• 検討中リスト
  • 閲覧履歴

【労働時間管理/宿日直許可/特例水準】2023年8月時点の「医師の働き方改革」の進捗を調査

【特例水準・宿日直許可・医師の労働時間管理】医療機関に聞く「医師の働き方改革」の進捗は?

2023年7月下旬から8月上旬にかけて、「Dr.転職なび」では全国の医療機関にアンケートを実施。
2024年4月から始まる「医師の働き方改革」に向けた取り組みの状況について、172の医療機関から回答を得ました。

本記事では、上記の調査結果から「医師の働き方改革」で大きなポイントとなる医師の労働時間管理の状況や、宿日直許可・特例水準の申請状況をまとめてご紹介します。

【2023年8月調査】「勤務医の労働時間管理」の進捗と、現状の課題は?

2024年4月から始まる「医師の働き方改革」は、医師の健康確保と長時間労働の是正を目的に実施されるものです。
そのため、医療機関が「勤務医の勤務実態を正確に把握すること」が大きなポイントとなります。

69.8%の医療機関では、勤務医の総労働時間を正確に把握できていない

しかし今回の調査では、勤務医の労働時間を正確に把握している医療機関はまだ限定的であることが分かりました。

Q:勤務医の総労働時間(自院および外勤先における労働時間)を、正確に把握できていますか?

Q:勤務医の総労働時間(自院および外勤先における労働時間)を、正確に把握できていますか?

上記のグラフが示しているように、勤務医の自院および外勤先における労働時間(総労働時間)を把握していると回答した医療機関(※)は、全体のわずか30.2%でした。

(※)外勤している医師がいる医療機関のうち、自院および外勤先における労働時間を「全医師について把握している」と回答した医療機関の割合を算出。

つまり約7割を占める医療機関では、勤務医の総労働時間を正確に把握できていないということです。

医療機関で、勤務医の総労働時間管理がなかなか進まない理由は?

多くの医療機関で勤務医の総労働時間の把握が進まない要因は、どのようなことなのでしょうか?
続いて、医師の労働時間管理における問題や課題について尋ねました。

Q:勤務医の労働時間を管理する上で 特に問題・課題と感じていることを、3つまで教えてください。

Q:勤務医の労働時間を管理する上で 特に問題・課題と感じていることを、3つまで教えてください。

勤務医の労働時間管理が進まない理由は「医師の意識の低さ」-約43%

最も多くの医療機関が 勤務医の総労働時間管理が進まない理由として選んだのは、「労働時間管理について、医師の意識が低い」(回答数:74)です。

▼医療機関からのコメント

勤怠管理の徹底をお願いしたい。(300床~399床/急性期病院)

・契約通りの出退勤時刻を守らない医師がいる。契約通りの出退勤時刻を守って欲しい。(100床~199床/回復期リハビリテーション病院)

「医師の働き方改革」に向けて、勤務医の労働時間管理が急務とされている今、正確な勤怠管理への協力を強く求める医療機関がますます増えてくるでしょう。

勤務医の「外勤先における労働時間の把握」が課題-約36%

次いで、全体の3分の1を超える医療機関が勤務医の総労働時間管理が進まない要因として挙げたのは、「外勤先での勤務状況を把握できていない」(回答数:62)ことです。

▼医療機関からのコメント

・外勤状況の把握に向けて、医師にも協力してもらいたい。(200床~299床/精神病院)

医師の総労働時間を把握することは、かなり難しいのではないかと思う。(200床~299床/精神病院)

自院・外勤先それぞれにおける勤務医の労働時間の把握状況を尋ねた質問では、自院における労働時間を「全医師について把握している」医療機関は57.6%でした。
一方の外勤先における労働時間を「全医師について把握している」医療機関の割合は、26.9%まで低下しています。

また、勤務医の自院における労働時間を「全く把握していない」と回答した医療機関はわずか0.5%であるのに対し、外勤先における労働時間を「全く把握していない」医療機関は13.8%と高い割合を占めました。

Q:「自院」における労働時間について、どのくらい正確に把握していますか?

Q:「自院」における労働時間について、どのくらい正確に把握していますか?

Q:「外勤先」における労働時間について、どのくらい正確に把握していますか?

Q:「外勤先」における労働時間について、どのくらい正確に把握していますか?

これらの結果からは、各医療機関では特に勤務医の「外勤先における労働時間」を把握することに苦慮しているという状況が推察できます。

「時間外勤務と自己研鑽の区分け」が課題-約25%

また、全体の約4分の1を占める医療機関が勤務医の総労働時間管理が進まない要因として挙げたのは、「時間外労働と自己研鑽の区別がつかない」(回答数:55)ことです。

▼医療機関からのコメント

残業の必要性について、医師と法人の間で認識が合わない。(100床未満/無床診療所)

・勤務医全員が共通理解で取り組めるルールが必要と思われるが、それぞれ外勤や自己研鑽(資格や研鑽)など事情が異なるため、まとめづらい。(200床~299床/精神病院)

Q:時間外労働時間と自己研鑽の区分けはできていますか?

Q:時間外労働時間と自己研鑽の区分けはできていますか?

時間外労働時間と自己研鑽の区分けが「できていない」医療機関が約3分の1を占め、区分けが「できている」医療機関は全体の45.3%にとどまっています。

なお医師の時間外勤務と自己研鑽の区分けに関する考え方については、厚生労働省からガイドラインが示されています。
以下の記事に要点をまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください。

【2023年8月調査】「宿日直許可」の届出・申請状況は?

【2023年8月調査】宿日直許可や特例水準の届出・申請状況は?

続いて、「医師の働き方改革」に向けて注目度が高まる「宿日直許可」の状況について、各医療機関に尋ねました。

既に「宿日直許可」を取得した医療機関は、全体の49.4%

宿日直許可の申請・取得状況を尋ねたところ、最も多くなったのは「既に取得した」(49.4%)でした。
2023年8月の調査時点で全体の約半数の医療機関が、労働基準監督署からの宿日直許可を受けていることが分かります。

Q:労働基準監督署への宿日直の許可の申請・取得状況を教えてください。

Q:労働基準監督署への宿日直の許可の申請・取得状況を教えてください。

全体的に見てみると、宿日直許可の取得を希望し、具体的な手続きや検討を進めている医療機関は77.3%(「既に取得した」「申請し、結果を待っている」「まだ申請していないが、準備を進めている」の割合を合算)を占めています。

一方で、今後も宿日直許可の取得を予定していない医療機関は18.0%となっています(「申請する予定はない」「申請したが、取得できなかった」の割合を合算)。

「宿日直許可の有無」は、アルバイト医師の採用で大きなポイントになる

この「宿日直許可」を取得しているか否かは、2024年4月以降の非常勤医師の採用において大きな影響を及ぼすと考えられています。

原則として、宿日直許可を得たアルバイトでの労働時間は「医師の労働時間」として算入されません。
つまり宿日直許可が得られた案件であれば、2024年4月からはじまる医師の時間外労働規制を気にすることなく、アルバイトが可能になるのです。

よって今後は、多くの医師が宿日直許可のある案件を希望してアルバイトを探す傾向がますます強くなるでしょう。

【2023年8月調査】「特例水準指定」への対応状況は?

【2023年8月調査】「特例水準指定」への対応状況は?

次に、2024年4月から適用開始となる医師の時間外労働時間の上限規制にも大きく関わってくる、各医療機関の「特例水準」への対応状況を尋ねました。

73.2%の医療機関は「A水準」となる予定

上記のように最も多いのは、2024年4月以降すべての勤務医を対象とした施設水準である「A水準」を予定している医療機関(回答数:126)です。

Q:2024年4月以降、貴院はどの水準の指定となる予定ですか?(複数回答可)

Q:2024年4月以降、貴院はどの水準の指定となる予定ですか?(複数回答可)

ただし、A水準で求められる「時間外・休日労働時間の上限が 年960時間/月100時間未満」という要件をまだ満たせていない医療機関も少なくないようです。

▼医療機関からのコメント

・診療科によって、時間外勤務に差がある。現状では、研修医の時間外勤務が多い。(A水準となる予定/200床~299床/ケアミックス病院)

・長時間労働している医師が複数在籍しているため、時間外労働が年960時間以内に収まるか懸念している。(A水準となる予定/100床~199床/ケアミックス病院)

・A水準を目指しており、現状960時間で抑えることが困難な医師に協力を求めている
まだ十分な理解を得られていない医師もいるため、今後より一層の説明が必要と考えている。(A水準となる予定/300床~399床/ケアミックス病院)

次いで多くなったのは「まだ分からない」と回答した医療機関で、全体の約4分の1を占める医療機関は自院の方向性を決めかねているようです。

2024年4月から適用される医師の時間外労働規制では、医療機関の施設水準に応じて「その施設で働く勤務医が、何時間まで働けるか」が定められています

自分の常勤先である医療機関や転職を検討している医療機関は、どの水準となるのか。
勤務医として働く医師は、引き続き確認していく必要がありそうです。

医師の働き方改革に向けた取り組みは、2024年4月までに間に合う?

最後に、「医師の働き方改革」が始まる2024年4月に向けた見通しを尋ねました。

Q:医師の働き方改革に向けた取り組みの進捗について、「2024年4月までに間に合う」と感じますか?

Q:医師の働き方改革に向けた取り組みの進捗について、「2024年4月までに間に合う」と感じますか?

最も多くなったのは、「十分間に合うと思う」(40.7%)という回答です。

「なんとか間に合うと思う」(36%)と合わせると、7割を超える医療機関が「2024年4月までに間に合う」と前向きな見通しを持っていることが分かります。

一方で「遅れてしまうと思う」として現在の進捗に懸念を持っている医療機関も、全体の1割ほどを占めています(「少し遅れてしまうと思う」、「大幅に遅れてしまうと思う」の割合を合計)。

今回の調査では、上述でご紹介した様々な課題を抱えながらも、2024年4月の「医師の働き方改革」に向けて様々な対応を押し進める医療機関の姿が浮き彫りになりました。

「医師の働き方改革」の開始まで、残りわずか。

医師の健康確保と長時間労働の是正を実現するために、今後は勤務医一人ひとりにも、さらに前向きな協力や理解が求められるようになるでしょう。

◆調査概要

「医師の働き方改革に向けた取り組み状況に関するアンケート」

調査日:2023年7月28日~8月4日

対象:全国の病院・診療所・老健などの医療機関

調査方法:webアンケート

有効回答数:172

Dr.転職なびに相談する

Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

医師の転職、キャリアアップ応援コンテンツを提供する「Dr.なび」編集部です。医師転職サービスを提供する株式会社エムステージが運営しています。

転職・アルバイトの情報をお探しの医師の方、キャリアアップをお考えの方、ぜひお問い合わせボタンからご相談ください。

関連記事

ページトップへ戻る