「医師の働き方改革」適用開始のおよそ1年前となる2023年4月下旬、「Dr.転職なび」では会員医師365名に「医師の働き方改革」に関するアンケートを実施しました。
本記事ではアンケート結果の中から、「医師の働き方改革」に対する医師の認知度や勤務先における進捗や変化、そして期待していること・懸念していることについてレポートします。
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適用開始まで1年を切った今、「医師の働き方改革」への認知度は?
21.4%の医師が、約1年後に「医師の働き方改革」の適用が始まることを知らない
Q:すべての勤務医について、2024年4月から「医師の働き方改革」が適用されることを知っていますか?
「知っている」とした医師が78.6%と過半数である一方で、「知らない」とした医師も21.4%。を占めています。
なお2022年6月に行った調査において同じ質問をした際には、「知っている」とした医師が77.9%、「知らない」とした医師が22.1%でした。
約10か月前と比べて認知度はわずかに上がっているものの、いまだ2割を超える医師には浸透していない状況があります。
「医師の働き方改革」に関する情報源は、「メディア」が最多
続いて、「医師の働き方改革」に関する情報収集の方法について尋ねました。
Q:「医師の働き方改革」に関する情報は、どこから発信されるものを入手していますか?(複数選択可)
最多となったのは、テレビや本、インターネットの記事などの「メディア」(回答数:160)であり、次いで「勤務先の医療機関」(回答数:154)、「厚生労働省などの公的機関」(回答数:89)となっています。
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どこが変わった?勤務先における「医師の働き方改革」の進捗状況
次に、勤務先における「医師の働き方改革」への対応状況や、取り組みが進むことによる影響について尋ねました。
32.9%の医師は、常勤先の「医師の働き方改革」は今後も進まないと感じている
最初に、常勤先における「医師の働き方改革」の進捗状況について聞きました。
Q:常勤先での「医師の働き方改革」は進んでいると感じますか?
最も多かったのは「まだ進んでいないが、これから進むと思う」(50.1%)でした。
次いで多い「進んでいる」(17%)と合わせると、67.1%の医師は常勤先での「医師の働き方改革」は進んでいると感じていることが分かります。
一方で、「あまり進んでおらず、これからも進まないと思う」(32.9%)とした医師も全体の3割を超えている点も見逃せないポイントです。
適用開始まで1年を切った現時点でも、政府が推し進める改革に向けた対応が追い付かない医療機関も少なくないようです。
56.4%の医師は、医師の働き方改革が進むことで「労働時間管理の徹底が進んだ」
続いて 常勤先における医師の働き方改革が「進んでいる」と回答した医師に、対応が進むことによる影響について尋ねました。
(上記で「進んでいる」と回答された方へ)
Q:1年前と比べて、常勤先が「変わった」と感じる点を教えてください。
最も多くの医師が挙げた変化は「労働時間管理の徹底」(回答数:35)です。
「医師の働き方改革」が始まる2024年4月以降は、一部の特例を除いて すべての勤務医の時間外労働は「年間960時間以下/月100時間未満」が原則となります。
このような背景から、勤務医の自院および非常勤先における労働時間の把握や、上限を超えないための対策・対応を進める医療機関が増えていることが推測されます。
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次いで「時間外・休日勤務の削減推進」(回答数:28)、「有給休暇の取得推進」(回答数:17)という変化を挙げる医師も多くいました。
40.3%の医師は、医師の働き方改革が進んでも「特に良い影響はない」
上記と同様に 常勤先における医師の働き方改革が「進んでいる」と回答した医師に、対応が進むことによって良い影響はあったか尋ねました。
(上記で「進んでいる」と回答された方へ)
Q:常勤先で「医師の働き方改革」が進むことで、良かったことはありますか?(複数選択可)
最も多かったのは「特にない」(回答数:25)で、およそ4割の医師は「医師の働き方改革」が進むことによる良い影響を特に感じていないことが分かります。
一方で、「休日や休暇を確保できるようになった」(回答数:20)、「プライベートの時間を確保できるようになった」(回答数:15)、「有給休暇を取得しやすくなった」(回答数:13)とオンオフをつけた働き方を実現しやすい環境が整ってきたと感じている医師もいます。
しかし「他職種へのタスクシェア・タスクシフトが進み、業務負担が減った」(回答数:2)、「必要性の低い業務が削減され、業務負担が減った」(回答数:1)と回答した医師はごく少数であり、自身の業務負担への良い影響を実感している医師は少ないようです。
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30.6%の医師は、「アルバイトへの制限が大きくなった」と回答
続いて 上記とは反対に、「医師の働き方改革」への対応が進むことによって戸惑ったり困ったりしたことはあったか尋ねました。
(上記で「進んでいる」と回答された方へ)
Q:常勤先で「医師の働き方改革」が進むことで、戸惑った・困ったことはありますか?
こちらの質問でも、戸惑ったり困ったりしたことは「特にない」(回答数:25)と回答した医師が最多で、全体の4割ほどの医師は悪い影響を特に感じていないようです。
一方で、「労働時間管理が厳しくなった」(回答数:18)と回答した医師も、およそ3割を占めました。
なかでも、非常勤(アルバイト)の労働時間に対する対応に戸惑う医師も少なくないことが分かります。
今までは医師の自由意思で実施され青天井となっていた医師のアルバイトですが、医療機関が「医師の働き方改革」を進める中で「アルバイトする時間が制限された」(回答数:9)、「アルバイトする際は、事前申請等の手続きが必要になった」(回答数:6)、「アルバイトが禁止になった」(回答数:3)のように、アルバイトへの制限が大きくなったと感じている医師は全体の3割を超えています。
その他、医師からは以下のようなコメントも寄せられました。
・毎月 当直体制が変わるため、先の予定がたてられない。(60代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・休みや早帰りではない側の医師の負担が増えたので、看護師さんの業務や書類事務業務など、外来スタッフなどもう少し充実させてほしいと思います。(30代/腎臓内科/勤務医(大学病院))
「医師の働き方改革」による、医師への影響(メリット・デメリット)は?
最後に「医師の働き方改革」の適用開始はが約1年後に迫る今、医師がデメリットとして懸念すること、メリットとして期待することを聞きました。
46.3%の医師は「収入が減ること」を懸念している
Q:「医師の働き方改革」が進むことで、懸念することはありますか?(複数選択可)
「医師の働き方改革」が進むことによって懸念することとして突出して多くの医師から挙げられたのは「収入が減る」(回答数:169)で、次いで「アルバイトする時間が制限される」(回答数:91)、「サービス残業が増える」(回答数:80)となっています。
医師から寄せられたコメントもご紹介します。
◆アルバイトがしづらくなる
・労働時間の管理は重要だと思いますが、アルバイトしにくい環境になると困る。(40代/呼吸器内科/勤務医(健診施設や老健など))
◆アルバイト医師の減少により、常勤医師の負担が増える
・非常勤の医師が来なくなり、常勤の業務が増える恐れがある。(60代/消化器内科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆自院での当直回数減少により、収入が減る
・自由意志で行っている院内宿直等が制限され、ひいては収入が減少することに懸念を覚える。(40代/泌尿器科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆サービス残業が増える
・常勤先ではすでに、フル稼働の救急業務が宿日直扱いにされているなどの問題がある。
そのような環境では働き方改革が進んでも、サ-ビス残業を強いられたりする懸念がある。(20代/皮膚科/勤務医(大学病院以外の病院))
・サービス残業の多い職場からは人が減ってしまうと予想される。(20代/精神科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆患者様からの理解が得られるか
・医療を受ける方の意識改革も必要だと感じます。不満感からのトラブルが増えないことを祈ります。(40代/一般内科(訪問診療)/勤務医(診療所・クリニック))
医師の働き方改革に期待することは、「プライベートの時間確保」が最多
Q:常勤先における「医師の働き方改革」に期待することは、どのようなことですか?
一方、「医師の働き方改革」が進むことによって期待することでは、「プライベートの時間を確保できる」(回答数:130)、「休日や休暇を確保できる」(回答数:129)と、仕事外の時間をしっかり確保できることを期待する声が多数集まりました。
また、長年の課題とされてきた長時間労働の是正によって「健康的な生活を送れる」(回答数:115)ことへの期待を持つ医師も多くいます。
77.8%の医師は、転職先の「医師の働き方改革」への取り組み状況を重視
さらに、もしも将来転職を考える場合、候補先の医療機関の「医師の働き方改革」への取り組み状況はどのくらい重要か尋ねました。
Q:今後転職を検討することがあった場合、候補先の「医師の働き方改革」への取り組み状況は重視しますか?
最も多かったのは「まあ重視する」(48.8%)であり、「重視する」(29%)と合わせると、およそ78%の医師は転職先検討において「医師の働き方改革」への対応状況を重視するということになります。
「医師の働き方改革」に向けた医療機関側の対応については、上限規制に伴う労働時間管理の厳格化がクローズアップされがちです。
しかしその一方で、「医師の働き方改革」に向けた取り組みを進める中で長時間労働の是正を目指し、医師がより良い働き方が実現できる労働環境を整備することを目指している医療機関も存在しています。
転職を検討する際には、その候補先となる医療機関ではどのような働き方が叶うのか、しっかりと確認しておきたいところですよね。
「自分が希望する働き方が実現できる医療機関は、どこにあるんだろう?」
とお考えの先生は、医療機関の内部情報に精通した「Dr.転職なび」のコンサルタントまでお問い合わせください。
医師転職のプロならでは視点から厳選した、最適な選択肢をご案内いたします。
調査概要「医師の働き方改革」に関するアンケート
調査日:2023年4月25日~2023年5月2日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:365
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