まもなく、新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行されてから初めての年末年始を迎えようとしています。
コロナ禍では感染対策の観点から多くが開催自粛となっていた忘年会・新年会ですが、医療業界においては現在どのような状況なのでしょうか。
本記事では、会員医師を対象に行った「年末年始に関するアンケート」の調査結果をもとに、医師の忘年会・新年会事情や、人との接触機会が多くなる年末年始に気を付けたいポイント等をお伝えします。
【2022年-2023年】医師の新年会・忘年会事情
医局・医師ならでは?過去の忘年会・新年会エピソード
一年の労をねぎらい、職場や友人・家族などが集まり語らう忘年会・新年会ですが、医師にとってはどのような場となっているのでしょうか。
最初に、これまでに参加した忘年会や新年会で、医師や医局「特有」と感じた慣習や、印象に残っているエピソードを尋ねました。
◆一発芸を披露
・その年に入職した人が、必ず一発芸をするという義務がありました。(50代/病理診断科/勤務医(大学病院以外の病院))
・入局初の忘年会では新人は芸をしなければならず、1年目の研修医で集まってダンスの練習をした。(50代/婦人科/勤務医(健診施設や老健など))
◆会費が高額
・大学の医局にいたときは、ホテルで行う忘年会に強制参加させられた。会費が高く、薄給の身にとっては苦痛だった。(60代/麻酔科/勤務医(大学病院以外の病院))
・医師の会費だけ、格段に高い。(30代/一般内科/勤務医(大学病院))
・学年が上になると、費用負担が増える。(40代/リウマチ科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆ダンスやビンゴなどで盛り上がる
・勤務先の病院でDJをして、忘年会がダンスパーティーになった。(50代/血液内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・ビンゴゲームで、職員互助会からの景品がある。(60代/一般内科/勤務医(診療所・クリニック))
・田舎の忘年会・新年会は、派手。都会では、希少な裸芸も残っている。(30代/泌尿器科/勤務医(大学病院))
◆人脈を作る機会になる
・色々な人に出会える場であった。(50代/一般外科/勤務医(大学病院以外の病院))
今回の年末年始、約4割の医師は勤務先の忘年会・新年会が「ある」
上述のように医師たちの思い出や印象に残るエピソードも多い忘年会・新年会ですが、ここ数年は新型コロナ禍の影響で開催自粛となっていたケースが多いのではないでしょうか。
しかし今年5月には、新型コロナウイルスが感染症法上で「5類」に移行されたことから、忘年会・新年会を開催する企業や医療機関も増えているようです。
本調査では、今回の年末年始に勤務先での忘年会・新年会が「開催される」と回答した医師は全体の42.7%に上りました。
一方の「開催されない」は44.2%の僅差となり、5類移行で忘年会・新年会を復活させる医療機関とそうでない医療機関が二極化している状況と推察されます。
Q:ご勤務先の忘年会や新年会は、開催されますか?
医師の勤務先忘年会・新年会への参加意欲や、参加する理由は?
次に、職場の忘年会・新年会に対する医師の参加意欲や、参加する理由について調査しました。
約6割の医師は、勤務先の忘年会・新年会に参加
上記で「開催される」と回答した医師を対象に参加予定を尋ねところ、最多となったのは「参加する予定」(59%)です。
Q:ご自身は、参加するご予定ですか?
上記のグラフが示すように、参加する医師の割合は「参加しない予定」(32.3%)のおよそ2倍となっており、忘年会・新年会が開催される勤務先で働いている医師は、積極的に参加する傾向があるようです。
年代別では「20代」の医師が最も参加意欲が高い
最近では職場の忘年会への参加をボイコットする「忘年会スルー」という言葉が流行する等、若者を中心に忘年会が敬遠される傾向があると言われています。
・コロナ禍で、宴会がなくなって良かった。もう一生参加しない。(50代/精神科/勤務医(大学病院以外の病院))
さらには、上記のコメントにあるように新型コロナウイルスの感染拡大で忘年会の開催自体が減ったことで、忘年会・新年会離れがさらに進んだという見方もあるようです。
それでは医師についても、若年層を中心とした忘年会・新年会離れが進んでいるのでしょうか。
本調査における、年代別の参加意欲は以下の通りです。
勤務先の忘年会・新年会に「参加する予定」とした医師の割合が最も高くなったのは、意外にも一番若年層である「20代」(80.0%)の医師でした。
一方で「参加しない予定」の医師の割合は「70代以上」(50.0%)が最も高くなっており、全体的に若手医師の方が実は参加意欲が高く、ベテランになるにつれて参加意欲が低くなっていく傾向がみられます。
勤務先別では、「開業医」「大学病院の勤務医」の参加意欲が高い
次に、勤務先によって忘年会や新年会への参加意欲に差があるか確認しました。
上記グラフのように、勤務先の忘年会・新年会への参加意欲が突出して高いのは「開業医」(87.5%)です。
少人数で運営していることも多いクリニック・診療所では、医師(開業医)はその職場の中心的な存在です。
よって周囲のスタッフの士気を高めるためにも、会への参加が求められるケースも多いのかもしれません。
この開業医に次いで参加する予定の医師の割合が高いのは、「勤務医(大学病院)」(71.1%)でした。
これは、同じ病院で働く医師である「勤務医(大学病院以外の病院)」(56.4%)の、約1.3倍にあたる数値です。
大学病院で働く医師は、上下関係がはっきりと決まっている大学医局に属しているケースが大半です。
このような風土の中で、上司や先輩医師の誘いを断りづらかったり、医局内で昔から決められている慣習に逆らえなかったりした結果、仕方なく参加を決めている医師も少なからずいるかもしれません。
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医師が、勤務先の新年会・忘年会に参加する理由は?
続いて、医師が職場の忘年会・新年会に参加する目的を尋ねました。
Q:参加する理由として、当てはまるものを教えてください。(複数回答可)
一緒に働く方たちとの「親睦を深めたい」医師が多い
上記のように、同僚や看護師・コメディカル・上司・後輩といった職場の仲間との「親睦を深めたい」という理由が上位を占めました。
美味しいお酒や料理を囲みながらともに過ごす時間を設けて、業務中とは違ったコミュニケーションを取ることで打ち解け合ったり、部署を越えて交流ができたりする良い機会であると捉えている医師が多いようです。
誘いを断りづらく、仕方なく参加するケースも
その一方で、「忘年会・新年会の誘いを断りづらい」ため参加するという回答も4番目に多く集まっています。
日頃の業務を忘れて楽しんでもらいたいという思いから、忘年会や新年会を開催する医療機関が多いはずです。
しかし、半ば強制的に参加させられたり、嫌々参加したりしている医師も実際は少なくないのかもしれません。
制限は必要?コロナ5類移行後初・年末年始の過ごし方
年末年始は、会食や帰省・旅行・外出といった楽しい予定や人とのコミュニケーションが特に増える時期です。
一方で感染対策の観点から、「本当に行っても大丈夫なのだろうか…」と迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
最後に、新型コロナウイルスの5類移行後初となる今回の年末年始の過ごし方について、医師の意見を聞きました。
医療従事者に対する、年末年始の会食・行動に関する「制限」は必要?
医師などの医療従事者に対する行動制限の必要性について尋ねたところ、「あまり必要ではない」(46.5%)が最多となりました。
Q:医師をはじめとする医療従事者に対する「年末年始の会食や行動に関する制限」は必要だと感じますか?
「全く必要はない」(28.5%)と合わせて7割を超える医師は、医療従事者への行動制限は必要ないと考えていることが分かります。
上記のように感じる理由として、以下のようなコメントが寄せられています。
◆あまり必要ではない
・COVID-19とインフルエンザは5類であり、厳密な行動制限は不要と感じるから。(40代/小児科/勤務医(大学病院))
・医療従事者であれば、救急外来を忙しくさせるような行動は自主的に規制するはずだと考えています。(50代/健診・ドック/勤務医(非常勤のみ、フリーランス))
・プライベートは自由だから。(40代/脳神経外科/勤務医(非常勤のみ、フリーランス))
・ワクチンをうっているから。(40代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆全く必要はない
・経済効果の面から。(40代/泌尿器科/勤務医(診療所・クリニック))
・休みなので、制限を設ける必要性はないと思う。(30代/一般外科/勤務医(大学病院以外の病院))
・法的な制限はない。医療従事者だから制限すると言うなら、それはただの差別である。(30代/整形外科/勤務医(非常勤のみ、フリーランス))
・制限は必要ないが、自分で身を守る気持ちは必要だと思います。(40代/産婦人科/勤務医(診療所・クリニック))
一方で、医師などの医療従事者に対する行動制限は必要とする声も寄せられています。
◆必要である
・インフルやコロナが再燃してきているため。(60代/一般内科/勤務医(健診施設や老健など))
・COVID-19よりも、ノロウイルスが気になる。(50代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・職場での感染症のアウトブレイクは、絶対回避すべき。(60代/消化器外科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆大いに必要である
・コロナは終わらない。(30代/健診・ドック/勤務医(大学病院))
約8割の医師は「全ての人への行動制限は必要ない」と回答
続いて、医療従事者に限定しない全ての方に対する年末年始の会食・行動への制限の必要性について尋ねました。
Q:医療従事者に限らない、全ての方に対する「年末年始の会食や行動に関する制限」は必要だと感じますか?
こちらも医療従事者に対する考えと同様に「あまり必要ではない」(48.3%)という回答が最多であり、「全く必要はない」(30.8%)と合わせて、約8割の医師は全ての方への行動制限は必要ないと考えているようです。
◆あまり必要ない
・「体調が悪い人は出歩かない」という原則を守れば、元気な人が制限を受ける必要はない。ただし、この原則を守れないなら話は違います。(50代/一般内科/勤務医(非常勤のみ、フリーランス))
・制限の根拠がない。(60代/精神科/勤務医(診療所・クリニック))
・もう色々考えなくて良いのでは?キリがないです。(50代/皮膚科/勤務医(大学病院以外の病院))
・個人の自由を制限する必要はないと思います。(50代/健診・ドック/勤務医(非常勤のみ、フリーランス))
◆全く必要ない
・COVID-19、インフルエンザは5類であり、厳密な行動制限は不要と感じるから。特に非医療従事者であればなおさら。(40代/小児科/勤務医(大学病院))
・会食等によらず、感染するときは感染するから。(40代/救急科/勤務医(大学病院以外の病院))
・人として生きる以上、避けられない病原体を無理に避けない方が、身体・メンタルにも良いのでは。(60代/一般内科/勤務医(健診施設や老健など))
一方で、「大いに必要である」「必要である」と回答した医師も全体の約2割を占めており、以下のような意見が寄せられています。
◆必要である
・これまでもこの方法でコロナ感染、インフルエンザ感染を乗り切ってきた。(50代/病理診断科/勤務医(大学病院以外の病院))
・すでに習慣になっている。(60代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・マスクは、感染予防に必要不可欠な状態である。(50代/脳神経外科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆大いに必要である
・当然だから。部屋の加湿も重要である。(50代/一般内科(訪問診療)/勤務医(診療所・クリニック))
・(医療機関の)人手が少ない年末年始に受診しないで済む対策を、一般の方にもして欲しい。(30代/一般内科/勤務医(大学病院))
以上、2022年-2023年の医師の忘年会・新年会事情や、人との接触機会が増える年末年始の行動に関する考え方に関する調査結果をお伝えしました。
昨年に続き、今回も新たな制限のない年末年始を迎えます。
以前のように全ての人に一律に課される制限がない中ではありますが、自分を守るために、そして家族や友人・職場など周囲への影響を考慮した上で満喫することが肝要となりそうです。
◆調査概要「年末年始の過ごし方に関するアンケート」
調査日:2023年12月5日~12月12日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:536
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