容

勤務先選択の際、89.7%の医師は「研鑽への補助の充実度」を重視

次に 医師の勤務先検討の際、医療機関による研鑽に対するサポートの充実度はどのくらい重視されるのか尋ねました。

Q4:「自己研鑽」に関する制度や補助の充実度は、医師が勤務先を検討するうえで重要な要素だと思いますか?

Q4:「自己研鑽」に関する制度や補助の充実度は、医師が勤務先を検討するうえで重要な要素だと思いますか?

最も多かったのは「重要である」(47.5%)、次いで「非常に重要である」(42.2%)が多くなっています。
このように全体の9割近くを占める医師は、自身の勤務先選定において「研鑽に対する補助の充実度」を重要な指標と捉えているようです。

「非常に重要である」「重要である」

◆質の高い医療を提供するために必要

・自己研鑽が診療の質を上げ、病院としてもメリットがある。(重要である/50代/小児科/勤務医(一般病院))

・自己研鑽の有無で医療レベルの差が出て、患者生命にも関わる。(重要である/60代/一般内科/勤務医(一般病院))

◆モチベーションを高く維持することができる

モチベーションが上がるので、病院としてもサポートしてもらいたい。(重要である/40代/耳鼻いんこう科/勤務医(一般病院))

・自己研鑽に対して便宜が図られる施設とそうでない施設では、やはり勤務へのモチベーションは違ってくる。(重要である/60代/一般外科/勤務医(一般病院))

◆研鑽に関する費用負担が大きいため

・正直、書籍や学会の旅費などは負担が大きい。(重要である/40代/精神科 勤務医(一般病院))

・講習会や学会などの出席には、経済的な補助制度も必要です。(重要である/60代/消化器外科/勤務医(大学病院))

◆施設情報として医師の資格を公開するのであれば、補助もして欲しい

・専門医取得に関する、施設としての理解を示すものと考える。(非常に重要である/60代/呼吸器外科/勤務医(一般病院))

専門医資格を病院が広報に利用するのであれば、その単位取得のための学会参加や更新費用を負担するのは当然である。(重要である/40代/皮膚科/勤務医(一般病院))

◆研鑽を行うための「時間」を保障して欲しい

・自分自身の研鑽なので補助はある程度の範囲で良いと思いますが、自己研鑽の時間はある程度保障されていると良いと思います。(重要である/30代/腎臓内科/勤務医(大学病院))

今よりも研鑽へのサポートが充実した勤務先を、探してみませんか?

「あまり重要ではない」

◆学会に所属していないため、必要性を感じない

学会には所属しておらず、お金が何十万もかかることはしていないため。(あまり重要ではない/50代/整形外科/勤務医(一般病院))

◆研鑽への補助以外に、重視したい条件がある

仕事の内容や進め方のほうが重要だから。(あまり重要ではない/50代/泌尿器科/勤務医(診療所・クリニック))

賃金や勤務時間管理など、その他の労働条件の方が重要なので。(あまり重要ではない/30代/小児科/勤務医(一般病院))

自己研鑽と労働時間に関する、医師の向き合い方は?

自己研鑽と労働時間に関する、医師の向き合い方は?

続いて医師は研鑽と労働について現状ではどのような考えを持っているのか、そして今後はどのような向き合い方で研鑽を行っていくのか尋ねました。

研鑽における労働時間を定義することには、賛否両論がある

まず自己研鑽を「労働時間」と「労働時間でないもの」を明確に切り分ける基準が設けられることについてどのように感じるか、聞きました。

Q5:「自己研鑽」と「労働時間」を区別する基準が設けられることについて、どのようなお考えですか?

まず自己研鑽を「労働時間」と「労働時間でないもの」を明確に切り分ける基準が設けられることについてどのように感じるか、聞きました。

Q5:「自己研鑽」と「労働時間」を区別する基準が設けられることについて、どのようなお考えですか?

最も多かったのは「賛成である」(31.6%)でしたが、次いで「どちらともいえない」(29.9%)、「仕方がないことだと思う」(26.9%)もそれぞれ約3割を占めており、医師によって意見が分かれていることが分かります。

◆賛成である

曖昧な基準にメスを入れる必要がある。(30代/麻酔科/勤務医(一般病院))

・判断基準は重要です。(60代/消化器外科/勤務医(大学病院))

自己研鑽という名の「上司の手伝い」が減って欲しい。(40代/精神科/勤務医(一般病院))

◆反対である

・研鑽は、すべて「労働時間」であるべきです。(30代/眼科/勤務医(一般病院))

・自己研鑽と労働そのものとが、密接に関わっているため。(30代/放射線科/勤務医(一般病院))

すっきり分離できる状況ではない。(60代/一般外科/勤務医(一般病院))

・「(労働時間外として扱う)自己研鑽にしろ」という圧力がかかりそう。(40代/消化器外科/勤務医(一般病院))

◆どちらともいえない

・自己研鑽は自分の意思で行うものなので、労働時間とは関係ないと思います。(50代/一般外科/勤務医(一般病院))

・研鑽と労働を区別することは大変難しい、と考えるため。(20代/産婦人科/勤務医(大学病院))

◆仕方がないことだと思う

・どこかで線引きが必要となる。(60代/呼吸器外科/勤務医(一般病院))

自己研鑽のために時間外が多いのは、同僚として疑問を感じるから。(50代/健診・ドック/勤務医(健診施設や老健など))

43.9%の医師は、学会参加は「労働時間」として扱われるべきと回答

続いて、上司の指示の有無を問わず「労働時間」として扱うべきと考える研鑽の範囲について尋ねました。

Q6:上司による指示の有無を問わず、「労働時間(賃金が発生するもの)」として認められるべきと思う「自己研鑽」はありますか?(複数選択可)

Q6:上司による指示の有無を問わず、「労働時間(賃金が発生するもの)」として認められるべきと思う「自己研鑽」はありますか?(複数選択可)

最も多かったのは「学会や勉強会への参加」(回答数:206)で、僅差で「院内の勉強会への参加」(回答数:203)、そして「新しい治療法や新薬についての勉強」(回答数:168)が続いています。

◆学会や勉強会への参加、発表準備

・時間と経費が必要なものだから。(60代/一般内科/勤務医(一般病院))

◆院内の勉強会への参加、発表準備

・院内の勉強会は義務で、業務だと思うから。(30代/麻酔科/勤務医(一般病院))

・院内スタッフ向けの勉強会などは、そもそも就労時間外に行われることが多いため。(40代/腎臓内科/勤務医(一般病院))

◆診療ガイドラインについての勉強 ◆新しい治療法や新薬についての勉強

・診療のための準備は勤務時間だとありがたいです。(30代/腎臓内科/勤務医(大学病院))

◆専門医の取得や更新に係る症例報告作成・講習会受講など

勤務先利益に資するものは全て、賃金発生に含めるべきである。(40代/皮膚科/勤務医(一般病院))

◆臨床研究に係る診療データの整理・症例報告の作成・論文執筆

・論文などを発信することも、大事だと思う。(30代/循環器内科/勤務医(一般病院))

◆症例経験や上司・先輩が術者である手術・処置等の見学

・労働時間内の隙間時間で、他の処置や手術の見学をすることは参考になる。(50代/一般外科/勤務医(一般病院))

・緊急の手技の見学は医師の業務上必須で、見学や自己研鑽なしにいきなり患者さんに施行するものでないと思うから。(30代/麻酔科/勤務医(一般病院))

なお、「労働時間」として取り扱われないのであれば控えたいと感じる研鑽についても尋ねたところ、全体の52.0%の医師が「特にない」(回答数:244)と回答しています。

自身のためでもあるので。(40代/耳鼻いんこう科/勤務医(一般病院))

必要だと感じれば、お金が出なくともやる。(50代/消化器外科 勤務医(一般病院)

Q7:「労働時間(賃金が発生するもの)」として認められないのであれば、実施を控えたいと感じる「自己研鑽」はありますか?(複数選択可)

Q7:「労働時間(賃金が発生するもの)」として認められないのであれば、実施を控えたいと感じる「自己研鑽」はありますか?(複数選択可)

一方、労働時間として取り扱われないのであれば控えたいこととして最も多く選択されたのは、「院内の勉強会への参加、発表準備」(回答数:120)です。

◆院内の勉強会への参加、発表準備

・上司の判断で英語抄読会を行っており、迷惑だと感じている。(50代/整形外科/勤務医(一般病院))

・特に院内の職員向けの勉強会などは、自分の利益には全くならない。報酬なしにこれを勤務医の責務とするのは、間違っている。(40代/皮膚科/勤務医(一般病院))

医師の自己研鑽における「労働時間」を定義する基準に応じて、医師に求められる業務の範囲にも今後変化があるかもしれません。

自己研鑽における「労働」が定義されると、医師にはどんな影響がある?

最後に、自己研鑽を「労働時間」と「労働時間でないもの」を明確にする基準が設けられることによる医師への影響について聞きました。

医師の知識・技術水準は「変わらない」が28.4%

まず医師の知識や技術の水準にどのような影響があるか尋ねたところ、最も多かったのは「どちらともいえない」(32.6%)、次いで「変わらない」(28.4%)、「水準が高まる」(21.5%)となりました。

Q8:「自己研鑽」と「労働時間」を区別する基準が設けられることで、<医師の知識・技術水準>にはどのような影響があると思いますか?

Q8:「自己研鑽」と「労働時間」を区別する基準が設けられることで、<医師の知識・技術水準>にはどのような影響があると思いますか?

◆水準が高まる

よりアカデミックなこともできるようになる。(30代/循環器内科/勤務医(一般病院))

メリハリがつく。(30代/麻酔科/勤務医(一般病院))

◆変わらない

元々学会準備に超過勤務をつけないなどの常識範囲で動いていたので、あまり変わらないのかなとは思います。必要に応じてやることなので。(30代/腎臓内科/勤務医(大学病院))

◆水準が低下する

・労働時間外でやれと言われて、研鑽する医師は減りそう。(40代/消化器外科/勤務医(一般病院))

◆どちらともいえない

基準がどこに設定されるかによって、影響が変わりそう。(50代/形成外科/勤務医(一般病院))

・もともと、自己研鑽する・しないには個人差があるから。(50代/健診・ドック/勤務医(健診施設や老健など))

医師の研鑽への意欲は、「高まる」「変わらない」が25.8%

続いて、医師の研鑽に対する意欲にはどのような影響があるか尋ねたところ、「どちらともいえない」(28.8%)が最多で、次いで「意欲が高まる」(25.8%)、「変わらない」(25.8%)となっています。

Q9:「自己研鑽」と「労働時間」を区別する基準が設けられることで、<医師の研鑽意欲>にはどのような影響があると思いますか?

続いて、医師の研鑽に対する意欲にはどのような影響があるか尋ねたところ、「どちらともいえない」(28.8%)が最多で、次いで「意欲が高まる」(25.8%)、「変わらない」(25.8%)となっています。

Q9:「自己研鑽」と「労働時間」を区別する基準が設けられることで、<医師の研鑽意欲>にはどのような影響があると思いますか?

◆意欲が高まる

・しっかり分けていただければ、もっとアカデミックなことにも参加できる。(30代/循環器内科/勤務医(一般病院))

時間にメリハリをつけて働く姿勢が涵養される。(60代/呼吸器外科/勤務医(一般病院))

◆意欲が低下する

・何もかもがんじがらめは馬鹿らしい。自己の意思で行ってこそ、自己研鑽。(60代/一般内科/勤務医(一般病院))

◆どちらともいえない

・やる人は、やる。(50代/消化器外科/勤務医(一般病院))

・人によって、影響がある人もいると思う。(50代/一般外科/勤務医(一般病院))

25.6%の医師は、医師の働き方「良い影響がある」と回答

最後に、医師の働き方への影響について聞きました。

Q10:「自己研鑽」と「労働時間」を区別する基準が設けられることで、<医師の働き方>にはどのような影響があると思いますか?

Q10:「自己研鑽」と「労働時間」を区別する基準が設けられることで、<医師の働き方>にはどのような影響があると思いますか?

働き方への影響についても「どちらともいえない」(30.9%)が最多、次いで「良い影響がある」(25.6%)、「変わらない」(24.5%)となりました。

◆良い影響がある

・自己研鑽にも手当がつくのであれば、良いと思う。(30代/精神科/勤務医(一般病院))

時間外勤務は減ると思う。(50代/健診・ドック/勤務医(健診施設や老健など))

働き方にメリハリが出る。(30代/麻酔科/勤務医(一般病院))

◆変わらない

・制度によらずやる人はやるし、やらない人はやらないだろうから。(40代/腎臓内科/勤務医(一般病院))

事務方が認めないだろう。(30代/一般内科/勤務医(大学病院))

◆どちらともいえない

・よりビジネスライクになる。それは、労働者としてはいいこと。しかし、患者様にとっては不利益。(60代/産婦人科/勤務医(大学病院))

前編では研鑽と労働時間に関する厚生労働省のガイドラインである「医師の研鑽と労働時間に関する考え方について」の概要をご紹介しましたが、今回ご紹介した医師の声からは、同じ医師間であってもさまざまな見解や意見があることが明らかとなりました。

このことから、国から基本となる考え方は示されているものの、実際に医療現場で働く医師と医療機関の共通認識となる基準を設けることは決して安易でないということが示唆されます。

2024年4月から始まる「医師の働き方改革」に向けて、勤務先はどのような対応を行っていくのか。
自己研鑽に関するご自身の考えを整理しながら、最新の動向を注視していく必要がありそうです。

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(※)調査概要「医師の自己研鑽に関するアンケート」

調査日:2023年4月13日~4月20日

対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師

調査方法:webアンケート

有効回答数:469

Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

医師の転職、キャリアアップ応援コンテンツを提供する「Dr.なび」編集部です。医師転職サービスを提供する株式会社エムステージが運営しています。

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