転職や異動で新しい医療機関に入職した後、「職場になかなか馴染めなくて辛い」と感じたことはありませんか。
「Dr.転職なび」が行った調査では、83.3%にのぼる医師が「新生活に向けて不安や悩みがある」と答えており、中でも人間関係がうまくいくかどうかを不安視する声が多く寄せられました。
今回は医師から寄せられた回答をさらにくわしく読み解きながら、医師が職場における人間関係を円滑にするコツや、職場での人間関係が辛くなってしまったときの対処方法をご紹介します。
多くの医師にとって、職場の人間関係は重要なもの
95.6%の医師が、働く上で「職場の人間関係は重要」と考えている
できるだけストレスなく、モチベーションを高く保った状態で働くためには、円滑な人間関係は欠かせないものです。
今回の調査でも、働く上で勤務先の人間関係が「非常に重要である」と答えた医師は6割近くを占めており、「どちらかというと重要」と合わせて9割を超える医師が勤務先における人間関係の重要性を感じていることがわかりました。
Q:ご自身が働く上で、ご勤務先の人間関係は重要と感じますか?
▼医師からのコメント
・医師の仕事は、自分だけで完結することは不可能。そのため、他科の医師やコメディカルとの関係は非常に大切。(30代/血液内科/勤務医(民間病院))
・仕事はチームで行うものであり、病院という組織であるため、そこでの人間関係は避けて通れない。(60代/消化器内科/勤務医(民間病院))
・医療事故の防止につながる。(50代/麻酔科/勤務医(診療所・クリニック))
・チームワークが良いと仕事への意欲が増し、大変な仕事の苦痛も緩和する。(40代/健診・ドック/勤務医(健診施設や老健など))
医療の現場では、他の診療科の医師や看護師等のコメディカル、事務職をはじめとする多職種が連携して仕事を進めることが大半です。
そのため、職場における人間関係の重要性を感じている医師が多いようです。
現役医師に聞く!職場に馴染める医師と馴染めない医師の特徴
医師が職場において円滑な人間関係を構築するためには、どのようなことを意識して行動すると良いのでしょうか。
続いて、自身の勤務先に「異動や転職で新しい医師が入職してきたことがある」と回答した医師289名を対象に、職場にすぐに馴染める医師・馴染みにくい医師の特徴を聞きました。
職場になかなか馴染めない医師の特徴
異動や転職で自身の医療機関に入職してきた医師に対して「この医師は馴染みにくい」と感じた経験を尋ねた質問では、コミュニケーションの取りづらさやコメディカル等への高圧的な接し方が目についたという声が寄せられました。
コミュニケーションが取りにくい
・話しかけにくい。(30代/腎臓内科/勤務医(私立の大学病院))
・人の名前を覚えない。また、話しかけたときに不機嫌そうに対応する。(30代/血液内科/勤務医(民間病院))
態度が高圧的である
・高圧的だった方は馴染みにくかった。(30代/呼吸器内科/勤務医(民間病院))
・他責的で、コメディカルからの受け入れが悪くなるような対応しかできない。(40代/小児科/勤務医(民間病院))
また、これまでの仕事の進め方へのこだわりが強く、なかなか現在の勤務先におけるルール等を受け入れられないというケースもあるようです。
現在の職場の仕事の進め方やルールを受け入れない
・マイルールに沿って、決まった仕事しか受け付けない。(40代/健診・ドック/勤務医(健診施設や老健など))
・「前の職場では~」と前職の話ばかりする。また、まったく質問してこない。(50代/循環器内科/勤務医(民間病院))
・独自のやり方で仕事をして、人の話を聞かない。(40代/精神科/勤務医(民間病院))
職場に早く馴染める医師の特徴
反対に、職場にすぐに溶け込むことができる医師の特徴を尋ねた質問では「周囲と積極的にコミュニケーションを取る」「話しかけやすい雰囲気がある」「挨拶をする」といったコミュニケーションの取りやすさに関する声が多く集まりました。
Q:職場に「馴染むのが早い」と感じる医師の特徴として、当てはまるものがあれば教えてください。
▼医師から寄せられたコメント
・相手に目線を合わせることも、医師に必要なスキルだと思います。(60代/一般内科/開業医)
前向きに仕事に取り組む姿勢がみえる
また、積極的なコミュニケーションが難しくとも、仕事への前向きな取り組みがみえる医師は周囲の方から好意的に受け止められる傾向があるようです。
・周囲とのコミュニケーションが苦手な場合でも、腰が低かったり、仕事を一所懸命やる姿勢があったりする方は、周りがサポートしてくれるようになる。(30代/一般内科/勤務医(健診施設や老健など))
新しい職場のルールをインプットすることも重要
とくに転職や異動の経験が少ない場合、無意識に前の勤務先における常識に捕らわれてしまいがちですが、仕事の進め方やルールは医療機関によって千差万別です。
業務や職場のルールについてわからないことがあるときには、素直に質問や相談を行ったり、周囲からのフィードバックを積極的にもらうように心がけたりすると良いでしょう。
そうすることで「積極的に職場のルールを吸収したい」「早く組織に馴染みたい」という前向きな姿勢が周囲に伝わり、周囲との人間関係にも良い影響があるはずです。
職場の人間関係が辛くなったときの対処方法
最後に、それでも職場の人間関係が辛いと感じてしまったときの対処法をご紹介します。
異動・転職後の医師が辞めたくなる理由のトップは「人間関係がうまくいかない」
職場における人間関係のストレスから、転職活動をしている医師や実際に転職する医師は多くいます。
今回の調査においても、異動や転職後の医師が「辞めたい」と感じた理由で最も多かったのは「人間関係がうまくいかない」(回答数:127)でした。
Q:異動や転職をした後に、「辞めたい」と感じたことはありますか?
Q:「辞めたい」と感じた理由は、どのようなことですか?
上級医との関係に悩む医師がとくに多い
なお、関係がうまくいかないと感じる相手としては「上級医」(回答数:61)が最多となり、「看護師等のコメディカル」(回答数:27)、「同僚医師」(回答数:25)、「事務職」(回答数:14)という回答が続きました。
・事務長、医事課長との関係がうまくいかなかった。(60代/整形外科/勤務医(民間病院))
・医師としての診療だけでなく、部下の人間関係にまで時間を割いて対応することに疲れた。(50代/眼科/勤務医(健診施設や老健など))
・大学の同窓生が口にする職場の不満は、十中八九が人間関係の問題。(30代/一般内科(訪問診療)/勤務医(フリーランス))
人間関係が辛くなってしまったときの対処方法3選
異動や転職後の新しい環境においては、多くの医師が不安やストレスを抱えるものです。
それでも、どうしても職場の人間関係が辛くなってしまったときの対処法をご紹介します。
職場における人間関係のストレスは「つきもの」と考える
新しい労働環境に飛び込む際には、大なり小なりの不安やストレスを誰もが経験します。
そのため、「職場における人間関係のストレスはつきものだ」と理解しておくことも大切です。
その上で、仕事から離れる時間を作ってストレスを解消したり、周囲に相談をしたりしながら精神的なバランスを保つようにしましょう。
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転職した目的に立ち返り、時間をおいて様子を見る
転職で入職した場合には、他の医療機関と比較した上で現在の勤務先への入職を決めた理由や目的を振り返ってみましょう。
当初抱いていた目標や目的が実現できそうな場合には、「とりあえず、あと3か月は頑張ってみよう」等、期間を区切って様子を見てみると良いかもしれません。
「Dr.転職なび」の調査によると、異動や転職による辛さを感じていた医師の61.8%はその後「辛い気持ちは解消した」と答えています。
さらに、そのうち81.2%は「1年以内に解消した」と回答していることから、少し時間をおくことが有効となるケースも多いようです。
転職を検討してみる
それでも、今の勤務先に留まることが難しいと考える場合には、転職活動を始めてみるのも1つの方法です。
実際に、職場の人間関係がきっかけで転職を決意する医師は多くいます。
今回の調査でも、勤務先における人間関係のトラブルやストレスから転職を考えたことがある医師は全体の63.5%を占めており、実際に転職をした医師もおよそ3割にのぼることがわかりました。
Q:ご勤務先における人間関係のトラブルやストレスから、転職を考えたことはありますか?
なお、上記で「実際に転職したことがある」と回答した医師に、転職が人間関係のストレスやトラブルの解決策となったかを尋ねた質問では、96.1%にのぼる医師が「解決・改善した」と回答しています(「解決した」「解決まではいかないが、改善はした」を合計)。
Q:転職をしたことで、人間関係のトラブルやストレスは解決しましたか?
候補先となる医療機関の人間関係を確認するために行ったこととしては、病院見学を行い、すでにそこで働いている医師に話を聞いたというコメントも寄せられました。
・見学をして、先に入職した知人に職場の雰囲気を尋ねた。(50代/眼科/勤務医(健診施設や老健など))
その職場が自分に合うかどうかを判断しやすくするためには、広く公開された求人情報や病院のホームページ等だけではなく、実際に施設に赴いて病院や医局、働いている方の雰囲気を感じることも重要な検討材料になります。
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もし医療機関の見学を希望する場合には、エージェントを介して医療機関に相談してみるのがスムーズです。
私たち「Dr.転職なび」では、約17,000件の医療機関とのパイプを活かして、先生お一人おひとりを専属で担当するコンサルタントが、きめ細かに転職活動のサポートを行います。
将来の働き方を考える際、知らない選択肢を検討することはできません。
今の職場で人間関係にお悩みを感じておられる先生は、まずはさまざまな医療機関や働き方を広く知るための情報収集から始めてみませんか。
◆調査概要「新生活の悩み・困りごとに関するアンケート」
調査日:2024年3月19日~3月26日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:367