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【医師の働き方改革】働き方はどう変わる?「労働時間の上限規制」をわかりやすく解説

医師は、他の職種とと比べると 突出して労働時間が長い職種です。

医師の人材不足や偏在が指摘されるなか、日本の医療は長時間労働も厭わない医師の献身的な働き方によって支えられてきたといっても過言ではありません。
しかし2024年を目前にした今、医師の働き方の根本にある長時間労働の文化を変えることが強く望まれています。

2024年4月からスタートする「医師の働き方改革」には、長時間労働の是正策である 時間外労働の罰則付き上限規制が盛り込まれています。

本記事では、勤務医が知っておきたい時間外労働の上限規制のポイントを、弊社で実施した医師へのアンケート結果と合わせて分かりやすく解説します。

労働時間の上限規制で、医師が働く時間はどのように変わる?

2024年4月から実施となる労働時間の上限規制によって、医師が働く時間にはどのような影響があるのでしょうか。具体的に解説していきます。

「時間外労働」の定義とは?

医師の働き方改革において大きなポイントとなるのが「時間外労働」です。この「時間外労働」とは、どのような労働のことをいうのでしょうか。

労働基準法32条による一般的な業種における法定労働時間は、「1日8時間まで(休憩時間1時間を除く)」「1週あたり40時間まで」と定められています。この法定労働時間を超過した場合の労働を「時間外労働」といいます。

2024年以降の労働時間の上限規制では、この「時間外労働」について上限時間が定められています。

なお 時間外労働の上限を超えて労働させた場合、使用者は労働基準法違反として罰せられる可能性があります。

4割以上の医師は「時間外労働」をしている

なお 弊社で実施した医師へのアンケートでは、「1日あたり8時間以上働いている」、つまり法定労働時間外にも労働を行っていると回答した医師は、全体の約44%を占めています。

Q:主たる勤務先(以下常勤先という)における「1日の労働時間(日勤)」は、どのくらいですか?

Q:主たる勤務先(以下常勤先という)における「1日の労働時間(日勤)」は、どのくらいですか?

また時間外勤務の発生頻度については、およそ5人に1人の医師が「ほぼ毎回発生する」と回答しており、多くの医師は頻回な時間外勤務に対応していることが分かります。

Q:常勤先における「時間外労働」は、どのくらいの頻度で発生しますか?

Q:常勤先における「時間外労働」は、どのくらいの頻度で発生しますか?
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時間外労働上限の A水準・B水準・C水準とは?

時間外労働上限の A水準・B水準・C水準とは?

今後も持続可能な医師の働き方を考えるうえで、長年の課題となってきたのが「時間外労働」の存在です。

現在の医療提供体制を維持しながら、どのような形で上限規制を設定するべきか。医師の働き方改革に関する検討会をはじめとするさまざまな議論が重ねられた結果、医師・医療機関の特性に応じて以下のような上限が設定されました。

 A水準B水準C水準
対象すべての医師
(診療従事勤務医)
地域医療暫定特例水準
(救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関)
集中的技能向上水準
(初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指すなど、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師)
時間外労働の上限年960時間以下/月100時間未満(休日労働含む)年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)

すべての勤務医が対象となる「A水準」

2024年4月からはじまる時間外労働時間の上限規制における原則は「年960時間以下/月100時間未満」です。これが「A水準」と呼ばれる基準となる数値です。

2024年4月以降、診療に従事するすべての勤務医は この原則をベースに労働時間を管理していくことになります。

なお、厚生労働省「医師の働き方改革について」によるA水準の上限水準に極めて近い働き方のイメージは以下とされています。

・毎日1時間ほどの時間外労働(早出または残業)

・当直は週1回程度(当直の翌日は、昼までの半日勤務)

・年間80日程度の休日(おおむね4週6休)

A水準の上限水準に極めて近い働き方のイメージ

※厚生労働省「医師の働き方改革について」より引用

しかし、医師の臨床経験年数やキャリア、勤務する医療機関が地域で果たす役割などよっては「A水準」の働き方を満たすことが難しいケースが出てきます。

暫定的な特例として設けられた「B水準」と「C水準」

そこで特例として、やむを得ず高い上限時間が適用される医療機関を都道府県知事が指定する制度が「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(改正医療法)」で創設されました。

この改正医療法をもとに設定された水準の1つめが、救急医療など緊急性の高い医療提供を行う医師が該当する「B水準:地域医療暫定特例水準」です。三次救急や救急搬送の多い二次救急指定病院、がん拠点病院などで適用となります。

なお、B水準のなかには、派遣先(医師の派遣を通じて地域医療を確保するために必要な役割を持つ特定の医療機関)での労働時間を合算する「連携B水準」があります。

特例の2つ目は、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師が該当する「C水準:集中的技能向上水準」です。

C水準のなかには、初期研修医や専門医取得を目指す専攻医が該当する「C-1水準」と、医籍登録後の臨床従事6年目以降の医師を対象とした「C-2水準」があります。

なお、B水準・C水準については段階的に解消していくとされていますので、最新の情報を随時キャッチアップするようにしましょう。

3つの水準で求められる「追加的健康確保措置」とは?

それぞれの水準の対象となる医師の健康や医療の質を確保するための措置として、「追加的健康確保措置」の実施が求められます。具体的な内容は、以下の通りです。

すべての医師(A水準・B水準・C水準)に対する「追加的健康確保措置」

「産業医などによる面接指導と就業上の措置」…義務

当月の時間外・休日労働が100時間に到達する前に、産業医の面接指導を実施。医療機関の管理者は、面接指導実施医師からの報告および意見をふまえて、就業上の措置(いわゆるドクターストップ)を講ずる。

A水準の医師に対する「追加的健康確保措置」

「連続勤務時間の制限(28時間)」…努力義務

連続勤務時間制限を28時間までとする(労働基準法上の宿日直許可を受けている場合を除く)。

「勤務間インターバル」(9時間以上)」…努力義務

通常の日勤後、次の勤務までに9時間のインターバルを確保する。当直明けの日(宿日直許可がない場合)は18時間のインターバルを確保、当直明けの日(宿日直許可がある場合)は9時間のインターバルを確保する。

B水準、連携B水準、C-1水準、C-2水準の医師に対する「追加的健康確保措置」

「連続勤務時間の制限(28時間)」…義務

連続勤務時間制限を28時間までとする(労働基準法上の宿日直許可を受けている場合を除く)。

「勤務間インターバル」(9時間以上)」…義務

通常の日勤後、次の勤務までに9時間のインターバルを確保する。当直明けの日(宿日直許可がない場合)は18時間のインターバルを確保、当直明けの日(宿日直許可がある場合)は9時間のインターバルを確保する。

2024年以降は「副業先」も含む労働時間の管理が必要

2024年以降は「副業先」も含む労働時間の管理が必要

なお、複数の医療機関で勤務する場合にも「時間外労働時間の上限規制」や「追加的健康確保措置」が適用されるので、副業をする場合には注意が必要です。

労働時間の上限規制がスタートした後は、総勤務時間が各水準で設定された上限を超えないように、副業先での勤務を含めた労働時間の管理が求められるようになります。

そこで今後の医師アルバイト市場において重要になるのが、医療機関の「宿日直許可」の取得有無です。

宿日直許可がある副業先での勤務であれば「原則的に勤務時間とみなされない」とされているため、上限時間に制限されることなく副業が可能となります。

医師による「労働時間の上限規制」の認知度は?

医師による「労働時間の上限規制」の認知度は?

ここまでご紹介してきた「労働時間の上限規制」に関する内容やルール、そして自身の労働時間への影響について 医師はどのくらい知っているのでしょうか。医師を対象としたアンケートの結果をみていきます。

半数以上の医師は、労働時間の上限規制について「知らない」

医師へのアンケート調査では、労働時間の上限規制について「詳しく知っている」と回答した医師は、10%未満でした。一方、「あまり知らない」「全く知らない」医師は全体の約52%を占めています。

Q:医師の働き方改革における「労働時間の上限規制」の内容を知っていますか?

Q:医師の働き方改革における「労働時間の上限規制」の内容を知っていますか?

7割を超える医師は、「医師の働き方改革」以降の働き方を把握していない

また、労働時間の上限規制によって 自身の労働時間がどのような影響を受けるかを把握している医師は30%未満となり、「知らない」医師が70%を超える結果となりました。

Q:2024年4月以降、ご自身の労働時間の上限は何時間となるか知っていますか?

Q:2024年4月以降、ご自身の労働時間の上限は何時間となるか知っていますか?

「労働時間の上限規制」で、医師の働き方は大きく変わる

「労働時間の上限規制」で、医師の働き方は大きく変わる

医師の働き方改革における労働時間の上限規制がスタートするまで、残り2年を切っています。

しかしながら 弊社で実施した医師を対象としたアンケートからは、医師の働き方改革の主役であるはずの医師一人ひとりに認知されているとは言い難い現状が浮き彫りとなりました。

大枠が定められた今もなお、「医師の働き方改革」に関してはさまざまな議論が進められています。今後も最新の動向を確認しながら、2024年以降の働き方の見通しを立ててみてはいかがでしょうか。

Dr.転職なびに登録する

◆調査概要「医師の働き方改革についてのアンケート」

調査日:2022年6月23日

対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師 

回答数:1,276人

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