小児科医とは、15歳までの子どもを対象に幅広い疾患への対応を行う医師のことです。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、小児科医の平均年収は1220.5万円ですが、全体の3割を超える医師は自身の年収に不満があるという結果が出ています。
本記事では、小児科医の平均年収や働き方の選択肢、年収をアップする方法を解説します。
小児科医の年収事情は?
小児科医の平均年収は、1220.5万円
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、小児科医の平均年収は1220.5万円です。
これは本調査で対象となった全診療科における医師の平均年収額の1261.1万円を、約40万円下回る水準となっています。
32.2%の小児科医が、自身の年収に不満を感じている
このような年収事情について、小児科医はどのように感じているのでしょうか?
同調査において各診療科別に「給与・賃金に対する満足度」を尋ねた質問では、「満足している」が8.3%、「まあ満足」が42.9%となっています。
一方で「少し不満」が20.5%、「不満」が11.7%を占めており、全体の3割を超える医師は自身の年収に不満を抱えている状況がうかがわれます。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」をもとに編集部にて作成
小児科の転職求人で提示される平均年収(下限値)は、約1,262万円
医師が転職をする大きな理由として「年収アップ」が挙げられますが、小児科が転職をする場合、どのくらいの年収が提示されるのでしょうか。
今回、医師向けの転職求人サイト「Dr.転職なび」に掲載されている求人票をもとに、診療科別に医師に提示される年収の平均値を算出しました(※)。
その結果、小児科の転職求人票で提示されている平均年収の下限は12,629,829円となりました。
つまり小児科医が転職を検討する際には、医療機関からおよそ1260万円以上の年収を提示される可能性が高いということになります。
小児科の平均提示年収(下限値) | 12,629,829円 |
※2023年11月時点で「Dr.転職なび」に掲載中の常勤医師求人票をもとに、編集部作成。
※診療科別に分別した求人票内の基本給与額のうち下限値の合計をデータ数で割り、目安となる値(「年収平均値(下限)」とよぶ。)を算出。
※求人数が5件以下の血管外科・神経内科・膠原病内科は除外。
※小数点以下は切り捨て。
なお小児科は本集計で対象とした42の診療科の中で21番目に高い額となり、ちょうど真ん中程度の水準となっています。
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小児科医の働き方
小児科医には、多様な働き方の選択肢がある
厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、医療施設に従事している医師は 323,700 人です。
このうち小児科医は17,997人で全診療科の5.6%を占めており、全診療科の中で内科・整形外科に次いで3番目に医師が多い診療科となっています。
また小児科の医師は、女性が占める割合が高い点も大きな特徴です。
病院および診療所で働く医師のうち、女性医師が占める割合は以下の通りです。
◆女性医師が占める割合
病院勤務 | 37.2%(全診療科の平均:17.4%) |
診療所勤務 | 34.0%(全診療科の平均:19.5%) |
※厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」をもとに編集部にて作成
上記のように小児科は女性医師が占める割合が全診療科の平均を大きく上回り、女性医師が多く活躍する領域であることが分かります。
一般的に女性医師が占める割合が高い診療科は、妊娠や出産・育児に関わる休暇などにも理解があるケースが多く、働き方も多様である傾向がみられます。
具体的には、常勤医として働く・非常勤医師として働く・開業するという選択肢があります。
①常勤医として働く
常勤医として働く場合、病院またはクリニックが勤務先となります。
小児科を標榜する病院やクリニックは数多くありますが、慢性的な医師不足に悩む現場が大半です。
小児科医が担う業務量や内容は、勤務先となる医療機関が入院設備を有しているかにより大きく異なってきます。
病院で常勤医として働く場合
入院病床が多い病院では、医師一人が受け持つ入院患者数も多くなります。
地域のクリニックなどから紹介されてくる症例などで診療の難易度も高く、救急搬送されてきた子どもがそのまま入院するケースもある等、臨機応変な対応が必要です。
当直や夜間・休日対応の手当なども含めると年収は高水準となりますが、比較的ハードな労働環境である場合が多いでしょう。
クリニックで常勤医として働く場合
一方でクリニック等の入院設備がない医療機関では、外来診療がメイン業務となります。
外来の状況によって診療時間中は忙しくなる可能性はありますが、入院病床のある病院で働く場合と比較すると医師の業務量は少なくなります。
そのため、家庭と仕事の両立等プライベートも大切にする働き方が叶いやすい働き方といえるでしょう。
ただし実働時間や業務量が少ない分、得られる収入が低くなる可能性があることも念頭に置いておきましょう。
②非常勤医師として働く
出産や育児との両立を希望する場合、入院患者の対応や救急・夜間対応等が求められない非常勤という働き方を選択する医師も多くいます。
小児科の非常勤医師募集では、主に外来診療を任される案件がメインとなっています。
一般診療以外にも乳幼児健診や予防接種を実施したり、風邪やインフルエンザが流行する時期には多くの外来患者の対応を行ったりします。
勤務先や時期などによって業務内容や業務量は異なるものの、基本的には残業が発生するケースは多くありません。
そのため予定の見通しが立ちやすく、小さなお子さまを持つ女性医師も多く活躍されています。
③開業する
自身でクリニックを開設し、開業医として働いていく選択肢もあります。
医師かつ経営者として働くことになるため、業務内容も増えるのが特徴です。
医師としての業務のほかに集患や売上管理・看護師などスタッフの採用やマネジメント・行政への手続き・金融機関や業者等との交渉等、多岐にわたる業務に携わることになります。
このように様々なスキルや経営能力が求められる分、年収は医療機関で勤務医として働く場合よりも高い水準となる可能性が高いようです。
小児科医が年収を上げるための方法
最後に、小児科医が年収を改善したいと考える場合にお勧めの方法を2つご紹介します。
民間の医療機関に転職する
一般的に大学病院の勤務医の平均年収は、800~1,000万円と言われています。
文部科学省の「大学病院における医師の働き方に関する調査研究報告書」では、以下のような記述があります。
現在 大学病院の医師の給与は、一般医療機関や国立病院機構と比べて、年収で500万円から700万円ほどの差が生じているため、大学病院の医師のほとんどは兼業や副業により給与差額分を補っているのが現状である。
引用・出典:文部科学省「大学病院における医師の働き方に関する調査研究報告書」
専門性の高い症例や最新の医療技術を経験できる等、大学病院には医師としてのスキルを磨くための環境が整う一方で、勤務医の年収面では民間病院と大きく差があります。
そのため、現在大学病院や公的な病院の勤務医として働いている場合には、民間の医療機関へ転職することで年収を改善できる可能性は高いでしょう。
アルバイトをして、副収入を得る
また小児医療を担う医師が慢性的に不足している現在の日本において、非常勤として活躍してくれる小児科医を求める医療機関も多く存在しています。
例えば、以下のような勤務条件で小児科外来を担当した場合は、年間で192万円の給与収入が得られます。
◆求人例
・仕事内容:外来診療および乳幼児健診・予防接種(1コマ:10~15名程度)
・勤務時間:9時~13時(休憩なし)
・給与:1回40,000円
また小児科の当直・日当直業務を担ってくれる非常勤医師も、高い需要があります。
新生児の対応など業務内容の専門性が高いことから、一般的な内科当直等と比べて高額の給与が設定されているケースも多くあります。
以上、小児科医の平均年収や働き方の選択肢、年収を上げる方法をご紹介しました。
小児科医には、様々な活躍の場があります。
しかしその勤務先や担当する業務によって、受け取る報酬は大きく変わってきます。
今のご勤務先とは別の選択肢を知っておきたいとお考えの先生は、Dr.転職なびのコンサルタントにお話をお聞かせください。
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