厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、日本の医療機関で働く全医師の約20%を占め、全診療科の中でも最も人数が多いのが内科医です。
幅広い疾患の診察や治療にあたるジェネラリストとして、活躍する場は多岐にわたっています。
本記事では「Dr.転職なび」で実施した医師アンケートの結果等をもとに、内科医の年代・勤務先・働き方別の平均年収や主な業務内容、今よりも年収をアップするための方法について分かりやすく解説します。
現役医師に聞く!内科医の年収事情
Dr.転職なびが会員医師に実施した年収に関するアンケート結果(※)をもとに、内科医の年収事情を確認しました。
(※)すべての回答のうち、主な診療科が以下の医師・223名の回答のみを抽出して集計。
一般内科、一般内科(訪問診療)、血液内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、膠原病内科、人工透析内科、糖尿病内科、内分泌科、血液内科、脳神経内科
内科医の44.8%は、「1800万円以上」の年収を得ている
内科医全体の年収帯を1,000万円未満、1,000万円以上1,800万円未満、1,800万円以上の3つに区分したところ、それぞれの割合は以下の通り「1,800万円以上」が全体の4割以上を占め、最多となりました。
より詳細な年収分布は以下の通りで、最も多いのは「1,800万円~2,000万円未満」の医師でした。
年代別にみる、内科医の年収分布
次に、年代別に切り取った内科医の年収を確認しました。
20代・30代の内科医の年収帯は「1,000万円~1,800万円」が最多
20代・30代では「1,000万円以上1,800万円未満」が最多となり、全体の約半数を占める割合となりました。
40代・50代の内科医の過半数は、年収「1,800万円以上」
続く40代・50代では、年収「1,800万円以上」の医師が53.2%と半数を超えました。
より詳細な分布状況では、「1,800万円以上2,000万円未満」が最も多くなっています。
なお、すべての世代の中で年収「1,800万円以上」が占める割合が最も高いのは、この40代・50代でした。
60代以上の内科医の20%は、年収「1,000万円未満」
最後に、60代以上の内科医の年収帯を見てみましょう。
40代・50代と同じく最も多いのは「1,800万円以上」である一方で、「1,000万円未満」が占める割合が全世代の中で最も高くなっています。
多くの勤務医は、60歳や65歳等で定年を迎えます。
定年後は勤務先や働き方を変更するケースも多くあり、その影響で年収が減少する可能性も考えられるでしょう。
定年後のセカンドキャリアの検討については、以下の記事もご参考ください。
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勤務先・働き方別にみる、内科医の年収分布
最後に、勤務先の医療機関や働き方による年収の違いを確認しました。
大学病院で働く勤務医の5割が、年収「1,000万円以上1,800万円未満」
大学病院で勤務する内科医の年収帯で最も多くなったのは、「1,000万円以上1,800万円未満」でした。
残りの5割は、「1,000万円未満」と「1,800万円以上」で二分している状況です。
民間病院で働く勤務医の場合は、年収「1,800万円以上」が約5割に
続いて、医療法人等の民間病院で働く内科医の年収帯を確認してみると、年収「1,800万円以上」が占める割合が最も高く、全体の48.5%に上りました。
次いで多いのは「1,000万円以上1,800万円未満」で、「1,000万円未満」は全体の1割以下であることが分かります。
クリニックの勤務医の場合は、年収「1,800万円以上」が半数以上
さらにクリニックで働く内科医の場合は、年収「1,800万円以上」が半数を超えています。
フリーランスとして働く内科医の年収
続いて、常勤先を持たず非常勤医師として働くフリーランスの内科医の年収を確認していきます。
最も多い層は年収「1,000万円以上1,800円未満」で、全体の約半数を占めており、残り約半数は「1,800万円以上」が約3割、「1,000万円未満」が約2割となっています。
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開業医として働く内科医の年収
最後に、開業して働く内科医の年収を確認しました。
最も多くなったのは「1,800万円以上」で、全体の半数を占めています。
次いで「1,000万円以上1,800万円未満」が4割、残り1割が「1,000万円未満」となりました。
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これらの調査結果からも分かるように、内科医の年収は勤務先や働き方によって大きく変動します。
しかし「今自分が提示されている年収は、果たして適正なものなのか?」と気になる場合でも、年収などお金に関することは同僚や先輩等周りの方には聞きづらいという方もいらしゃるかもしれません。
そのような時は、医師専門の転職エージェントに聞いてみるのも一つの方法です。
医師専門の転職エージェントのもとには、医師募集に関する多くのデータや事例・経験が蓄積されていますので、偏りのない広い視点から情報を集めることができます。
また第三者的な立場のエージェントであれば、同年代の医師がどのくらいの年収を提示されているのか、今より年収を上げるためにはどのような働き方があるかといったことも気兼ねなく話せます。
勤務先別・内科医の仕事内容と労働環境
内科医は、幅広い領域で柔軟な対応を行うジェネラリスト
内科医は、内臓や血液、神経など全身に現れる幅広い症状や疾患に対して、不調の原因を総合的に診断し、投薬を中心とした治療を行います。
また、慢性疾患から急性疾患まで様々な状態にある患者の対応や、必要に応じて関係する専門科の医師と連携するといった機会もあり、柔軟性やコミュニケーション能力といった資質が求められる場面も多くあります。
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なお内科と一言でいっても様々な専門分野に分かれており、以下のような診療科があります。
・一般内科
・循環器内科
・呼吸器内科
・消化器内科
・糖尿病内科
・内分泌内科
・血液内科
・腎臓内科
・腫瘍内科
・老年内科
・人工透析内科 など
内科医の仕事内容は、勤務先によって異なる
さらに内科医の仕事内容は、勤務先となる施設によっても大きく異なります。
有床の医療機関
入院医療を提供している病院やクリニックでは、外来診療のほかに入院患者の管理や当直、オンコール対応も業務に含まれるケースが多くなっています。
そのため、業務量が多く時間外勤務が増えたり、緊急時の呼び出しなど夜間対応を求められたりと忙しい労働環境となる傾向があります。
報酬面では多忙な勤務となる分、時間外手当や当直手当などがあるため、給与水準は高くなります。
無床の医療機関
時間外勤務が発生しづらく、オンとオフをしっかりと切り替える働き方を実現しやすいので、ワークライフバランスを重視して働きたい医師や育児との両立を希望する女性医師などから高い人気があります。
当直や時間外手当が発生しないため年収帯は比較的低めとなっていますが、院長職候補などで採用された場合には高額給与の提示を受けられる場合もあります。
また、昨今では在宅医療専門のクリニックも多くあります。
24時間体制の対応で激務というイメージがあるかもしれませんが、常勤医師の軽減負担のために非常勤医師が夜間業務は対応するなど、タスク・シェア/シフトが進んでいる施設も増えています。
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なお在宅医療における内科医のニーズは特に高く、年収2,000万円を超えるような高額報酬の募集も少なくありません。
年収アップを目指して転職を検討する場合には、選択肢に含めてみるのもおすすめです。
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介護保険施設
高齢化が進む日本では、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護療養型医療施設のように、介護保険サービスとして利用できる公的施設が増えています。
このような施設では医師の配置が義務付けられており、多くの医師が活躍しています。
主な業務内容としては、利用者の健康管理や急変時の対応、看取りの対応などです。
オンコール対応が求められる施設もありますが、有床医療機関と比べるとその頻度は低いことが多く、比較的ゆったりとした勤務となります。
そのため、ベテラン医師のセカンドキャリア先としての人気も高く、エリアによっては募集が出るとすぐに埋まってしまうというケースもよくあります。
健診
健診というと、春や秋などの健康診断の時期に多くの募集が出るアルバイトでの経験がある医師もいるかもしれません。
健診対応は内科医が業務の一環として担当することも多く、アルバイト以外にも健診センターでの常勤といった働き方もあります。
時間外対応や当直業務がなく勤務時間が決まっているので、かなり仕事とプライベートの両立がしやすい労働環境といえます。
報酬面は低い傾向がありますが、内視鏡検査に対応できる、資格を保有しているといった健診で活かせるスキルがある場合には、好待遇となる可能性もあります。
内科医の年収への満足度と、年収を増やすための対策は?
31.9%の医師は、現在の年収に「不満がある」
現在の年収に対する満足度を尋ねた質問では、以下のように「まあ満足している」と回答した医師が約6割となっています。
一方で「やや不満がある」「かなり不満がある」と答えた医師も3割を超えており、3人に1人以上の内科医は現在の年収に不満を抱えているという状況がうかがえます。
医師の働き方改革以降「年収が上がる」と見込む医師は、わずか6.7%にとどまる
また、2024年4月からは「医師の働き方改革」の適用がはじまり、多くの内科医の労働時間にも大きな変化・影響が見込まれます。
このような状況下で今後の年収についてどのような予測を立てているか尋ねた質問では、年収が「上がると思う」と回答した内科医は、わずか6.7%でした。
一方で「変わらない」が65.9%、「下がると思う」が27.4%となり、9割を超える医師は「医師の働き方改革」以降の年収アップは難しいと予測していることが分かります。
「医師の働き方改革」以降も、内科医が年収をアップするための対策・2選
それでは内科医が現在の年収を改善したいと考える場合には、どのような対策を取ると良いのでしょうか。
2024年4月からは「医師の働き方改革」が施行開始となり、医師の時間外・休日労働にも上限規制が設けられます。
つまり、当直回数や残業で労働時間を増やして年収を上げることは、今後は難しくなってしまうでしょう。
そのため「医師の働き方改革」以降に内科医が年収をアップしたいと考えるときには、以下のような方法がおすすめです。
内科医が年収を上げるための方法①転職する
専門性の高い症例や最新の医療技術を経験できるなど、医師としてのスキルを高められることが大きな魅力の大学病院ですが、年収面では民間病院と大きく差があるのが実情です。
よって、現在大学病院や公的な病院で勤務している場合には、医療法人などが運営する医療機関へ転職・入職することで年収アップを実現できる可能性が高くなります。
本調査でも、年収を上げるために転職を検討した経験がある内科医は7割を超えており、実際に転職したという内科医もおよそ2割に上っています。
内科医が年収を上げるための方法②アルバイトで副収入を得る
常勤先から支給される年収に加えて、アルバイトによる副収入を得ている医師は、内科医に限らず数多く存在しています。
例えば、70,000円/日の健診アルバイトで月4回勤務する場合には、
・70,000円×4回×12か月=3,360,000円
となり、年間で336万円という大きな副収入を得ることができます。
ただし、上述の通り2024年4月からは「医師の働き方改革」が始まるため、医師の労働時間管理がさらに厳格になることを念頭において検討する必要があります。
具体的には、病院や診療所・介護老人保健施設又は介護医療院に勤務する「医業に従事する医師」は、常勤先および非常勤先における労働時間の上限が設けられます。
そのため、今までのように青天井でアルバイトをすることができなくなります。
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内科医には病院やクリニック、介護保険施設など様々な活躍の場があり、勤務先や担当する業務によって受け取る報酬面は大きく変わります。
内科医が勤務先を検討する際には、自分が医師として仕事に対して何を求めるのか、どのような働き方をしていきたいのかなどを十分に考慮して検討することをおすすめします。
今後のキャリア設計や勤務先探しについて迷うことがあれば、Dr.転職なびのコンサルタントまでお気軽にご相談ください。
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◆調査概要
調査概要「医師の年収に関するアンケート」
調査日:2023年11月7日~11月14日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:482
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