
ボーナス(賞与)は、毎月定期的に支払われる給与とは別に、夏と冬に支払われることが多い特別な給与のことです。
ボーナスで支給された金額に満足する医師がいる一方で、不満を感じて転職を視野に入れるという医師も実際に少なくありません。
本記事では、厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」のデータをもとに、年齢や経験年数、施設規模別の医師のボーナス事情と、ボーナスを増やすための方法を調べてみました。
医師のボーナスの平均額は?

厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」(※)によると、従業員10人以上の医療機関において常勤として働く医師の年間賞与その他特別給与額(ボーナス)の平均額は、1,178,100円となっています(平均年齢:45.3歳、平均勤続年数:7.7年)。
医師が毎月決まって受け取る給与は、一般企業に勤務するサラリーマンと比べて高水準ですが、ボーナスについてはそれほど高い水準ではないという傾向がみられます。
(※)本調査では、調査対象が従業員10人以上の事業所(病院、クリニック、老健施設など)の常用労働者に限定されているため、10人以下の事業所で勤務している医師は調査対象に含まれていない。
年齢別・医師のボーナス平均額
医師が受け取るボーナスは20代では低く、30代~60代前半までは年齢に比例して高くなっていくという傾向がみられます。
年齢 | 年間賞与その他特別給与額(万円) |
---|---|
~19歳 | – |
20~24歳 | 1.0 |
25~29歳 | 19.8 |
30~34歳 | 52.7 |
35~39歳 | 114.9 |
40~44歳 | 146.8 |
45~49歳 | 167.2 |
50~54歳 | 167.2 |
55~59歳 | 159.8 |
60~64歳 | 204.1 |
65~69歳 | 178.5 |
70歳~ | 55.1 |
◆20代医師のボーナス平均額は、1.0~19.8万円
20代の医師のボーナス額が低い理由は、医学部を卒業して研修医になるのが最短で25歳であること、加えて医局人事による異動や転勤も多いことによってボーナスの支給要件にある勤務継続期間を満たさないケースが多いためと推測されます。
◆30代医師のボーナス平均額は、52.7~114.9万円
専門医の資格などを取得してよりスキルを高めていく30代では、20代と比べてボーナスの支給額が格段に増えています。30代後半の医師になると、100万円を超えるボーナスを受け取る医師が多くなるようです。
◆役職に就く40~50代医師のボーナス平均額は、高額になるケースが多い
40代では、部長や診療科長などの役職に就く医師も多くなるため、さらにボーナスの支給額は増加します。
50代になると、指導的な立場や病院内の重要ポストに就く医師も出てきます。それに伴って毎月決まって支払われる基本給やボーナス支給額も増えるので、経済的なゆとりを感じやすい年代だといえるでしょう。
医療機関の規模別・医師のボーナス平均額
続いて、医療機関の規模別に医師のボーナス平均額を比較しました。
従業員(常用労働者)数 | 年間賞与その他特別給与額(万円) |
---|---|
10~99人 | 127.3 |
100~999人 | 104.5 |
1000人~ | 124.3 |
◆医師のボーナス額は、医療機関の規模による違いはない
医師の世界では、クリニック・診療所>民間病院>基幹病院・大学病院といったように、医療機関の規模と反比例して医師が得られる年収が高くなるといわれます。
一方、医師へのボーナス支給額においては、施設の規模による大きな違いや上記のような傾向はみられませんでした。
勤続年数別・医師のボーナス平均額
最後に、1つの医療機関における勤続年数からみた医師のボーナス平均額をみていきます。
~勤続1年 | 勤続1~4年 | 勤続5~9年 | 勤続10~14年 | 勤続15年~ | |
---|---|---|---|---|---|
20代 | 1.4 | 28.3 | 18.0 | – | – |
30代 | 6.8 | 60.9 | 82.3 | 86.9 | 202.2 |
40代 | 20.5 | 128.0 | 128.4 | 155.2 | 167.9 |
50代 | 16.3 | 255.5 | 179.5 | 176.0 | 164.0 |
60代 | 19.3 | 31.3 | 139.6 | 196.0 | 197.7 |
◆勤続年数によってボーナス額は増加する傾向
データが不足している20代を除くすべての世代において、勤務勤続期間に比例してボーナス支給額は増加しています。同じ勤務先で腰を据えて長く働くということが、ボーナス支給額に大きく影響するようです。
ボーナスの支給がない医療機関もある
気を付けておきたいポイントとして、ボーナスの支給を行っていない医療機関もあるということがあります。特に「年俸制」という形で雇用契約を結んでいる場合には、ボーナスが支給されないというケースが多くなっています。

◆年俸制で契約している医師は、ボーナスが支給されないケースもある
「年俸制」とは、給与の金額を1年単位で決める給与形態のことです。
ボーナスが支給されない分、もともとの基本給が高く設定されており、年収としてみるとボーナス支給がある医療機関とあまり大きな違いがないというケースも多くあります。
1年間で受け取ることができる賃金の見通しが立つので長期的な計画が立てやすいのがメリットですが、業績による評価が賞与として反映されないというデメリットもあります。
年俸制を採用している医療機関の求人を検討する際には、ボーナスの支給実績を事前に確認しておきましょう。直接聞きづらいと感じたら、転職エージェントのコンサルタントに代わりに確認してもらうのも一つの方法です。
医師がボーナスを増やすためには?

これまで見てきたデータを踏まえると、医師がボーナスを増やすためのポイントとして以下の2つがあげられます。
・一つの勤務先で、なるべく長く勤務をする
・診療部長や副院長、院長などの役職に就く
医師のボーナスは、同じ医療機関での勤続年数を重ねながら役職に就くと支給される額が増えるという傾向があります。また、勤務を重ねて診療部長や副院長、院長といった役職に就任をすることも、ボーナスの支給額にも大きく反映されるようです。
「いまの勤務先ではなく、転職してボーナスの支給額を増やしたい」という場合には、担当患者数や資格などがボーナスに反映される勤務先を選ぶ方法もあります。検討の際には、しっかりと条件を確認して、長く勤務することができる転職先を探しましょう。
なお、公開されている医師求人では、ボーナスに関する情報が限定的となっているケースが大半です。
また、ボーナスなど待遇面に関する質問は「直接 医療機関に聞きにくい…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そのようなときには、転職エージェントを活用して情報収集をすることをおすすめします。Dr.転職なびのサービスについては、こちらからご高覧ください。

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