「勤務医の給与は、なかなか上がらない」というイメージをお持ちの先生は、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
実際「Dr.転職なび」が勤務医411名に実施したアンケートでも、6割以上が今の勤務先における昇給が期待できないと回答しており、診療報酬改定による賃上げが実施された医師は1割以下でした。
その一方で、年収が2,000万円以上の勤務医も全体の2割以上いることがわかっています。
本記事では、勤務医の処遇改善が難しい現状とその理由を明らかにしながら、勤務医が年収2,000万円を超えるための方法をご紹介します。
勤務医の「将来の年収」に関する見通し
常勤先での昇給が期待できない医師が全体の6割を超え、今年6月の診療報酬改定による医師の賃上げ実施率も非常に低い状況です。
6割以上の医師は「現在の勤務先での昇給は期待できない」
今の勤務先で働き続けた場合の昇給の可能性について尋ねた質問では、「おそらくない」(37.6%)が最多となりました。
「全くない」(24.4%)と合わせて62.0%の医師は、現職における昇給の期待は「薄い」または「ない」と考えているようです。
Q:現在の勤務先で、今後昇給する可能性はありますか?
入職後は給与の見直しがないケースが約4割
一般企業では3か月や半年、1年に1回など定期的な賃金改定が行われるケースも多くありますが、医師の場合はそのようなタイミングが比較的少ない職種であるようです。
今回の調査で昇給を含む給与条件の見直し頻度を尋ねた質問では、「見直しはない」(38.3%)が最多となりました。
次いで「1年に1回」(31.1%)が続き、「わからない」(24.5%)も全体の4分の1ほどを占めています。
Q:現在のご勤務先では、昇給を含む給与条件の見直しはどのくらいの頻度でありますか?
診療報酬改定による賃上げが実施された勤務医は、わずか9.6%
2024年度の診療報酬改定の目玉は、医療従事者の賃上げ対応
2024年6月の診療報酬改定では医療従事者の処遇改善が大きなテーマとして掲げられ、新設されたベースアップ評価料による看護師や薬剤師等の賃上げと、初・再診料および入院基本料の引き上げによる40歳未満の勤務医等の賃上げを行うことになりました。
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賃上げがあった勤務医は、全体の1割以下
しかし、今回の調査では賃上げが「すでに実施された」と回答した勤務医はわずか6.2%であり、「これから実施される予定」の3.4%と合わせても全体の1割以下にとどまりました。
一方で「現時点で実施される予定はない」は8割近くにのぼり、大半の医師の処遇改善には繋がっていないことがわかります。
Q:6月の診療報酬改定で、給与の「賃上げ」は実施されましたか?
▼医師からのコメント
・賃上げされる気配は全くなし。(50代/呼吸器内科/勤務医(民間病院))
・賃上げなければ、転職する。(40代/内分泌科/勤務医(国公立病院))
医師の賃上げをする余力がない医療機関も多い
今回の診療報酬改定で新設されたベースアップ評価料の対象に、医師は含まれていません。
その一方で、初診料や再診料、入院基本料の引き上げによる賃上げの対象には、40歳未満の勤務医が含まれています。
しかしながら、医療機関が初診料や再診料、入院基本料の引き上げで得られる診療報酬の用途については「確実に医師の賃上げに限定する」というルールは現状ないため、勤務医の賃上げを実施するか否かは各医療機関の判断に委ねられている状況です。
加えて、今回の診療報酬改定では評価が見直された項目が多岐にわたり、医療機関にとってマイナス改定となったものも少なくありません。
さらに昨今では、医療材料や水道光熱費等の人件費以外にかかるコストの高騰が医療機関の経営を圧迫しており、「医師の賃上げ」の原資を確保することが難しくなっているケースも多いと推察されます。
▼医師からのコメント
・賃上げしてほしいが、物価高や通院精神療法の減額などで経営が厳しいので難しいと思う。(40代/精神科/勤務医(民間病院))
・病院経営は苦しくなっているようで、賃下げされる可能性はあっても賃上げされる可能性はないでしょう。(60代/一般内科/勤務医(民間病院))
賃上げの額は月額で「1万円~3万円未満」が最多
なお、賃上げされた具体的な金額については、月あたり「1万円~3万円」(52.2%)が最も多くなっています。
Q:月あたりでどのくらいの「賃上げ」が実施されましたか?
▼医師からのコメント
・今回の賃上げで、6,000円の給料増となった。しかし当直手当が10,000円で、時給換算すると645円。今後も働き続けたいとは思えない処遇である。(1万円未満の賃上げが実施された/40代/内分泌科/勤務医(民間病院))
・物価上昇に追いついていない。教育費など元々出費は多いので焼石に水で、今まで賃上げがなかった分すらも取り返せていない。(1万円~3万円未満の賃上げが実施された/50代/循環器内科/勤務医(診療所・クリニック))
年収アップを目指すために環境を変えるなら
勤務医の年収事情
続いて、勤務医の年収について確認しました。
Q:現在の年収は、どのくらいですか?
※回答医師の年代分布
年収「1,000万円~1,500万円未満」の勤務医が最も多い
今回の調査におけるボリュームゾーンは「1,000万円~1,500万円未満」(29.4%)であり、次いで「1,500万円~1,800万円未満」(20.0%)、「2,000万円~3,000万円」(18.0%)が続きました。
22.6%の勤務医は、年収2,000万円以上を得ている
なお、一般的に高年収とされる1,800万円以上は全体の34.3%を占め、年収2,000万円以上の勤務医も2割以上にのぼることがわかります。
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勤務医が「年収2,000万円」を実現する3つの方法
それでは、勤務先での昇給があまり期待できず、医師の賃上げ実施率も伸びていない状況下で勤務医が年収を上げるためには、どのような方法があるのでしょうか。
①アルバイトをする
勤務医が年収を上げる方法の代表例は、常勤先以外の医療機関でアルバイトをすることです。
医師のアルバイトは時給が高いため、常勤先の勤務と組み合わせて働くことで、安定性を担保しながら年収を上げることが可能です。
中には、1回あたりの給与が10万円を超えるアルバイト求人もありますので、条件に合うものがあるかチェックしてみてはいかがでしょうか。
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②役職者を目指す
また、部長や副院長、院長といった役職者を目指すという方法も1案です。
役職に就き役職手当が支給されることで、年収が大きく上がるケースは多くあります。
▼医師からのコメント
・副院長に昇格し、年収が上がった。(3,000万円以上/50代/循環器内科/勤務医(診療所・クリニック))
③転職する
3つ目の方法は、転職をすることです。
自らの処遇を改善するために転職を決意する勤務医は多く、実際に9割以上の医師が希望の年収を実現しています。
勤務医の5割以上が、年収アップのための転職を検討している
今回の調査では、54.3%の勤務医が年収を上げるために転職を検討した経験があると回答しています。
Q:「年収を上げること」を主な目的として、転職を検討したことはありますか?
9割以上が、転職によって年収アップを実現
そして実際に転職活動をした勤務医のうち、47.8%が「希望の年収を実現できた」と回答しました。
「希望額には届かなかったが、以前より年収が上がった」の46.7%と合わせて、94.6%の勤務医が転職による年収アップに成功しているのです。
Q:転職で、希望の年収を実現できましたか?
なお、転職による年収アップ額では「500万円以上」(29.9%)が最も多く、「100万円~200万円未満」(19.6%)が次点となっています。
Q:転職で、どのくらい年収が上がりましたか?
転職時の年収交渉はエージェントに依頼しよう
転職検討時の条件交渉では、エージェントを上手に利用するのがオススメです。
コンサルタントは医師求人市場や医療機関の内部事情にも詳しく、医師の給与交渉の経験も豊富に積んでいるため、交渉をスムーズに進めることができます。
今回の調査でも、約9割の医師が年収交渉にエージェントが介在することにはメリットを感じると回答しています(「大いに感じた」「どちらかというと感じた」を合計)。
Q:条件調整の際、転職エージェントが年収交渉を行うメリットは感じましたか?
現在のご勤務先での年収アップが難しく、将来の年収の見通しに不安を感じている先生は、「Dr.転職なび」のコンサルタントにお話をお聞かせください。
専任のコンサルタントが、市場動向のお伝えや適正年数の算出、具体的な求人のご紹介等、先生のご検討に役立つ情報を無料でご提供します。
◆調査概要「2024年夏のボーナスと年収の見通しに関するアンケート」
調査日:2024年7月9日~7月16日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:441