病院見学は、医師の転職活動において重要なステップで、実際の医療機関の雰囲気や業務内容を体感できる貴重な機会です。通常、面談後に院内を見学し、30分程度で行われます。見学を通じて、職場の環境やスタッフの雰囲気を直接感じることができ、ミスマッチを防ぐ助けになります。病院見学は必須ではありませんが、転職の重要な決断をするためには非常に有意義といえるでしょう。
本記事では、転職を考えている医師の病院見学について、常勤担当コンサルタントの卯田がくわしく解説します。
\私が解説します/
病院見学の流れとメリット
昨今ではインターネットやSNSなどを通じて、医療機関の情報や口コミを入手しやすくなっています。
とはいえ、自分の目で見たうえで判断をすることは非常に大切なこと。
「転職」という医師のキャリアにおいて大きな転機となるイベントであれば、なおさらです。
多くの病院でもその重要性を理解しているため、「病院見学」というかたちで院内の実情をオープンにし、自院の良さや雰囲気を実際に感じることができるような機会が設けられています。
病院見学の流れ
面談後に続けて行われることが多い
多くの場合、院長や事務長などの採用担当者と行う面談に続いて、そのまま病院内を見学するという流れとなっています。
医師が病院見学をすることは珍しいことではなく、転職活動をする医師の多くが経験していることといえます。
所要時間の目安は、30分程度
病院見学に要する時間の目安は、面談と合わせて1時間から1時間半程度をみておくと良いでしょう。
見学自体は、およそ30分程度で終わるケースがほとんどです。
医師が病院見学をするメリット
病院見学は、求人票を見たり評判を伝え聞いたりしただけでは分からない、病院の実情を知ることができる貴重な機会です。
次は、転職を検討する医師にとっての病院見学のメリットについて解説していきます。
病院やそこで働く人の雰囲気を体感できる
病院内の案内は、院長や看護師長など 現場の細部までよく知っている方が担当するケースが大半です。
そのような方から具体的なお話を聞きながら院内を巡ることで、その病院で働くイメージをより膨らませることができます。
見学中は、実際にその病院で働く医師と接したり、話をしたりすることができるかもしれません。
また、医師と看護師の何気ない会話や患者さんとのやり取りを耳にすることもあるでしょう。
このような情報は、病院の雰囲気を知るための 非常に貴重な情報となりますので、周囲のさまざまなことに意識を向けながら、院内を見学していきましょう。
ハード面もしっかり確認できる
病院見学では、外来ブースや医局、病棟、医局などをまわります。
外科医の場合には、手術室も重点的に見せていただける場合が多くなっています。
あらかじめ求人票などを介して理解していた情報だとしても、自分の目で見て実際に確かめられるということは、転職先を検討するうえで大きな安心につながります。
このように 医師の転職活動では、実際に病院へ足を運ばなければ分からないこともたくさんあります。
病院見学という機会をうまく活用して、後悔のない検討をしていきましょう。
病院見学中に避けたい質問・歓迎される質問
病院見学をさせてもらう側となる医師ですが、実は注意しておきたいポイントがあります。
病院見学時に積極的に質問をしていくことは 前向きな姿勢のアピールにも繋がりますが、内容によっては避けておいたほうが無難なものもあります。
ここでは、病院見学では避けておいた方が良い質問と、病院からの印象をよりアップできるオススメの質問について解説していきます。
聞いてしまうと損する!? 病院見学で避けたいNGな質問例
年収などお金に関する質問
病院見学中に最も避けたいのは、年収などのお金に関する話題です。
まだ入職も決まっていない段階で、お金というセンシティブな話題に踏み込むことは、病院側の印象を悪くするリスクが高くなります。
とくにエージェントを介して転職活動を進めている場合には、医師が病院側へ直接アプローチしてしまうことで、スムーズに交渉が進まなくなってしまう可能性もあるでしょう。
そのため年収などの条件については、交渉のプロであるエージェントに任せた方が医師にとってのメリットは大きくなると考えられます。
残業や休日出勤に関する質問
残業や休日出勤についての話題も、病院見学の時に聞く質問としてはあまり相応しくないかもしれません。
福利厚生に関する直接的な内容は、和やかに進行する病院見学の場に合わないため、一般的には印象の良くない質問とされています。
ただし、育児中など勤務時間に制限がある女性医師が「実際に働いている医師の実態を知りたい」といった主旨から、普段の残業時間や休日について尋ねることについては問題ありません。
「自分もこの病院で活躍できるようになりたい」といった前向きな意図が読み取れるような質問であれば、病院側の心象を悪くすることはないでしょう。
好印象を与えるためには「働く人にしか分からない質問」が有効
医師からの質問で「さらにこの病院のことを詳しく知りたいと」いう姿勢が病院側に伝わると、良い印象が生まれます。
そのためには、実際に現場で働いている人だけが知っていること、答えられるようなことを積極的に質問するのがおすすめです。
たとえば、以下のような質問です。
- カンファレンスは、どのくらいの頻度で実施されている?
- 外来で診療することが多いのは、どのような症例?
- 当直帯の繁忙度(一晩の対応件数や主な症例など)はどの程度?
- オンコールでは、どのようなケースへの対応が多いか?
働く前提でより日常の業務に踏み込んだ質問を投げかけることで、業務への理解がより深まると同時に、病院側にも好印象を与えることができるでしょう。
医師の病院見学に関するよくある質問
最後に、病院見学について当社に多くお寄せいただくご質問やお悩みをまとめてご紹介します。
Q:遠方のため、病院を訪問することへのハードルが高いのですが…
A:医師の転職活動は、勤務を続けながら転職先を探すことが大半です。
そのため、病院側もその点を配慮してくれることが多くあります。
例えば、県をまたぐ移動を伴う場合には、まずはオンラインで面談を実施。
そのうえで具体的に検討を進めたい場合には、日を改めて病院を訪問して病院見学を実施するといったかたちも相談できる場合があります。
Q:まだ入職するか分からない知人の病院で、転職活動を知られたくない…
A:顔見知りの医師が在籍する病院が、検討先となる場合もあるかもしれません。
そのような場合には、その医師に転職活動中であることを知られないよう、面談を行う場所や病院見学をするルートについて配慮していただく等の相談もできますので、どうぞご安心ください。
Q:病院見学のときは、どのような服装で行けば良い?
A:「病院見学だから、ラフな服装で大丈夫だろう」と思う方もいるかもしれませんが、一般企業での面接時にマナーがあるのと同様に、病院見学にもマナーがあります。
採用担当者や医師、スタッフは、病院見学する医師のことを実はよく見ています。
そのため病院見学の際の服装は、スーツもしくはジャケット着用が無難でしょう。
採用の合否に直接的なものではないとしても、できる限りマイナスの印象を植え付けてしまうことは避けていきましょう。
Q:病院見学の前に準備しておくべきことはある?
A:訪問する病院の病床数や標榜科目などの概要は、事前に調べておきましょう。
いわゆる「調べればわかること」を面談や病院見学の場で質問しないためにも、事前にリサーチしておくことをお勧めします。
また、自宅から病院までの交通経路もあらかじめ確認しておくと安心です。
公共交通機関の遅延や悪天候等によって予定通りに到着できない事態も考慮して、訪問する当日は早めに現地に到着できるようにしておきましょう。
Q:忙しくてまとまった時間が取れない。病院見学は必ずしなくてはいけないの?
A:病院見学は、必須ではありません。
しかし「転職」は、医師のキャリアにとって大きな転機です。
この重大な決断に向けて、ご自身の目で病院の実情を確認できる貴重な機会を経ていただくことの意味は大きいのではないでしょうか。
可能なようであれば、ぜひ病院見学は実施いただきたいと考えます。
Q:病院見学をした後に、辞退しても大丈夫?
A:まったく問題ありません。
医師の転職において「病院見学後に改めて検討して、辞退する」ということは、決して珍しいことではありません。
また、多くの医師はいくつかの病院で並行して面談・病院見学を行ったうえで、転職先を決定しています。
私たちDr.転職なびのコンサルタントも、しっかりと比較ができること、幅広い選択肢から最適なものを選び取れるということから、単一ではなく複数の病院で検討することをお勧めしています。
病院側も、医師転職のこのような動きを理解しているので、しっかりとマナーを尽くしてご報告をすることで無理な引き留めに合うといったことはありません。
転職エージェントを介した転職活動の場合には、エージェントが医師に代わって病院への辞退連絡もしてくれるので安心です。
病院見学で、入職後のミスマッチを事前に回避するポイント
実際に病院を見学してみて初めてわかることは、数多くあります。
例えば、「外来の対応数は少なめ」と事前の情報だったが、実際には難しい症例が集中していた、といった事例もあります。
病院見学の際に抱いた違和感は、転職後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔するミスマッチを未然に防ぐためにとても大切です。
冷静な判断を行うためにも、病院見学では漫然と院内を見学するのではなく、求人票などの他者からの情報に拠らない確かな情報を収集するための貴重な機会として有効に活用しましょう。