Dr.転職なびの調査によると、勤務医の年収で最も多いのは「1,800万円~2,000万円」です。
本記事では、アンケートで寄せられた医師389名の声から、勤務医の年代別・勤務先別年収事情と、年収アップを図る方法に迫ります。
現役医師・389名に聞く!勤務医の年収事情
Dr.転職なびが医師を対象に実施したアンケートの中から「勤務医」(※)による回答のみを抽出し、年代別の収入状況(常勤先以外からの収入含む)を確認しました。
(※)勤務医…本記事においては大学病院、民間病院、クリニック、健診センター、老健などを常勤先として働く医師を指すこととして、開業医・フリーランス・産業医・休職中・無職の医師から得た回答を除いて集計しています。
なお、回答医師の年代は以下のような構成となっています。
勤務医全体で最も多い年収帯は「1,800万円~2,000万円」
本調査では「400万円未満」から「3,000万円以上」まで、200万円刻みで15の選択肢を設けた上で、現在の年収(常勤先以外からの収入を含む)を尋ねました。
Q:現在の年収を教えてください。
その結果、勤務医全体の年収帯では「1,800万円~2,000万円」が最多となり、次いで「1,400~1,600万円」、「2,000万円~2,200万円」という年収帯が続きました。
全体的には、高額年収とされる「年収1,800万円以上」を得ている医師が全体の45.7%を占めていることが分かります。
「年代別」に見る、勤務医の年収事情
続いて、20代~60代以上の年代ごとに勤務医の年収事情を確認しました。
20代・勤務医の年収事情
続いて、年代別に勤務医の年収を確認していきましょう。
医師として働き始め、モチベーションも高い20代・勤務医の年収状況は、「800万~1,000万円未満」が最多となっています。
医学部を卒業するのは最短で24歳、卒業後の2年間は初期研修医として勤務を始めます。
この初期研修時はアルバイトが禁止されているため、一般的に20代の勤務医の年収は低めとなるケースが大半です。
アルバイトが解禁となり、副収入が見込める
初期研修が修了し専攻医となる20代後半になると、年収が大幅にアップします。
また医師3年目以降は、アルバイト(外勤)が解禁となります。
常勤先以外からの副収入を得られるようになるので、自身で年収を上げやすい環境になります。
30代・勤務医の年収事情
経験やスキルを重ね、今後のキャリアプランを考え始める30代・勤務医の年収事情を、卒後年数別に確認しました。
30代・勤務医(卒後10年目以下)の年収事情
中堅となる30代になると、常勤先の当直業務や部下の指導など、任される業務の幅が広がり、業務量も増加します。
このような背景から労働時間が増えた分、年収も増加するという傾向があります。
本調査でも最も多くなったのは年収1,000万の大台を超える「1,400万円~1,600万円未満」であり、一般的に高額年俸とされる年収1,800万円を超える医師も全体の約26.5%を占めるという結果となっています。
30代・勤務医(卒後11~15年目)の年収
各種専門医資格を取得する医師が多くなる30代後半を迎えた医師の年収は、以下の通りです。
0代前半よりもさらに年収帯が高くなる傾向がみられ、年収1,800万円を超える医師の割合はおよそ27.5%まで拡大しています。
なお今後のキャリアを考えた転職を行う医師が増える点も、30代の勤務医の大きな特徴です。
なかには結婚や出産・育児等によるライフスタイルの変化を経験する医師もいます。
人生の節目で自身のキャリアをしっかり構築することができるかどうかが、将来高い年収を確保する上でのポイントとなるでしょう。
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40代・勤務医の年収事情
医師としての専門性に加えて、役職に就き管理職としての能力も求められることも多くなる40代の勤務医の年収事情は以下の通りです。
40代・勤務医(卒後20年目以下)の年収事情
30代より全体的に年収帯が上がり、年収1,800万円を超える医師の割合はおよそ47.5%まで上昇しています。
40代・勤務医(卒後20年目以上)の年収事情
卒後年数が20年を超えると、より顕著に年収帯が上がっています。
年収1,800万円を超える医師は約72.4%となり、年収3,000万円以上の医師が全体の2割程度を占めています。
40代の勤務医は、勤続年数を重ねて診療部長や副院長といった役職に就いたり、若手医師や後輩の指導や勤務方針について検討したりする立場になります。
医療機関にもよりますが、役職別にみた年収の相場は以下の通りです(「Dr.転職なび」調べ)。
・診療部長:1,300万円~1,600万円
・副院長:1,500万円~1,800万円
また30代と同様に、40代も医師としてのキャリア構築の一つの節目といわれており、独立・開業に踏み切る医師が多くなります。
昨今では、開業希望の医師を歓迎する医療機関での転職求人もあります。
将来の開業に備えてクリニックの勤務医として働きながら、開業や経営に必要な知見やスキル習得を目指す医師も増えています。
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50代・勤務医の年収事情
一般的に医師としてのクオリティが最も高まり、役職に就いて大きな責任を担う医師も多くなる50代・勤務医の年収事情は以下の通りです。
年収1,800万円以上の医師が全体に占める割合は約59.8%で、年収3,000万円以上の医師も全体の1割程度です。
いずれの割合も、40代の勤務医より10%ほど低くなっています。
勤続年数を重ねて常勤先からの収入が増える一方で、体力的な問題から当直等のハードなアルバイトを控えることで総収入が減ってしまう等の理由があるのかもしれません。
勤務医が「定年」を意識し始めるタイミング
また50代の勤務医は、そろそろ「定年」が視野に入ってくる年代に入ります。
慣れ親しんだ勤務先で60歳や65歳等の定年まで勤めあげるのか、転科や転職を検討するのか。
60代を超えると、どうしても転職のハードル自体が上がってしまう傾向があるため、50代は医師が自身の大きな方向性を選択できる最後の世代といえるでしょう。
もし転職を検討する場合は、指導医の資格を有していることは強みの一つとなります。
民間病院にとって、若手医師を集めることのできる臨床研修指定病院の認定要件を満たすことは非常に重要です。
そのため、指導医としてベテランの医師を迎え入れたいという医療機関からのニーズは高くなっています。
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60代以上・勤務医の年収事情
最後に、多くの勤務医にとって「定年」が近づく60代の年収事情をご紹介します。
年収1,800万円以上の医師が全体に占める割合は約54%となり、50代の勤務医よりさらに低下しています。
民間病院で働く場合は60歳や65歳を定年として定められていることが多くなっていますが、医師自身に働く意思があれば、「再雇用制度」や「継続雇用制度」等を利用して定年以降も働ける医療機関もあります。
また病院長や副院長などの職位に就く医師は、例外として定年延長が認められるケースもみられますが、いずれにしても体力の低下等からこれまでと同様の働き方を続けることが難しくなります。
勤務日数を減らすなど働き方を考慮したうえで、常勤を続ける・定年後は非常勤で働く等、早めにキャリアプランを検討しておくと安心です。
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「勤務先別」にみる、勤務医の年収事情
続いて、医療機関の種別ごとに勤務医の年収事情を確認しました。
回答医師の勤務先は、以下のような構成となっています。
大学病院で働く勤務医の年収事情
一般的に大学病院で働く勤務医の年収帯は低いといわれており、文部科学省の「大学病院における医師の働き方に関する調査研究報告書」には以下のような記述があります。
現在 大学病院の医師の給与は、一般医療機関や国立病院機構と比べて、年収で500万円から700万円ほどの差が生じているため、大学病院の医師のほとんどは兼業や副業により給与差額分を補っているのが現状である。
出典:「大学病院における医師の働き方に関する調査研究報告書」(文部科学省)
今回の調査でも年収1,000万円以下の医師が占める割合は22.5%となり、民間病院(9.2%)のおよそ2.5倍以上となっています。
一方で年収1,800万円の医師は、20.4%にとどまります。
安定した勤務先が確保できる、専門医が取得しやすい環境が整っているといったメリットもありますが、給与が少ないことをきっかけに民間病院への転職をする医師も非常に多いのが実情です。
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民間病院で働く勤務医の年収事情
民間病院で働く勤務医の場合は、年収1,800万円を超える方が全体の50.4%を占めます。
民間病院の勤務医は、大学病院で働く医師よりも常勤先からの収入が高い傾向があります。
加えてアルバイト先も大学医局等から指示を受けた施設ではなく、自身で場所や内容も自由に選択できます。
そのためより効率的に稼げるアルバイトを探して働き、高額の副収入を得ることも可能です。
診療所・クリニックで働く勤務医の年収事情
診療所・クリニック(以下 クリニック)で働く医師の年収帯は、病院の勤務医よりバラつきがみられます。
最も多い年収帯は「1,800万円~2,000万円」で、年収1,800万円以上が占める割合は46.1%となっています。
クリニックと一括りにいっても、有する機能やそこで働く医師の仕事内容は様々です。
例えば入院機能を持たない無床クリニックでは、日中の外来診療などがメイン業務となる場合が大半です。
一方で有床クリニックや訪問診療等で夜間対応が必要になる場合には、当直やオンコール業務が発生します。
またクリニックの勤務医の中には、育児等の家庭と仕事の両立や、ワークライフバランスの改善を希望して勤務日数や時間を調整して働く医師も多く、幅広い働き方の選択肢があります。
このような背景から、クリニックで働く勤務医の年収帯にバラつきが出たものと推測されます。
健診センターや老健で働く勤務医の年収事情
最後に、健診センターや老人保健施設で働く医師の年収を確認します。
回答数が少ないものの、診療所・クリニックと同様に大きなばらつきが見られています。
健診センターは、時間外勤務が発生しづらく規則的な勤務ができるため、育児中の医師を中心に人気が高い勤務先です。
ワークライフバランスが整う働き方が実現しやすい一方で、病院や診療所等と比べて実労働時間が短いケースが多いため一般的に年収は低めとなる傾向があります。
老人保健施設(以下 老健)は、定年後を迎えた医師の再就職先となる施設の一つです。
主に入所患者の健康管理や健康指導がメインの仕事となり、病院やクリニック等と比較すると穏やかな仕事内容であるケースが大半です。
一方で多くの募集は「施設長」や「管理医師」として勤務する案件のため、年収は高めに設定されている分、経営やスタッフの管理といった医業以外の業務が発生することもしっかり認識しておく必要があるでしょう。
勤務医の年収への満足度と、年収をアップする方法
最後に、勤務医が得ている実際の年収と理想とする年収の間にあるギャップや、そのギャップを埋めるために勤務医が検討している方法をご紹介します。
勤務医の3人に1人以上は、現在の年収に不満がある
現在の年収への満足度を尋ねたところ、「かなり満足している」「まあ満足している」と回答した医師は全体の64.2%となりました。
一方で「やや不満がある」「かなり不満がある」と答えた医師は35.7%に上り、勤務医のおよそ3人に1人以上は現在の年収に不満を抱えている状況であることが分かります。
Q:現在のご自身の年収に対して、満足していますか?
さらに上記で不満があると回答した医師に、どのくらい年収が増えれば年収への不満が解消されるか尋ねたところ、約半数にあたる46%が「500万円以上」と答えています。
Q:どのくらい年収が増えれば、満足な年収であると思いますか?
なお一般企業のサラリーマンの場合は1年ごと四半期ごと等のタイミングで、実績に応じた給与見直しが行われるケースも少なくありません。
しかし医師の年収は頻回な変動はないケースが多く、今回の調査においても、常勤先の収入は「変動することはほぼない」と回答した医師が約6割を占めています。
Q:常勤先など主な勤務先からの収入は、どのくらいの頻度で変動しますか?
このように常勤先からの給与アップは望みにくい状況の中であっても年収を上げるためには、医師はどのような方法を取れば良いのでしょうか。
勤務医が年収アップするための方法①民間病院に転職する
一つ目は、民間の病院へ転職をすることです。
本調査でも、年収アップを目的として転職を検討したことがある医師は76.9%を占めています。
そのうち転職活動をした経験がある医師は42.7%、実際に転職した医師は17.7%にも上ります。
Q:年収を増やすために、転職を検討したことはありますか?
特に大学病院で勤務している医師の場合は、民間の病院に転職をすることで年収が大きく改善する可能性が高くなります。
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勤務医が年収アップするための方法②アルバイトをする
二つ目の方法は、アルバイトをすることです。
一般的に年収が低いとされる大学病院勤務の医師や、将来の開業に備えて資金を貯めたい医師等、アルバイトで収入を得ている医師は非常に多くいます。
本調査で昨年と比較して年収が増えたと回答した医師に「年収が増えた理由」を尋ねたところ、最も多くなったのは「アルバイトの回数を増やしたこと」でした。
Q:昨年と比較して、年収は増えましたか?
(上記で「増えた」と回答した医師に)
Q:昨年よりも年収が増えた理由として、当てはまるものを教えてください。(複数選択可)
医師の日勤バイトの相場は、時給10,000円程度です。
例えば日勤で8時間勤務のアルバイトに月4回入った場合、1年あたり384万円の収入増が見込めることになります。
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以上、20代~60代以上の年代別・勤務先別にみる勤務医の年収事情と年収アップの方法をご紹介しました。
勤務医の年収は、地域や経営母体、診療科、出産・子育てなどのライフイベントの有無など、様々な要因によって変動します。
上記でご紹介してきたデータを参考にしつつも、給与面だけにとらわれることなく、やりがいやQOLなども含む総合的な視点でキャリアを検討することをお勧めします。
「Dr.転職なび」では、幅広い診療科や地域、医療機関の募集を多数掲載しています。
年収アップを目指して転職やアルバイトを検討される方は、ぜひ一度ご覧ください。
◆調査概要「医師の年収に関するアンケート」
調査日:2023年11月7日~11月14日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:482