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医療DX推進体制整備加算、医療情報取得加算等の概要や狙いとは【2024年度診療報酬改定④】

2024年度診療報酬改定④「医療DX」医療DX推進体制整備加算、医療情報取得加算等の概要や狙いを解説

2024年は、6年に1度のタイミングで医療・介護・障害福祉における報酬が同時に改定されるトリプル改定の年です。
中でも、少子高齢化やインフレなどを背景とした2024年の診療報酬改定は、多方面から非常に高い注目を集めています。

2024年3月、エムステージでは医師へのアンケートを実施。
現役医師439名が「2024年診療報酬改定の中で、とくに関心がある」と回答した上位4項目のポイントをご紹介しています。

第4回目となる今回は、医療DXに関する診療報酬改定の要点を、医療経営のプロである株式会社エムプラットの濵岡さんにわかりやすく解説いただきました。

濵岡 勇介(はまおか ゆうすけ)
株式会社エムプラット
代表取締役

大学卒業後、大手都市銀行での法人貸付審査や中小企業再生支援に従事。
医師人材紹介会社に転職し、事務職紹介や医師採用コンサルティングを経験。病床転換コンサルティング事業の新規サービス立ち上げを経験。
その後医療経営の実情を知るため、病院の事務長に転職。事務長勤務、在宅医療事務管理職、クリニック立ち上げを経たのち、2023年エムステージグループに参画。
株式会社エムプラットの代表取締役として、「変化する時代に、進化できる医療経営」をビジョンに医療機関の経営支援事業を展開している。

2024年度診療報酬改定における医療DX推進の背景や狙いとは

Q:そもそも、政府が目指す「医療DX」とはどのようなものなのでしょうか?

医療DXの定義

今回の診療報酬改定では、オンライン資格確認等システムをベースにした患者情報の取得等を促進する評価が多く盛り込まれています。

まずは、厚生労働省による「医療DX」の定義を確認しておきましょう。

中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)の資料では、以下のような定義が示されています。

保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータに関し、全体最適された基盤を構築し、活用することを通じて、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えていくこと。

厚生労働省「医療DXについて(その1)

つまり医療DXとは、医療や保健・介護で発生する情報をデジタル化し、クラウド上に集めていくことで医療や介護の質向上や医療機関の業務効率化を実現し、患者と医療機関の双方にメリットを生むことを指します。

これまでバラバラだった患者情報を繋げて、より良い医療・介護を提供

これまで医療や介護の現場で発生していたデータは、医療機関や介護事業者がそれぞれ収集していました。

つまり、「患者ごとにデータを紐づけする」ことができておらず、A病院の受診時はA病院のカルテ番号、Bクリニックの受診時にはBクリニックのカルテ番号で管理されているといった状態になっていたのです。

しかし今後は、複数の医療機関や介護事業者がそれぞれ収集していた患者データを、マイナンバーによって個人に紐づけるようになります。

たとえば、ある患者はA病院を退院後、Bクリニックで経過観察を行う中でどのような処方を受けている等、患者単位でこれまでの治療経過や介護経過を追跡できるようになるということです。

このように、どのような医療機関がどのような医療を提供し、どの段階で介護が介入することで病気の予防につながるのか、健康寿命を伸ばし得るのかといった客観的なデータを取得・分析・活用していくための環境を整備することが医療DXの大きな狙いです。

「医療DX」推進の全体像

「医療DX」推進の全体像

Q:「医療DX」は、今後どのような流れで推進されるのでしょうか?

医療DX推進に関する工程表(全体像)

2022年10月、内閣に「医療DX推進本部」が設置され、2023年6月には以下のような「医療DXの推進に関する工程表」が示されました。

出典:厚生労働省「医療DXの推進に関する工程表

現時点では、2023年度から2026年度以降にかけた具体的な取組事項と工程が示されていますが、とくに大きなポイントとなるのは以下の3つです。

ポイント①マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速

2023年4月の保険医療機関等のオンライン資格確認の義務化から1年が経過し、以下のように多くの保険医療機関等が体制を整えてきました。

2024年3月時点のオンライン資格確認の導入状況は以下の通りで、ほとんどの病院では導入が完了しています。

◆オンライン資格確認の都道府県別導入状況

病院98.2%
医科診療所89.7%
薬局95.6%

※「運用機関数」を「医療機関等数(医療機関等マスタ登録分(廃止を除く。))」で除したもの

厚生労働省「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」をもとに編集部にて作成

一方でいま課題となっているのは、積極的に患者へのマイナ保険証の利用促進を実施する医療機関が少ないことです。

実際、2024年3月時点のマイナ保険証利用率(※1)はわずか5.47%にとどまっています。
(※1)マイナ保険証利用件数/オンライン資格確認利用件数

出典:厚生労働省「マイナ保険証の利用促進等について

一方で、2024年12月にはカードや紙の保険証は廃止され、マイナ保険証への全面切り替えが予定されています。

そこで早期のマイナ保険証利用を強力に促すため、政府は2024年5月~7月を「マイナ保険証利用促進集中取組月間」として、マイナ保険証利用人数の増加量に応じた最大10万円(病院の場合20万円)の一時金支給を決定しています。

参照:厚生労働省 保険局「『マイナ保険証利用促進集中取組月間』と利用促進のためのツール・一時金について

加えて今回の診療報酬改定においても、マイナ保険証の利用促進を評価する「医療DX推進体制整備加算」等の新しい評価を設けました

ポイント②電子カルテ情報共有サービスの構築と整備

2つめのポイントは、電子カルテ情報共有サービスを構築し整備することです。

電子カルテ情報共有サービスとは以下の機能を持つサービスであり、2025年度からの運用開始を目指して現在開発が進められています。

  • 医療機関が診療情報提供書等の文書情報を電子上で送受信する
  • 全国の医療機関や薬局が患者の傷病名や処方等の電子カルテ情報(6情報)を閲覧できる
  • 患者本人等が、自身の電子カルテ情報(6情報)を閲覧できる

電子カルテ共有サービスの運用が始まると、患者紹介を受けた際に過去の治療経過や検査データ、薬剤禁忌等も自院の電子カルテで閲覧できるようになります。
先生方が日々行われている診療における活用メリットも、大きいものとなるのではないでしょうか。

「Dr.転職なび」が実施したアンケートでも、62.2%の医師が「医療DXで得られる情報を活用して診療を行いたい」と回答しています。

Q: 今後、マイナ保険証等から得られる情報を活用して診療を行いたいと思いますか?

Q: 今後、マイナ保険証等から得られる情報を活用して診療を行いたいと思いますか?

積極的に活用したい

処方内容と注射の内容がわかるので便利。(60代前半/整形外科/開業医)

・どこの診療機関でも、共通したフォーマットによる情報収集が可能であるから。(50代前半/麻酔科/勤務医/民間病院)

どちらかというと活用したい

情報が多ければ多いほど、診療には役立つと思う。(40代後半/総合診療科/その他)

なお、生活習慣病管理料(Ⅰ)を算定する場合には、電子カルテ共有サービスを活用すると療養計画書に関する手続きを簡略化することも可能となります。

ポイント③電子カルテ情報の標準化

3つめのポイントは、電子カルテの標準化です。

現在、日本の医療機関では、さまざまなメーカー・規格の電子カルテを導入しており、格納された情報にもバラつきがあります。

また、電子カルテを導入していない医療機関もまだ多く、2020年時点の調査結果によると200床未満の病院および一般診療所の電子カルテ普及率は50%を下回っています。
とくに長年にわたって地域で診療を続けている診療所等では、紙カルテでの診療を行っているケースも多いと推察されます。

しかし政府が推し進める医療DXでは、「電子カルテの導入」が前提となっています。

そのため電子カルテ情報共有サービスによる連携が全医療機関に浸透した場合、電子カルテ未導入の医療機関では他院への患者紹介がスムーズにいかなくなってしまったり、他院から紹介される患者数が減ってしまったりすることも懸念されるでしょう。

そこで厚生労働省では、2030年までに全医療機関に電子カルテを導入することを目標に掲げており、現在クラウドベースの「標準型電子カルテ」を開発しています。

まずは無床診療所向けで開発が進められており、2025年度から提供が開始される予定です。

2024年度診療報酬改定における「医療DX」に関する評価の要点

2024年度診療報酬改定における「医療DX」に関する評価の要点

Q:上述のような医療DXを推進するため、今回の診療報酬改定では、どのような評価が新設・見直し等されたのでしょうか?

今改定では、医療DXに関する診療報酬として、以下の評価が設けられました。

「医療情報取得加算」を新設

まずは、オンライン資格確認システムの体制が整備されてきたことを踏まえ、現行の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が「医療情報取得加算」に名称変更されています。

従来の体制整備から、その先にある診療情報や薬剤情報の取得や活用に注力するよう、評価の在り方が見直されました。

なお、情報の取得方法によって診療報酬の点数が以下のように分かれます。

  • マイナ保険証を利用 または他の医療機関から診療情報の提供を受けた場合…初診時1点、再診時1点
  • マイナ保険証を利用しない場合…初診時3点、再診時2点
医療情報・システム基盤整備体制充実加算
(現行)
医療情報取得加算
(改定後)
◆初診時
医療情報・システム基盤整備体制充実加算1  4点
医療情報・システム基盤整備体制充実加算2  2点
◆初診時
医療情報取得加算1  3点
(マイナ保険証を利用しない場合)
医療情報取得加算2  1点
(マイナ保険証を利用または他の医療機関から診療情報の提供を受けた場合)

◆再診時(3月に1回に限り算定)
医療情報取得加算3  2点
(マイナ保険証を利用しない場合)

医療情報取得加算4  1点
(マイナ保険証を利用または他の医療機関から診療情報の提供を受けた場合)

厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】」、厚生労働省「マイ保険証利用促進のための取組・支援策について」をもとに編集部にて作成

「医療DX推進体制整備加算」を新設

さらに、オンライン資格確認により取得した診療情報などを診療に活用できる体制の整備を評価する「医療DX推進体制整備加算」が新たに設けられました。

◆医療DX推進体制整備加算 8点

[施設基準(医科医療機関)]
(1)オンライン請求を行っていること。
(2)オンライン資格確認を行う体制を有していること。
(3)(医科)医師が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制を有していること。
(歯科)歯科医師が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制を有していること。
(調剤)保険薬剤師が、電子資格確認の仕組みを利用して取得した診療情報を閲覧又は活用し、調剤できる体制を有していること。
(4)(医科・歯科)電子処方箋を発行する体制を有していること。(経過措置 令和7年3月31日まで)
(調剤)電磁的記録をもって作成された処方箋を受け付ける体制を有していること。(経過措置 令和7年3月31日まで)
(5)電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること。(経過措置 令和7年9月30日まで)
(6)マイナンバーカードの健康保険証利用の使用について、実績を一定程度有していること。(令和6年10月1日から適用)
(7)医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所及びウェブサイト等に掲示していること。
(8)(調剤)電磁的記録による調剤録及び薬剤服用歴の管理の体制を有していること。

厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】

なお、施設基準の中にある「マイナ保険証の利用の実績要件」については、2024年10月から適用になりますので、それまでに実績水準が示されることになります。
引き続き、動向を注視していく必要がありそうです。

「在宅医療DX情報活用加算」の新設

また、医療DX推進体制整備加算と同様の趣旨で、在宅医療においても加算が新設されました。

在宅医療の診療計画を作成する際、在宅同意取得型のオンライン資格確認システムや電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋により得られる情報を活用することを評価する「在宅医療DX情報活用加算」です。

対象患者は、在宅患者訪問診療料(I)の1と2、在宅患者訪問診療料(II)、在宅がん医療総合診療料を算定する患者となります。

◆在宅医療DX情報活用加算 10点

[施設基準(医科医療機関)]
(1)オンライン請求を行っていること。
(2)オンライン資格確認を行う体制を有していること。
(3)(医科)居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムの活用により、医師等が患者の診療情報等を取得及び活用できる体制を有していること。
(4)(医科)電子処方箋を発行する体制を有していること。(経過措置 令和7年3月31日まで)
(5)電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること。(経過措置 令和7年9月30日まで)
(6)(2)の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること。
(7)(6)の掲示事項について、原則としてウェブサイトに掲示していること。

厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】

なお、訪問診療クリニック等が訪問先で患者にマイナ保険証を利用してもらう「居宅同意取得型のオンライン資格確認」の普及率はまだ低い状況であるため、厚生労働省ではまずはこれを普及させることが必要であると判断しています。
そのため「在宅医療DX情報活用加算」の施設基準には、マイナ保険証利用率に関する要件は含まれていません。

今回は、2024年度診療報酬改定のポイント解説の第4弾として、「医療DX」に関する診療報酬改定の要点を、株式会社エムプラットの濵岡さんに伺いました。
賃上げ」「生活習慣病管理」「入院医療」に関する解説記事も公開していますので、ぜひあわせてご覧ください。

また株式会社エムプラットでは、診療報酬改定の影響シミュレーションをはじめ、医療経営に関する課題に関するご相談・サポートを承っています。

クリニック等の医療機関経営を行っておられる中で何かお困りのことがある先生は、ぜひお気軽にお問合せください。

(クリックすると、株式会社エムプラットのページに移動します)

◆調査概要「2024年度診療報酬改定に関するアンケート」

調査日:2024年3月5日~12日

対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師

調査方法:webアンケート

有効回答数:439

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濵岡 勇介(はまおか ゆうすけ)

専門家

濵岡 勇介(はまおか ゆうすけ)

株式会社エムプラット
代表取締役 

大学卒業後、大手都市銀行での法人貸付審査や中小企業再生支援に従事。
医師人材紹介会社に転職し、事務職紹介や医師採用コンサルティングを経験。病床転換コンサルティング事業の新規サービス立ち上げを経験。
その後医療経営の実情を知るため、病院の事務長に転職。事務長勤務、在宅医療事務管理職、クリニック立ち上げを経たのち、2023年エムステージグループに参画。
株式会社エムプラットの代表取締役として、「変化する時代に、進化できる医療経営」をビジョンに医療機関の経営支援事業を展開している。

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