医師の健康保持と長時間労働の是正を目的として、2024年4月から「医師の働き方改革」が始まりました。
なかでも今後の医師の働き方を大きく変えるポイントとなるのが、罰則付きの「医師の時間外労働の上限規制」です。
この規制によって医療機関では長年の課題であった医師の時間外労働への対応に乗り出すことになり、医師はこれまでのように 自由にアルバイト(外勤)をすることが難しくなります。
本稿では、2024年4月以降の医師アルバイト市場で大きな影響力を持つとされる「宿日直許可」にスポットを当てながら、医師の時間外労働時間の上限に関する概要や今後のアルバイト探しのポイントについて解説します。
医師の働き方を大きく変える「時間外労働時間の上限規制」とは
2024年4月以降、医師の時間外労働時間の上限は 原則「年960時間以下」になる
2024年から始まる「医師の働き方改革」では、医師の時間外労働を規制する上限が設けられました。
具体的には医師や医療機関の特性に応じたA~Cの3つの水準ごとに上限時間が設定され、勤務医は原則として「年960時間以下/月100時間未満(A水準)」が時間外労働時間の上限となります。
つまり2024年4月以降は、上記で定められた上限時間を超えないように医師および医療機関は労働時間を管理していくことが求められるのです。
なお この労働時間管理においては、常勤先での労働時間だけでなく、アルバイト先の医療機関における労働時間も「労働時間」としてみなされるので注意が必要です。
▶「医師の時間外労働時間の上限規制」をさらに詳しく
医療機関は、勤務医の労働時間をどのくらい把握しているのか
医師の時間外労働時間の上限規制は、医療機関が医師の勤務実態を正確に把握することを前提として成り立つものといえますが、実際にはどのくらいの医療機関が勤務医の勤務時間を把握しているのでしょうか。
2022年11月時点での、医療機関によるアンケート回答を確認してみましょう。
全勤務医の【自院】での労働時間を把握できている医療機関は53.5%
自院における勤務医の労働時間をどの程度把握しているか尋ねたところ、最も多かったのは「全ての医師について把握している」(53.5%)、次いで「大半の医師について把握している」(37.1%)、「少数の医師について把握している」(7%)となっています。
全勤務医の【副業先】での労働時間を把握できている医療機関は25.9%
さらに、自院の勤務医の副業先(アルバイト先)での労働時間をどの程度把握しているか尋ねたところ、「全ての医師について把握している」と回答した医療機関は25.9%にとどまりました。
一方の「全く把握できていない」という回答は26.9%を占めており、勤務医のアルバイト先での勤務状況を把握することの難しさが伺われる結果となりました。
上記のように2022年11月時点では、勤務医の労働時間を正しく把握している施設が多いとはいえない状況です。
ただし同調査において、68.5%の医療機関では「医師の働き方改革に向けて、医師の労働時間を管理することへの意識が院内で高まっている」と回答しています。
2024年4月に向けて多くの医療機関では、より積極的に医師の労働時間管理を進めていくでしょう。
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医師バイトの鍵を握る!「宿日直許可」に関する医師・医療機関の動向
今後より厳格に医師の労働時間を管理する医療機関が増え、医師の労働時間の実情が正確に判明した結果として「常勤先での勤務だけで、時間外労働時間の上限時間を超えてしまいそう…」という医師も少なくないことが予測されます。
では2024年4月以降は、このような医師はアルバイトができなくなってしまうということなのでしょうか?
続いて、これからのアルバイト探しにおいて重要なチェックポイントとなる「宿日直許可」に関する解説と、医師・医療機関の動向をお伝えします。
医療機関における「宿日直許可」とは?
「宿日直許可」とは、医療機関が労働基準監督署に申請し、定められた基準を満たした場合に取得できるものです。
承認を得るためにはいくつかの許可基準をクリアする必要がありますが、「常態としてほとんど労働をする必要のないこと」という考え方が大前提となっています。
いわゆる寝当直としてイメージされる勤務内容が、宿日直中に認められる業務とされています。
「宿日直許可」を取得した病院でのアルバイトは、労働時間としてカウントされない
2024年4月以降も非常勤勤務を希望する医師がぜひチェックしておきたいのが、上記の「宿日直許可」を取得している医療機関でのアルバイト募集です。
「宿日直許可」を取得している医療機関への医局派遣や副業は、原則的に労働時間としてカウントされないことになっています。
つまり、労働時間としてカウントされない「宿日直許可」を取得した医療機関であれば、時間外労働時間の上限を気にすることなく2024年4月以降もアルバイトをすることができるのです。
よって今後のアルバイト探しにおいて、募集元の施設が「宿日直許可」を取得しているかどうかは必須の確認事項となるでしょう。
狙い目は「宿日直許可」取得済み施設でのアルバイト!
いま、医師の「宿日直許可」への関心・理解度が高まっている
ここで、2022年11月に実施した医師へのアンケート結果をご紹介します。
以下のグラフは、現在 および2024年4月以降に「アルバイト探しの際に決め手となる条件」を尋ねる質問に対する回答です。
現在と2024年4月以降のいずれにおいても勤務曜日や時間・給与などが上位を占めていますが、「宿日直許可の取得状況」の回答数に注目してみると、2024年4月以降は現在の5倍以上の伸びを見せています。
◆アルバイト探しの際に決め手となる条件
2024年4月以降のアルバイト探しでは、「医療機関の宿日直許可の取得状況が重視すべきポイントとなる」とすでに認識している医師が多いということが伺われます。
続いて、以下は「宿日直許可の内容を知っているかどうか」を尋ねた質問について、2022年6月とその半年後である2022年12月の回答数を比較したものです。
◆医療機関における「宿日直許可」の内容を知っていますか?
宿日直許可の内容を「全く知らない」と回答した医師の割合は、2022年6月時点では28.4%でしたが、同年11月時点では13.9%まで大きく低下しています。
さらに、「だいたい知っている」と回答した医師は2022年6月時点の25.5%から同年11月時点で36.5%まで上昇。
「詳しく知っている」と回答した医師はまだ少ないものの、全体的には宿日直許可に対する医師の関心や理解度は上がっているといえる結果となっています。
▶「宿日直許可」について詳しく知りたい方は
およそ8割の医療機関は「宿日直許可」の取得を希望している
上記のように医師の関心や理解度が高まる中、非常勤医師を採用する医療機関側でも「宿日直許可」の取得に向けた動きを加速させています。
弊社が2022年11月時点に全国の医療機関へ実施したアンケート調査では、78.2%の医療機関が宿日直許可を取得済み、または取得を希望していることが分かっています。
▶医療機関の「宿日直許可」取得状況をさらに詳しく
医師が2024年4月以降もアルバイトするための対策
「宿日直許可」に関する情報収集は、非公開情報に強い「Dr.アルなび」がオススメ
これまでにない競争率の激化が予想される2024年4月以降も「アルバイトをしたい!」とお考えの先生は、今のうちから非公開情報に強いエージェントを活用して情報収集を始めておくことをお勧めします。
医師のアルバイト情報サイト「Dr.アルなび」は、各施設の内部情報にも精通した医療機関対応の専任スタッフを全国に配置。
「宿日直許可」の取得有無や「医師の働き方改革」への取り組み状況を含めた、一般的には公開されていない情報を入手し、会員の先生限定でご案内しています。
2024年4月から始まった「医師の働き方改革」以降のアルバイトについて不安を感じている・心配な点があるという先生は、まずはDr.アルなびのコンサルタントまでお気軽にお問い合わせください。
各医療機関の最新の状況など、先生のアルバイト探しにとって有益な情報をご案内させていただきます。
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◆調査概要
「医師の働き方改革についてのアンケート」
調査日:2022年6月23日
有効回答:1,276人
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:Webアンケート
「医師の働き方改革」以降に予測される変化についてのアンケート
調査日:2022年11月22日~11月29日
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対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
「宿日直許可、医師の労働時間管理に関するアンケート」
調査日:2022年11月1日~11月18日
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対象:全国の病院・診療所・老健など
調査方法:Webアンケート