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【医療機関アンケート】最新版!医師の働き方改革で注目が高まる「宿日直許可」取得状況を調査

【医療機関アンケート】最新版!医師の働き方改革で注目が高まる「宿日直許可」取得状況を調査

医局派遣や副業で、常勤先以外の医療機関でアルバイトをしている医師は多くいます。
なかでも常勤先での勤務後に働ける当直や週末の日当直は、幅広い年代の医師から人気のアルバイトです。

しかし2024年から始まる「医師の労働時間の上限規制」においては、常勤先での勤務だけではなくアルバイト先で働く時間についても労働時間としてカウントされることをご存知でしょうか。

今回、医師のアルバイト情報サイト・Dr.アルなびを運営する株式会社エムステージでは、2024年の医師の働き方改革で注目される「宿日直許可」の取得状況や医師の労働時間管理の状況ついて医療機関へのアンケート調査を実施し、286院より回答を得ました。

集計結果について、株式会社エムステージ MHR事業部 東京支社リクルーティングアドバイザーマネージャー兼リクルーティングアドバイザー強化担当の皆川が解説します。

2024年以降の医師アルバイトのカギとなる「宿日直許可」とは?

「医師の働き方改革」で、アルバイトを含む医師の労働時間管理がより厳格に

2024年から始まる医師の働き方改革では、「医師の労働時間の上限規制」の運用が始まります。
医師・医療機関の特性に応じた3つの水準と時間外労働の上限が設定されるもので、医師の労働時間が現在より厳しく管理されることになります。

▼「医師の労働時間の上限規制」について詳しい解説を見るなら

今回のアンケート調査においても、医師の働き方改革に向けて「院内で医師の労働時間を管理することへの意識が高まっている」と回答した医療機関は全体の68.5%に上っています。

Q:自院では、医師の働き方改革に向けて「医師の労働時間を管理する」という意識が高まっていると思いますか?

Q:自院では、医師の働き方改革に向けて「医師の労働時間を管理する」という意識が高まっていると思いますか?

2024年以降、医師は「宿日直許可」のない医療機関でのアルバイトが難しくなる

「宿日直許可」は、宿直(夜間当直)や日直に関して、労働基準監督署長が「十分な睡眠が可能で労働密度が低い」と判断する場合に与えられるものです。

▼宿日直許可のルールをさらに詳しい解説はこちら

本来であれば宿日直業務も労働時間としてカウントする必要がありますが、この「宿日直許可」を取得している医療機関での勤務である場合には、原則的に労働時間としてカウントされません

よって医師の働き方改革の適用が開始となる2024年4月以降に医師がアルバイトを検討する場合、この「宿日直許可」を取得している医療機関の募集にはアルバイトを希望する医師からの応募が集中することが考えられます。

一方で「宿日直許可」を取得していない医療機関では、大学病院による医師派遣の引き上げも含めて非常勤医師を採用すること自体が難しくなるかもしれません。

このような背景から、いま宿日直許可の取得を目指す病院が増えています。

今回のアンケートでも、宿日直許可の取得状況が自院の医師体制確保にとって影響がある(「大きな影響がある」と「影響がある」を合計)と回答した医療機関は全体の半数を超える65%となりました(「大きな影響がある」と「影響がある」を合計)。
多くの医療機関では危機感を持って2024年に向けた準備を進めているようです。

Q:「宿日直許可」の取得有無は、自院の医師体制確保にとって どの程度影響があると思いますか?

Q:「宿日直許可」の取得有無は、自院の医師体制確保にとって どの程度影響があると思いますか?

◆非常勤医師の採用・確保ができなくなる

・夜間当直は非常勤医師にお願いしており大半が大学病院の医師のため、宿日直許可を取らないと夜間当直医師が回らない。(大きな影響がある/100床未満・急性期病院)

・ほとんどの当直をスポットや外勤の先生にお願いしているため、医師の確保が難しくなる。(大きな影響がある/100床以上200床未満・ケアミックス病院)

・「日直回数が月1回」との回数制限があるため、特に週末の日直に複数回入っていただいている先生については今後1回しかご勤務をお願いできない。(影響がある/100床以上200床未満・急性期病院)

◆常勤医の負担が増える

・当直の大半を外部より調達しているので、許可がなければ大学病院等に勤務する医師からの応募者が減少し、常勤医の負担増となる。その為に医師の増員の検討がさらに必要となる。(大きな影響がある/100床未満・ケアミックス病院)

・近隣の大学病院からの派遣にて宿日直が成り立っている。「宿日直」が取得できないと自院の常勤医師にて体制構築が必要となり、とてつもない負担となる。(大きな影響がある/100床未満・ケアミックス病院)

・取得しないと当直に穴が開く。時間外の概念を受けない理事長・院長への負担が増大する。(大きな影響がある/100床未満・療養病院)

◆現在の医療提供体制を維持できなくなる

・宿直医師が決まらない日があれば、その診療科の救急受入が出来なくなる。地域医療にとって大きな問題であると考える。(大きな影響がある/300床以上400床未満・急性期病院)

・医師が少ない地域で2次救急を担当していると、宿日直許可申請が通らない可能性が高い。むしろそういった中小の2次救急指定病院が、2024年の働き方改革に大きく影響される中で、特に医療過疎地域はますます厳しい状況になることが予想される。(100床以上200床未満・ケアミックス病院)

・宿日直許可を得られなかった場合、現在非常勤医師で埋めている当直枠が引き上げによって、埋まらなくなる可能性が高い。そうなると埋まらない枠に常勤医師が入らざるを得ない状況となるが、勤務間インターバルを加味すると翌日の外来、手術、処置などが人手不足となる。(大きな影響がある/200床以上300床未満・急性期病院)

◆今よりも人件費がかかる

・非常勤医師を多数お願いしなければならない。人件費がかかる。(大きな影響がある/100床以上200床未満・療養病院)

・管理者の宿直回数が増える。やむを得ず週2回目になった際は、時間外報酬として支払うことになる。(100床以上200床未満・精神病院)

・宿日直許可が得られず「勤務時間として対応せよ」となった場合は、多額の人件費が発生してしまう。病院運営に大きな影響が出るため、時間外対応を停止せざるを得ない可能性がある。(大きな影響がある/100床未満・ケアミックス病院)

・外勤をしている勤務医がいるが、外勤先の施設が宿日直許可を受けていなければ、残業時間超過してしまう可能性がある。また残業時間超過により外勤を辞めてもらう必要が出た際は医師の給与が減ってしまうので、場合によってはその減額分を補填する必要が出てくる。(大きな影響がある/100床未満・ケアミックス病院)

医療機関における宿日直許可の取得状況

次に、2022年11月時点でどのくらいの医療機関が宿日直許可の取得を進めているのか確認していきます。

78.2%の医療機関が宿日直許可の取得を希望

Q:「宿日直許可」の申請予定はありますか?

Q:「宿日直許可」の申請予定はありますか?

宿日直許可の取得状況について質問したところ、78.2%の医療機関が宿日直許可を取得済み、または取得を希望していることが分かりました(「宿日直許可を申請する予定はない」、「まだ分からない」以外の回答を集計。)。

34.2%の医療機関が、宿日直許可の取得手続きを完了している

うち15.7%は「働き方改革に着手する以前から許可を受けている」、18.5%は「すでに許可を受けた・受ける見込だ」と回答しており、全体の3割を超える医療機関がすでに宿日直許可取得の手続きを終えているようです。

一方で、宿日直許可を取得することを希望しているものの準備段階である医療機関は44%となっています(「宿日直許可を受けるため申請・相談している」、「宿日直許可を受けることを検討しているが、まだ申請・相談はしていない」の回答を合計。)。

なお「宿日直許可を取得する予定はない」(14.3%)と回答した医療機関へ取得しない理由を尋ねたところ、無床診療所や急性期病院などの「基準に該当しない」(回答数:29)が最多で、次いで「時間外勤務が上限時間内に収まっていて、対応の必要性がない」(回答数:5)という結果となっています。

医療機関が「宿日直許可」に対して感じている疑問や意見

医療機関からのコメントでは、大学医局からの医師派遣が引き上げとなってしまうことへの不安や、現在の医療提供体制を維持できなくなってしまうのではという懸念の声が数多く寄せられました。

その他には、以下のような意見も上がっていました。

・宿日直許可が時間外労働時間の免罪符的な役割になっている。本来の医師の働き方改革から歪んだ対応になりがちではと感じる。(200床以上300床未満・ケアミックス病院)

・医療機関と医師の合意で十分と思います。宿日直の基準を決めること自体がナンセンス。(100床未満・無床診療所)

・全国的に医師不足なことは誰もが承知している社会問題だが、現実的に不可能に近い要件が示されており、労基、医療現場とも苦慮している。守れるルールと医師の労働のバランスをとり、再度当該事項について検討することが必要であろう。(200床以上300床未満・精神病院)

医療機関における医師の労働時間の管理状況

医療機関における医師の労働時間の管理状況

2024年4月からの医師の働き方改革では、医師の時間外労働時間の上限規制が始まります。

医師や医療機関の状況によって定められた上限時間を超えないよう管理していくためには、まずは医師の勤務実態を正確に把握することが重要とされています。

すでに医師の働き方改革の施行まで1年半を切っていますが、医療機関ではどのような方法で医師の労働時間を管理しているのでしょうか。

勤務医の【自院】での労働時間を正確に把握できている医療機関は、53.5%

Q:勤務医の自院における労働時間の把握状況を教えて下さい。

Q:勤務医の自院における労働時間の把握状況を教えて下さい。

医療機関に、自院における勤務医の労働時間をどの程度把握しているか尋ねたところ、「全ての医師について把握している」(53.5%)という回答が最多となりました。

次いで「大半の医師について把握している」(37.1%)、「少数の医師について把握している」(7%)の順に多くなり、少数ではありますが「全く把握できていない」(2.4%)という回答も見られました。

なお、勤怠管理の方法については「手動のタイムカードで打刻」(41.6%)、「ICTを活用した勤怠管理システム」(29.4%)、「医師の自己申告による記録」(17.2%)、「医局秘書による確認・記録」(6.7%)の順に多く、なかには「医師の勤怠管理はしていない」(4.8%)という医療機関も存在しています。

勤務医の【副業先】での労働時間を正確に把握できている医療機関は、25.9%

さらに、自院の勤務医の副業先での労働時間についてどの程度把握しているか尋ねたところ、「全ての医師について把握している」と回答した医療機関は自院での労働時間のときの半数以下の25.9%まで低下しました。
一方で「全く把握できていない」という回答が占める割合は大幅に上昇しています。

Q:勤務医の、副業などをはじめとする自院以外における労働時間の把握状況を教えて下さい。

Q:勤務医の、副業などをはじめとする自院以外における労働時間の把握状況を教えて下さい。

なお、副業先での労働時間を把握するための方法として最も多かったのは「バイトを申請制にしている」(33.6%)でした。

その他には、

・半年単位で報告してもらっている。(全ての医師について把握している/300床以上400床未満・ケアミックス病院)

・事務部で聞き取り調査を行っている。(大半の医師について把握している/300床以上400床未満・急性期病院)

・医師の働き方改革に伴い、ヒアリング週間を作り調査を実施している。(大半の医師について把握している/400床以上・急性期病院)

など、各医療機関で工夫して医師から情報を収集していることが伺われます。

その一方で、

・あくまでも自己申告のため性善説で通しているが実態がつかめていない医師もいる。(大半の医師について把握している/100床以上200床未満・急性期病院)

・他で働いたかどうかの管理は非常に難しい。自己責任と事業所責任をしっかり切り分けて整備してもらいたい。(大半の医師について把握している/100床未満・ケアミックス病院)

といった声も上がっており、医師の副業先での労働時間を把握することの難しさが浮き彫りになる結果となりました。

医師の労働時間管理について医療機関からは、以下のようなコメントも寄せられています。

・自施設外のアルバイトの申告について強制力を持てないため実態がつかめず、立入りの際に判明しても弁明が可能か不安。都市部・へき地の医師事情を問わずにこのまま進められると弊害が出てくると考えられる。対象施設を厚労省・労基が選定して段階的に進めてもいいのではないか。(100床以上200床未満・急性期病院)

・医療機関、診療科、地域でかなりばらつきがあると考えられるため一律的なルールづくりは困難。労働時間管理とともに医師の心身の健康を管理するような方策も必要。(200床以上300床未満・精神病院)

・長時間の時間外労働を規制することは、どの職種でも必要なことだと思います。医師の場合は、なぜ長時間労働となってしまうのかという原因にも目を向けて、表面的改善ではなく、抜本的な改革が必要だと思います。(100床以上200床未満・回復期リハビリテーション病院)

以上、医療機関における宿日直許可および医師の労働時間管理に関する進捗状況のアンケート結果をご紹介しました。

医師の働き方改革が始まる2024年4月は、常勤先における勤務だけでなく、医師の副業・アルバイトにおいても大きな転換期となります。

労働時間としてカウントされない宿日直許可を取得した医療機関での当直アルバイトは、今後さらに多くの医師から注目を集め、競争率がどんどん高まっていくことが予測されます。

医師の働き方改革以降のアルバイトについてのご不明点や心配ごとは、Dr.アルなびのコンサルタントにお任せください。
各医療機関の宿日直許可の取得状況なども踏まえたうえで、専任のコンサルタントがご希望に合う求人情報をご案内いたします。

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◆調査概要

アンケート実施期間:2022/11/1(火)~2022/11/18(金)

有効回答:286院

対  象:全国の病院・診療所・老健など

回答属性:急性期病院61院、ケアミックス病院77院、療養病院37院、回復期リハビリテーション病院21院、精神病院31院、有床診療所13院、有床診療所33院、老健3院、その他10院

回答方法:WEBを利用したアンケート調査

皆川 真琴(みながわ まこと)

専門家

皆川 真琴(みながわ まこと)

2008年入社。株式会社エムステージ MHR事業部 東京支社リクルーティングアドバイザーマネージャー兼リクルーティングアドバイザー強化担当。

仕事をする上での一番の喜びは、ご担当者様の課題が解決すること。常に医療機関のご担当者様の立場で物事を考え、寄り添ったご提案ができるよう心掛けている。

保有資格:医療経営士2級、介護福祉経営士2級

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