先生は医師としてのキャリアを積まれる中で、「産業医」という働き方に興味をもったご経験はありますか?
今回は「産業医」に関するこのような疑問について、産業保健事業部 キャリアサポート部 リーダーの山下が解説いたします。
産業医とは、どんな医師?
産業医は労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う役割を持った医師のことです。企業は、従業員の人数が50人以上の事業場ごとに産業医を選任する義務があります。
昨今の働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大などによる社会的需要の高まりとともに多くの企業から求められているのが、職場の安全や従業員の心身の健康を保持・促進してくれる「産業医」です。
臨床医と産業医の違いは?
臨床医と産業医は、働く場所や立場などさまざまな点が異なります。
このように臨床医は患者個人を診察するのに対して、産業医は 労働者が健康に仕事を行えるように事業主と労働者といった集団に対するアプローチを通じて、けがや病気等の予防に努めるという役割があります。
産業医の業務内容は?
産業医がどのような業務を担当しているのか、主な10項目をご紹介します。
【1】衛生委員会への出席と意見出し
従業員50名以上で設置・開催が必要となる「衛生委員会」や、特定の業種で設置・開催が必要となる「安全委員会」の構成員として出席し、事業場に対して意見を述べます。
【2】衛生講話
企業の希望に応じて、安全衛生委員会や職場において社員に向けて研修を実施します。
【3】職場巡視
少なくとも月1回職場を巡視し、職場環境の確認を行います。問題が発見された場合には衛生委員会等で報告し、改善を図ります。
【4】健康診断結果チェックと就業判定
健康診断で異常の所見がある社員について、就業判定を行います。そのうえで、休職等が必要と判断した従業員に対して「意見書」を作成します。
【5】健康相談
従業員から健康に関する相談を希望された場合、健康相談を受けます。
【6】休職面談
従業員から休職を希望された場合や、体調不良での欠勤、遅刻、早退が続いているなどの状況が確認された場合に、休職面談を行います。
【7】復職面談
求職していた従業員から職場復帰の希望があった場合に、復職面談を行います。病状の回復程度を把握し、職場復帰の可否を判断します。また、復職後の労働条件について勤務の軽減等が必要な場合には、その旨期間を定めて就業制限を指示します。
【8】ストレスチェック実施
ストレスチェックの実施者として、計画・実施・終了まで全般に携わることが多くあります。
【9】高ストレス者への面談
ストレスチェックの結果、高ストレスにより面接指導が必要であると判断された従業員がいる場合には、高ストレス者面談を行います。その後の就業に関する意見を述べたり、場合によっては休業に関するアドバイスも行ったりすることもあります。
【10】長時間労働者への面接指導
時間外・休日労働時間が1か月あたり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対して、申し出があった場合に長時間労働者面接指導を行います。また、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える研究開発業務従事者に対しては、申し出なしでも面接指導を行います。面談を通じ、産業医がストレス状態やその他の心身の状況及び勤務の状況等を確認します。
以上が、産業医が担当している主な業務となります。日本で活動している産業医の多くは嘱託産業医という勤務形態が多く、月1回・数時間の企業訪問でこれらの仕事を行っています。
専属産業医・嘱託産業医の違いは?
次に、求人を検討する際に知っておきたい専属産業医と嘱託産業医という働き方の違いと、気になる報酬の相場について解説します。
事業場の規模の違い
事業場で働く従業員の人数により、選任する産業医が異なります。
・従業員数が 50人~999人 の事業場… 月1回程度訪問する「嘱託産業医」を選任
・従業員数が 1,000人を超える 事業場… 常勤する「専属産業医」を選任(義務)
・従業員数が 3,000人を超える 事業場… 常勤する「専属産業医」2名を選任(義務)
業務内容と勤務頻度の違い
専属産業医と嘱託産業医で、 担当する業務の内容に大きな違いはありません 。異なるのは勤務する頻度で、 専属産業医は、週4日程度事業場に常駐して業務にあたります。一方 嘱託産業医の多くは、月に1回程度 事業場を訪問して勤務しています。
なお、日本で働く産業医の大半は「嘱託産業医」として企業から選任され、産業保健業務を行っています。
報酬の相場
株式会社エムステージの調査によると、「専属産業医」「嘱託産業医」の報酬額の相場となっています(2022年1月現在)。
専属産業医…年俸800万円~ 1,500万円程度
嘱託産業医…月1回・ 1時間の訪問で数万円程度
なお、企業や事業場の状況、契約時間、勤務日数などによって変わります。
産業医になるための要件
では、産業医として働くためにはどんな要件を満たす必要があるのでしょうか。
まずは、労働者の健康管理等を行う専門性を確保するため「医師であること」が前提となります。
その上で、以下のいずれかの要件を備えていることが必要となります。
・日本医師会の産業医学基礎研修を修了している:日本医師会認定産業医(5年毎更新)
・産業医科大学の産業医学基本講座を修了している
・産業医科大学で該当課程を修了、卒業し、大学が行う実習を履修している
・労働衛生コンサルタント(保健衛生区分)に合格している
・大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者である
産業医求人の探し方
最後に、産業医の「求人」についてご説明します。
企業が産業医を探す方法は、医師会(地域による)や企業の健康診断の運営機関、地域産業保健センターなどがありますが、近年急増しているのは 医師紹介会社を利用するという方法です。
医師紹介会社には、さまざまな産業医からの登録があります。そのため企業にとっては、自社の特徴やニーズに合った産業医とのマッチングがスムーズになるメリットがあります。
求人を探している医師にとっても、希望に沿った求人を紹介してくれるので効率的に求職活動を行うことができるという大きなメリットがあります。
「産業医」という働き方にご興味のある先生は、ぜひこの機会に ご希望条件をお聞かせください。
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