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どちらが大きい?医局に「所属する」メリットと「所属しない」メリット

どちらが大きい?医局に「所属する」メリットと「所属しない」メリット

日本の医療業界において医師は、医学部卒業後は大学医局に所属し、研究や診療に従事することが一般的といわれてきました。

しかし近年では、医局に所属しない研修医や、医局以外の場所で活躍する医師も多くなっています。

本記事では大学医局に所属するメリットやデメリットを解説しながら、退局時や転職時の注意点にも触れていきます。「医局を辞めるか迷っている」「退局することには不安があるけど、今の働き方を変えたい」とお考えの先生は、ぜひ参考になさってください。

大学医局とは?

臨床や研究、教育、所属する医師の人事などを司る組織

大学医局とは、一般的に大学医学部や歯学部の附属病院における診療科ごとの、教授を頂点とした人事組織のことをいいます。

多くの場合は、大学医学部の教員である教授、准教授(または助教授)、講師、助教、そして医員、大学院生、研修医(インターン)、関連病院の医師で構成されています。

なお、法令上・予算上位置づけられた組織や仕組みではありません。

この大学医局では臨床や研究、教育、医局員に対する学位取得に関する指導などが行われますが、医局の構成員を関連病院等へ紹介・派遣することも重要な機能の一つとなっています。

学外にある医療機関から要請を受けて医局に属する医師にその医療機関を紹介、その医師の就労や研修に関与します。医師の紹介を受けた医療機関は「関連病院」と呼ばれ、医師の人材供給は大学医局に依存するという形をとります。

大学医局に「入局しない」医師が年々増えている

これまで卒後医師の大半は、大学医局に入局するという道を選んでいました。

しかし2004年の「新医師臨床研修制度」や2017年度の「新専門医制度」が導入されたことなどをきっかけに、大学医局の影響力には大きな変化が訪れたといわれます。

近年では若手医師の臨床志向が高まっているなかで民間病院での研修が人気となり、その結果医局に入局する医師の数が減少したといわれます。

では実際にどのくらいの臨床研修修了後の医師が大学医局へ入局しているのか、厚生労働省が公表している「臨床研修修了者アンケート調査」で確認しました。

※「全体」には臨床研修を行った病院の種別が不明であった者も含まれる。

厚生労働省「平成31年臨床研修修了者アンケート調査 結果概要」をもとに編集部作成

※「全体」には、希望勤務先として「診療所を開設」「臨床医以外の進路(基礎医学、行政機関等)」を回答した者や無回答が含まれる。

平成26年と平成31年に臨床研修を終えた医師の「医局入局予定」を比較したところ、以下のような傾向がみられました。

・大学医局に入局する医師は、全体のおよそ7~8割

・特に臨床研修を大学病院で行った医師では、およそ9割が入局している

・臨床研修を大学病院以外で行った医師では、入局しない医師の割合が増加している

医局に所属する医師の割合は依然高く、特に大学病院で臨床研修を実施した医師については約9割と大半の医師が大学医局に入局していますが、一方で医局に所属しないことを選択する医師も一定数いる点も注目すべきポイントです。

大学病院以外の病院で研修を修了した医師のうち「入局する予定はない」という回答の割合をみてみると、2014年度(平成26年)の調査では17.1%でしたが、5年後の2019年度(平成31年)の調査では26.8%に増加しています。

これらの結果からは、大学医局に入局する医師の割合は高い傾向がある一方で、医局に所属しないことを選択する人も一定数存在しその割合を増やしている、という状況が伺えます。

大学医局に「所属する」メリット

大学医局に「所属する」メリット

医局に在籍をすることで、医師にはどのようなメリットがあるのでしょうか? 主なものを以下にまとめました。

幅広い経験を積むことができる

大学医局に所属する医師は、様々な関連病院に紹介され、その病院で勤務をします。

特に若手のうちは、医師不足の地域も含めて頻回に勤務先が変更となるケースが多くなります。

多様な診療環境のもと幅広い患者層や症例を経験することで、医療の全体像を知り、医師としての総合的な診療スキルをバランス良く学んでいく機会が得られます。

また大学病院には最先端の設備などの診療環境が充実しており、高度な医療技術に触れることもできます。自身の専門分野におけるスペシャリストとして、成長し続けるための環境が整っていることは、大学病院の大きな魅力といえます。

さらには海外への留学を希望する場合にもそのチャンスが開けており、一人の医師として幅広い経験を積むことができます。

研究に取り組める環境がある

医療機関だけではなく、研究教育機関としての機能も備えているのが大学病院です。

基礎研究や希少な症例を経験できたり、論文執筆や研究発表をしたりといった機会を得やすく、大学病院が所有する最新の設備を利用できる点もメリットといえるでしょう。

特に基礎研究に取り組むことができる環境は限られており、大学病院の医局や研究施設を併設した公的医療機関だからこそ可能なものであるといわれます。

博士号や専門医をスムーズに取得できる

大学医局は、学位や専門医の資格取得に向けた指導体制やプログラムなどの教育環境が整っています。

専門医を取得するためには必ずしも大学医局に所属する必要はありませんが、豊富な症例を経験できたり、医局員が足並みを揃えて合格を目指す環境があったりと、大学医局だからこそ享受できる点は多いでしょう。

もし転職を考える場合には、学位や専門医を取得しているかどうかによって選択肢となる勤務先や年収が変わってくる可能性もあります。

一般的には、どのような資格やスキルが評価されるのか。医師専門の転職求人サイトなどで、客観的な情報を確認してみるのもおすすめです。

将来につながる人脈を構築することができる

医局に所属している場合、国内外を問わずさまざまな分野の第一線で活躍する医師や、開業医のOB、学会や研究会関係の医師とのつながりを作りやすい環境が整っています。

専門や目指す先がまだ決まっていない時期であっても、組織として多くの医師と出会えることは大学医局に所属することの特権です。

医局で培った人脈を活かして将来開業をした際に病診連携を打診することも可能になりますし、さまざまな医師から幅広いロールモデルを学べることも、キャリア形成において有効に働くでしょう。

大学医局に「所属しない」メリット

大学医局に「所属しない」メリット

大学医局に所属する医師が大半を占める一方で、医局に所属しない医師も年々その割合を増やしています。続いて、大学医局に所属しないことによって得られるメリットをご紹介します。

医局時代よりも、待遇を改善しやすい

大学病院における給与水準は一般的に低く、また上がりにくいとされています。

また大学医局に所属していると、自院での診療や研究、論文執筆以外にも関連病院での非常勤勤務も任される場合があり、一人の医師にかかる業務負担が大きくなってしまう傾向があります。

しかしながら報酬面ではその負担の大きさに見合う評価が受けられないケースが多く、耐え切れなくなって退局を決意する医師も少なくありません。

大学医局から転職する場合には、以前より年収が上がるというケースが大半です。

さらにエージェントを介した転職の場合には、自分では直接言いづらいような雇用条件の確認や給与交渉もエージェントが代行してくれるので、納得のいく雇用条件で転職できる確率がさらに高くなります。

勤務する場所や働き方を、自分で決めることができる

大学医局に所属している場合には、基本的には医局人事による辞令を避けることはできません。

数年単位などの短期間で転居を伴う異動が生じて将来の見通しが立たないまま転勤を繰り返すというケースもあり、特に家庭を持つ医師にとっては大きな負担と感じてしまうでしょう。

一方大学医局に所属していない場合には、このような望まない人事に応じる必要がなくなります。他人に自分の人生を委ねるのではなく、納得のいくまで候補を比較検討し、自分自身で最適な勤務先を選ぶことが可能になります。

あわせて、働き方の選択肢も大きく広がります。急性期病院はもちろん、「少し落ち着いた勤務でワークライフバランスを整えてきたい」と考える場合には、担当患者が少なめの急性期施設や療養型施設、外来のみのクリニックなどから、自分に最適な職場を選び取ることが可能です。

結婚や出産・育児などのライフステージが変わるタイミングでは、それに合わせた勤務形態や勤務先を選ぶこともできますし、将来開業を視野に入れているのであれば、開業したい地域の診療連携拠点病院に勤務して繋がりを構築したり、クリニックで院長職を経験して経営的な視点を学んだりといった選択肢もあります。

「きちんと働きに合う収入を得たい」「自分の働く場所は、自分で決めたい」「このまま医局にいても、長期的なキャリアを描くことが難しい」と感じるようになったら、情報収集の始め時かもしれません。

医師専門の転職エージェントのコンサルタントを活用すると、適正年収や希望に合う募集などの情報をかんたんに入手することができます。

派閥など人間関係のストレスが軽減される

大学医局は、医師同士の軋轢や派閥争い、不条理なヒエラルキー、上司からのパワーハラスメントなど人間関係のトラブルがより生じやすい独特な環境であるといわれます。

医局に所属する医師は基本的に勤務する場所を自身で選択できないため、相性の良くない上司や同僚がいる場合にもその環境で何年も働かざるを得ないという場合も。「毎年人事のことで気を使うことに疲れた」という声もよく聞かれます。

このような医局内における人間関係のしがらみや理不尽な出来事をきっかけに、医局から離れる医師も少なくありません。

医局以外の職場においての人間関係でもストレスが全くないということはないかもしれませんが、退局することで「面倒なしがらみがなくなって、以前より気が楽になった」という医師も多いようです。

臨床医としての診療スキルを磨くことができる

「臨床に集中して、スキルアップを図りたい」という理由も、医局を離れる理由としてよく聞かれます。

外科系の専門はもちろん、内科系においても専門医の有無の次に評価される指標となるのは症例数とその内容であるといわれます。そのため、専門性をより高めていくために、「症例数の多い施設に行きたい」「より幅広い症例を経験したい」と考える医師も少なくないはずです。

大学医局で研究や論文の執筆に費やしていた時間と労力を、より多くの症例を経験するために使いたいと考える場合には、希望に合う勤務先を自身で選び取ることができる「転職」という道を選択する医師も多くいます。

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退局する際の不安や困り事とその対処法

退局時の不安や困り事とその対処法

大学医局に所属しないことにとるメリットもあることは理解しながらも、退局するということは医師にとって大きな決断になります。そのため、「なかなか退局には踏み出せない」「退局してしまったら、どのようなデメリットがあるか心配」という方も多いのではないでしょうか。

最後によくある退局にまつわる不安や困りごと、その対処法をご紹介します。

退局交渉による精神的なストレス

医師の転職において医局退局からの転職というケースは多くありますが、実際に退局できるかどうかは、「自分の意思が固まっている」ことが大きなカギとなるケースが多くなっています。

いざ決意をして医局側に退局の意向を伝えたとしても、しつこく引き留められたり、周囲から心無いことを言われてしまったりする場合もあるかもしれません。

そのようなときにも、意思を固めたうえで退職交渉に臨んでいる場合には、引き留めなどによるストレスで気持ちが折れてしまうことなく退局できる可能性が高まります。

医局に在籍する。退局して民間病院へ就職する。それぞれメリットとデメリットをきちんと把握したうえで、自分にとって重要なものや優先するものはどのようなことなのか。逆に、どのようなことであれば妥協できるのかといった自分の意思を整理し固めるということは、非常に大切なステップです。

医師のキャリアに詳しい担当が優先順位の整理をサポートします

自分の意思が固まった後は、円満退職を目指してできる限りの対応を一つ一つ丁寧に行っていきましょう。

一般的に民間病院からの転職と比べて大学医局からの転職では、退職交渉や承諾を得た後の引継ぎにも時間が長くかかるといわれます。そのため、退職意向の申し出は半年〜1年前には伝えた方が良いでしょう。

新しい医局員が入職してくる4月に合わせて人事異動を行う医局が多いので、少なくともそのタイミングに間に合うようなスケジュールを心がけたり、身近に退局した経験がある方がいる場合にはいつ頃退職の意向を伝えたかを尋ねたりしてみるのも一つの方法です。

大学医局からの転職では、この退職交渉が大きな山場ともいえます。円満退職を目指して、長期戦で計画的に交渉を進めていくようにしましょう。

専門医の取得や学術的な活動が難しくなる

医局に所属せずとも専門医の取得や維持は可能ですが、大学医局の症例数や指導体制と比較してしまうとどうしてもアドバンテージは低くなります。

大学医局からの退局を検討する場合には、自身が医師として臨むキャリアのなかで、研究や論文執筆のような学術的活動の優先順位がどれくらいかを確認しておくと良いでしょう。

大学医局から民間病院などへの転職を検討する際には、一般的な労働条件に加えて、その施設で経験できる症例数や内容、指導体制もしっかりと確かめておくことで、転職後のギャップを未然に防ぐことができます。

医療情報のアップデートがしづらくなる

医局を辞めてしまうと研究や論文に触れたり高度医療に触れたりといった機会が減ってしまい、意識的に勉強をしないとそのような情報が入ってきにくいも環境となってしまうかもしれません。

また、医局を介した人とのつながりも作りにくくなるでしょう。

そのため大学医局からの転職をする際には、自分自身で情報感度を高める工夫や努力を続けていくことが求められます。

情報収集や意見交換のために学会や勉強会へこまめに参加する、論文を読む、学生時代の先輩や後輩・研究会で知り合った医師・同じ地域で働く医師などとの関係を深めて人脈を構築するといった点を意識するとよいでしょう。

高度医療に携わる機会が減ってしまう

大きな手術や最新の治療など、高度な医療に携わる機会は多いのは、やはり大学病院やその関連病院となっています。大学病院で行っていた医療と同じレベルの医療を、転職先でも実施したいと考える場合には、候補となる施設は絞られてしまいます。

ただし、数は多くはないものの、大学病院以外の医療機関であっても、そのような環境が整う病院が全くないというわけではありません。高度な医療を実施できる環境を希望条件の主軸として、転職先を探していくと良いでしょう。

実現したい医療ができる施設を、効率的に探すなら

希望に合う就職先があるか不安

退局後に、自分自身で将来のキャリアプランを考えていかなければならないことに対して不安を覚える医師も多いようです。

これまでは医局という大きな後ろ盾のもと、多くのロールモデルとなる医師が身近にいる環境で働いてきたところが、退局後はどのようなことも自分自身で選択し決断していくことが求められます。

後悔のない選択や決断のために不可欠となるのは、俯瞰したキャリアプランと客観的な情報収集です。

・世の中にどのような医師募集があるのか分からない

・再就職先として満足できる勤務先をきちんと選ぶことができるのか、自信がない

・この先、どのようにキャリアを築いていけば良いか分からない

このような心配や不安がある場合には、大学医局から転職した医師のサポートも数多く経験してきた転職エージェントに他医師の事例や客観的な意見を聞いてみるのもおすすめです。

メリット・デメリットとキャリアプランをよく考えて決断を

昔であれば、医局を辞めた医師には「アウトロー」「ドロップアウト」というイメージがつきまとっていたかもしれません。しかし、それはもう過去の話といえるのではないでしょうか。

昨今は「大学医局に最初から所属しない」というキャリアは珍しいものではなく、医局以外の場所で、それぞれの希望や理想・生活にマッチした多様な働き方を実現している医師も多くいます。

現在は、医師にも多くの選択肢が広がっていると同時に、医師が自分で勤務先や働き方・キャリアを決定していく力量が求められる時代です。

そのため昔であれば考える必要がなかった不安や心配も出てきてしまうかもしれませんが、「さらに年収を増やしたい」「休みが欲しい」「さらに良い環境で働きたい」と考えることは決して悪いことではなく、一人の労働者として人間として、当たり前のことです。

退局するか、それとも医局でこれからも働いていくのか。ご自身の希望やキャリアプランを叶えられる方法をじっくり検討した上で、後悔のない決断をしていきましょう。

Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

医師の転職、キャリアアップ応援コンテンツを提供する「Dr.なび」編集部です。医師転職サービスを提供する株式会社エムステージが運営しています。

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