2024年度の診療報酬改定では、「医療機能に応じた入院医療の評価」をポイントとして、各病棟の評価に細かな見直しや変更等が実施されています。
なかでも今回の改定では、地域包括医療病棟が新設され、注目を集めました。
地域包括医療病棟とは、これまで高度急性期や急性期病床が対応してきた軽症・中等症の高齢者救急の受け皿となる「サブアキュート」の機能に特化した病棟です。
本記事では、この地域包括医療病棟をはじめとする各病棟(地域包括ケア病棟、急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病床)の2024年度診療報酬改定における変更点と影響について、医療経営のプロである株式会社Rakusaiの濵岡さんにわかりやすく解説いただきました。
濵岡 勇介(はまおか ゆうすけ)
株式会社Rakusai
大学卒業後、大手都市銀行での法人貸付審査や中小企業再生支援に従事。
医師人材紹介会社に転職し、事務職紹介や医師採用コンサルティングを経験。病床転換コンサルティング事業の新規サービス立ち上げを経験。
その後医療経営の実情を知るため、病院の事務長に転職。事務長勤務、在宅医療事務管理職、クリニック立ち上げを経たのち、2023年エムステージグループに参画。
現在は株式会社Rakusaiに在籍し、医療機関の経営支援事業に従事している。
目次
2024年度診療報酬改定のポイントは、「医療機能に応じた入院医療の評価」
Q:今回の改定内容に至った背景として、厚生労働省が今課題と捉えているのはどのようなことなのでしょうか?
急性期病院に救急搬送される高齢者が増えている
厚生労働省は、今回の診療報酬改定における主なポイントとして「医療機能に応じた入院医療の評価」を掲げており、中でも「高齢者救急への対応」はその柱となる部分といえます。
高齢化が進み続ける現在の日本では、以下のように高齢者の救急搬送件数が増加している状況があります。
消防庁が救急車の適切利用を啓発していることから、小児、成人での軽症、中等症での救急搬送数は減少していますが、高齢者は軽症、中等症での救急搬送数が増加しています。
出典:厚生労働省医政局地域医療計画課、災害等緊急時医療・周産期医療等対策室「救急医療について」
病床の医療資源と、患者の状態・疾患のミスマッチ
また厚生労働省は、救急搬送される患者の疾患・状態と、高度急性期や急性期病床が担うべき医療資源の間にあるミスマッチを是正したいとも考えています。
現在は、軽症・中等症の高齢患者の多くが急性期機能を備えた医療機関に搬送されています。
そのため急性期で働く医師や看護師等の業務負担は非常に大きくなっている一方で、地域のケアミックス病院等への救急搬送数は少ないといった偏りがみられる状況です。
このような偏りを是正するために、今後は救急患者の状態に応じた医療機能を持つ医療機関に搬送すること、そして急性期病棟が果たすべき医療機能に集中させることを目指して今改定で新設されたのが「地域包括医療病棟」です。
2024年度診療報酬改定で新設された「地域包括医療病棟」とは
Q:地域包括医療病棟に期待される役割等を教えてください。
軽症・中等症の高齢患者を受け入れ、早期リハ介入で在宅復帰を推進
地域包括医療病棟は、これまで高度急性期や急性期病床が対応してきた軽症・中等症の高齢者救急の受け皿となる「サブアキュート」の機能に特化した病棟です。
常勤の理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハ職や管理栄養士の配置が施設基準となっており、下図のように多職種による高齢患者への早期リハビリ介入により在宅復帰までの期間短縮を目指していきます。
◆地域包括医療病棟入院料(1日につき)3,050点
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【入院Ⅰ(地域包括医療病棟)】」
Q:従来の「地域包括ケア病棟」と「地域包括医療病床」の違いを教えてください。
「地域包括ケア病棟」はポストアキュート、「地域包括医療病床」はサブアキュートの病棟
名前はよく似ているのですが、それぞれが担う役割は大きく異なります。
まず地域包括ケア病棟ですが、当初は急性期病棟での治療を終えて容態が安定した患者が入院する「ポストアキュート」、加えて軽症の患者が直接搬送され入院する「サブアキュート」という両方の機能を備えた病床として運営する想定でつくられました。
ただし、実際には「ポストアキュート」の病床として使われているケースが大半です。
一方の地域包括医療病棟は、基本的には軽症や中等症の患者が直接搬送され、入院することが想定されている「サブアキュート」の機能に特化した病棟です。
なお、地域包括医療病棟入院料の算定要件では、同じ病院内における急性期病棟からの転棟患者の割合が定められています。
(8)当該病棟において、入院患者に占める、当該保険医療機関の一般病棟から転棟したものの割合が5%未満であること。
引用:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【入院Ⅰ(地域包括医療病棟)】」
つまり、従来の地域包括ケア病院のようなポストアキュートとしての役割を制限するルールが設けられており、地域包括医療病棟はあくまで「サブアキュート」としての役割がメインとなるように誘導されていると捉えられます。
2024年度診療報酬改定における「地域包括ケア病棟」に関する変更点と影響
Q:地域包括ケア病棟は、今改定でどのような評価の見直し等があったのでしょうか?
逓減制が導入され、41日目以降の入院点数が下がった
地域包括ケア病棟は、最大60日までの入院が可能な病棟です。
従来は入院日数に関わらない入院料が定められていましたが、今回の改定で以下のように入院期間に応じた評価体系に見直されました。
◆地域包括ケア病棟入院料
現行 | 改定後 |
---|---|
地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料1 2,809点 | 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料1 40日以内 2,838点 41日以降 2,690点 |
地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料2 2,620点 | 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料2 40日以内 2,649点 41日以降 2,510点 |
地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料3 2,285点 | 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料3 40日以内 2,312点 41日以降 2,191点 |
地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料4 2,076点 | 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料4 40日以内 2,102点 41日以降 1,992点 |
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【入院Ⅲ(回復期)】」
このように「40日以内」と「41日目以降」という区分で入院点数が定められており、「41日以降」では従来よりも点数が下がっています。
なお、地域包括ケア病棟における平均在院日数は30日未満なので、41日以降も入院している対象患者はそれほど多くはないかもしれません。
参照:厚生労働省 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会))「令和5年度調査結果(速報)概要」
ただし、41日以降入院している患者の場合、継続的治療が必要であり在宅復帰が困難であるケースが多いと推察されます。
そのため「41日以降」に該当する入院患者が多い医療機関では、投資する医療資源を要する一方で診療報酬点数が下がるため、病院経営にとってはマイナスの影響が出てしまう可能性があるでしょう。
2024年度診療報酬改定における「高度急性期・急性期病棟」に関する変更点と影響
Q:続いて、高度急性期・急性期病床に関する変更内容を教えてください。
今回の改定は、とくに「急性期一般入院料1」を算定している医療機関にとっては厳しい改定となりました。
「急性期一般入院料1」の平均在院日数が短縮された
今回、急性期一般入院料1の病棟における実態を踏まえ、急性期一般入院基本料1における平均在院日数の要件が18日以内から16日以内へ短縮されました。
◆急性期一般入院基本料
現行 | 改定後 |
[施設基準] 当該病棟の入院患者の平均在院日数が21日(急性期一般入院料1にあっては18日)以内であること。 | [施設基準] 当該病棟の入院患者の平均在院日数が21日(急性期一般入院料1にあっては16日)以内であること。 |
平均在院日数が減ることによってベッドの稼働率が下がりやすくなってしまうため、急性期病棟の経営にとっては大きな懸念点となるでしょう。
重症度や医療・看護必要度のルールが見直された
さらに看護基準が7:1である急性期一般入院料1では、高齢患者で点数が高くなりやすい「B項目」が評価対象から外されたことも、非常に大きな変更点といえます。
急性期一般入院料の算定時要件である看護必要度は、A項目・B項目・C項目の3つに分別されていますが、今回除外されたB項目は「自身で起き上がりが可能か」「車いすに自分で移乗できるか」といった患者さんの状態を表す指標であり、高齢者であればあるほど点数が高くなりやすい傾向があります。
現行の急性期一般入院料1では、A項目に関する得点が2点以上かつB項目に関する得点が3点以上の患者という要件を満たすことで算定が可能でした。
その結果、重症患者が多く入院しているわけではなく、高齢の入院患者が多いことによって看護必要度の要件をクリアして急性期一般入院料1を算定する病院が少なくないという状況が発生していたのです。
厚生労働省はこのような状況の軌道修正を図るべく、急性期一般入院料1の算定要件からB項目を削除したという流れになります。
◆急性期一般入院料1
現行 | 改定後 |
[施設基準] 当該入院基本料を算定するものとして届け出た病床に、直近3月において入院している患者全体(延べ患者数)に占める重症度、医療・看護必要度Ⅰ又はⅡの基準を満たす患者(別添6の別紙7による評価の結果、別表1のいずれかに該当する患者の割合が、基準以上であること。 別表1 A得点が2点以上かつB得点が3点以上の患者 A得点が3点以上の患者 C得点が1点以上の患者 | [施設基準] 当該入院基本料を算定するものとして届け出た病床に、直近3月において入院している患者全体(延べ患者数)に占める重症度、医療・看護必要度Ⅰ又はⅡの基準を満たす患者(別添6の別紙7による評価の結果、別表1のいずれかに該当する患者の割合が基準以上であるとともに、別表2のいずれかに該当する患者の割合が基準以上であること。 別表1 (基準:20% ※必要度Ⅱの場合) A得点が3点以上の患者C得点が1点以上の患者 別表2 (基準:27% ※必要度Ⅱの場合) A得点が2点以上の患者C得点が1点以上の患者 |
厚労省が目指す「急性期病棟数の削減」につながる側面も
このようにB項目が評価されなくなることで、急性期一般入院料1を算定する病床からは高齢の入院患者が減っていくと推察されます。
これは、「急性期病床を減らしていきたい」という厚生労働省の目指す病床構成とも整合性がとれる施策といえるでしょう。
厚生労働省が2016年度時点で掲げていた2025年度の高度急性期・急性期病棟の推計数は53.1万床でしたが、実際には目標通りの形を実現できていません。
2021年度の病床機能報告によると、2021年度時点の高度急性期病床・急性期病床はあわせて70.5万床で、2025年度の見込みは69.6万床となっており、目標の53.2万床とはまだ大きな乖離がある状況が続いていることがわかります。
出典:厚生労働省「2021年度病床機能報告について」
Q:B項目が要件から削除されたことで、急性期一般入院料1を維持できなくなる病棟も多いのでしょうか?
そうですね。
B項目が評価されなくなることで、これまでの入院料を維持できなくなる医療機関は一定数出てくると思います。
今回の改定を受けて、このまま急性期一般入院料1の施設基準を維持していくのか、もしくは急性期一般入院料2~6または地域包括医療病棟に転換するのか等、自院の方向性を検討する必要に迫られるのではないでしょうか。
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【入院Ⅰ(地域包括医療病棟)】」
「急性期一般入院料1」を維持するなら、早期リハへの取組で収益を補填する必要がある
もし急性期一般入院料1を維持していきたい場合は、今改定で推進される早期リハビリ介入への対応が必要となるでしょう。
今回の改定では、早期リハビリテーションに関する評価として「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」が新設されています。
急性期病棟におけるADL低下の防止等を効果的に行うため、より早期からの多職種によるリハビリテーション実施を評価するものです。
◆リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(1日につき) 120点
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【入院Ⅱ(急性期・高度急性期入院医療)】」
なお施設基準では、リハ職の配置や、土日・祝日における1日あたりの疾患別リハビリテーション料の提供単位数が平日の8割以上といった要件が定められています。
また、重症患者の病態に応じて行う早期からのリハビリテーションの評価として、「急性期リハビリテーション加算」も新設されました。
◆急性期リハビリテーション加算 50点(14日目まで)
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【個別改定事項(Ⅰ)】」
この「急性期リハビリテーション加算」では、医療機関内にリハビリテーション科の常勤医師の配置が施設基準となっていますので、今後は急性期病院におけるリハビリテーション科体制の充実が求められるようになるでしょう。
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なお、急性期病棟では急性期疾患への「治療」が優先されるため、リハ職の配置基準がありません。
ですのでリハ職の人員に余裕はなく、土曜日や日曜日のリハ提供を求めている施設基準を満たした上で早期リハに取り組むことは、ややハードルが高い印象があるかもしれません。
しかし、ここまでご紹介してきたような改定内容の影響で、入院患者数が減少し、入院料が減収となってしまう急性期病棟は少なくないでしょう。
マイナスとなった収益を補填するという観点から、今後は早期リハに積極的に対応していく急性期病棟が増えると考えられます。
「救急患者連携搬送料」では、下り搬送を評価
高齢者救急の受け入れが急性期病院に偏っていることへの対応策として新設された「救急患者連携搬送料」についても、内容を確認しておきましょう。
◆救急患者連携搬送料
1 入院中の患者以外の患者の場合 1,800点
2 入院1日目の患者の場合 1,200点
3 入院2日目の患者の場合 800点
4 入院3日目の患者の場合 600点
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【重点分野Ⅰ(救急医療、小児・周産期医療、がん医療)】」
これは、三次救急医療機関等の救急搬送件数が年2,000件を超える医療機関に搬送された患者について、連携する他の医療機関でも対応が可能と判断する場合、初期診療を実施した上で連携する他の医療機関に転院搬送した場合に算定が可能となります。
いわゆる、「下り搬送」を評価する報酬項目ということですね。
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【重点分野Ⅰ(救急医療、小児・周産期医療、がん医療)】」
送り出し側となる三次救急医療機関では、医師の担当患者が減ることによって業務負担の軽減に繋がりますし、受け入れ側となる医療機関でも、初期診療を終えた状態で患者を受け入れられることは大きなメリットとなるのではないでしょうか。
ただし、事前に双方の医療機関で送り出しや受け入れに関するルールを事前に決めておく必要があるでしょう。
2024年度診療報酬改定における「回復期リハビリテーション病棟」に関する変更点と影響
Q:続いて、回復期リハビリテーション病棟に関する変更点を教えてください。
回復期リハ病棟に関しては、2点のポイントで大きなマイナス改定となりました。
これらの変更・見直しによって、回復期リハビリテーション病棟を持つ医療機関の収入面には大きなマイナス影響が見込まれています。
運動器リハの上限単位数が「最大6単位まで」に制限された
1点目は、運動器疾患に対するリハビリテーションの提供単位数の上限が1日6単位までに制限されたことです。
これまで中医協総会等では、運動器疾患に対するリハビリテーションについて、「実施単位数に応じた評価について検討が必要」と指摘されていました。
実際に、一般社団法人回復期リハビリテーション協会「2022年度 回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する調査報告書」によると、1日6単位以上の運動器リハビリテーションを実施する患者について、単位数の増加に伴うADLの明らかな改善はなかったことが明らかになっています。
この結果を受けて、今改定では運動器リハビリテーションの提供数には「1日6単位まで」という上限が設けられることになりました。
出典:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)「入院(その3)回復期入院医療について」
体制強化加算が廃止された
2つ目は、体制強化加算が廃止されたことです。
体制強化加算とは、病棟に専従の常勤医師1名以上および専従の常勤社会福祉士1名以上を配置する等の施設基準を満たした場合に、以下の点数を算定できる評価です。
◆体制強化加算(※2024年6月以降は廃止)
体制強化加算1(1日につき) 200点
体制強化加算2(1日につき) 120点
しかし、体制強化加算の届出がある医療機関とない医療機関のアウトカム指標を比較したデータでは、入退棟時のFIM(機能的自立度評価法)には大きな差がみられないことがわかりました。
このような現状を踏まえ、今改定では体制強化加算が廃止されることになりました。
出典:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)「入院(その3)回復期入院医療について」
なお、体制強化加算が廃止されると、常勤医師の専従要件がなくなります。
つまり、現在回復期リハビリテーション病棟で勤務している専従医師は、他の業務と兼任も可能な専任でもよくなるということを意味します。
そのため、これまで回復期リハビリテーション病棟で専従医として勤務していた医師は、病棟業務に加えて、今後は外来診療も担当するようになる等、仕事内容への影響が出てくる可能性もあるでしょう。
急性期病棟の早期リハ介入による影響で、対象患者が減る
加えて、急性期病棟における早期リハ介入が推進される流れは、回復期リハビリテーション病棟の収益にとって一定の影響があると考えられます。
回復期リハビリテーション病棟の施設基準では、リハビリ実績指数の要件があるので、急性期病棟での早期リハ介入が実施されることで、回復期リハビリテーション病棟の実績指数があがりにくくなる影響が出ると考えています。
入院患者のFIM得点を大きく改善することが難しくなり、実績指数をクリアすることが難しくなる可能性が出てきます。
今回の診療報酬改定は、急性期病棟に関する見直し等が明確に厳しくなっているものの、上述のように実際に大きなしわ寄せを受けるのは回復期リハビリテーション病棟であるという見方もできるでしょう。
2024年度診療報酬改定における「療養病棟」に関する変更点と影響
Q:続いて、療養病棟に関する変更点を教えてください。
なお「Dr.転職なび」が実施した医師へのアンケートでは、今改定による経営悪化を懸念する声が最も多くあがっていたのは、療養病棟で働く先生方でした。
Q:今回の改訂で、ご勤務先の経営にはどのような影響があると思いますか?
入院基本料の基準を、9種類から30種類に細分化
今改定で「自院の経営にはマイナスの影響がある」と多くの先生方がみておられることは、大変正確に状況を把握なさっていると感じます。
今回の療養病棟に関する評価では、入院基本料が従来よりもかなり細分化されたことが大きなポイントとなっています。
これまでの療養病棟入院基本料は、「医療区分」と「ADL区分」の2つの基準で患者の状態を評価していました。
具体的には、「医療区分」の3分類に「ADL区分」の3分類を掛け合わせた合計9分類で、A~Hの9つの点数で算定をする形でした。
今回の改定では、このうち「医療区分」という項目を、「疾患・状態に係る医療区分」と「処置等に係る医療区分」という2つの区分に細分化しました。
結果として、「疾患・状態に係る医療区分」3分類に「処置等に係る医療区分」の3分類、さらに「ADL区分」3分類を掛け合わせた27分類にスモンの患者に関する3分類を加えて、あわせて30種類の入院基本料に分けられたのです。
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【入院Ⅳ(慢性期入院医療)】」
「処置等に係る医療区分」の点数が低い場合は、入院基本料が下がる
区分が細分化されたことよる影響として、従来の区分よりも「医療区分」が低くなるケースが増えると推察されます。
とくに、今まで療養病棟入院基本料2を算定しており、かつ医療処置が多くなかった医療機関等は点数が下がりやすいと考えられます。
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【入院Ⅳ(慢性期入院医療)】」
2024年度診療報酬改定における「精神病棟」に関する変更点と影響
Q:最後に、今改定における精神病棟に関する変更点等を教えてください。
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの概念が示された
今まで医療・介護・地域が連携して高齢者を支援していく地域包括ケアシステムには、精神障害を持った患者に関する概念が含まれていませんでした。
しかし今改定では、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの概念が示されました。
このことにより、今後はさらに多くの関係者が連携を取りながら、精神障害を持つ方への支援体制の構築を目指すことになります。
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【重点分野Ⅱ(認知症、精神医療、難病患者に対する医療)】」
患者の地域移行や定着に向けた支援を行う「精神科地域包括ケア病棟」
今回新設された「精神科地域包括ケア病棟」は、精神障害を持つ患者の地域移行・地域定着に向けて多職種が連携し、在宅復帰を目指していく精神科領域の回復期機能を持つ病棟です。
精神科地域包括ケア病棟における評価である「精神科地域包括ケア病棟入院料」は、精神科救急急性期医療入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料(精神科救急急性期医療入院料等)を算定した期間と通算して180日まで、以下の点数を算定できます。
◆精神科地域包括ケア病棟入院料1,535点(1日につき)
出典:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【重点分野Ⅱ(認知症、精神医療、難病患者に対する医療)】」
患者の在宅復帰を多職種で推進する「精神科入退院支援加算」の新設
また、精神病棟に精神病床に入院する患者に対して、入院早期から包括的支援マネジメントに基づく入退院支援を行った場合の評価として「精神科入退院支援加算」が新設されました。
◆精神科入退院支援加算 1,000点(退院時1回)
看護師や精神保健福祉士が障害福祉サービス等と連携を図りながら、精神疾患を持つ患者の在宅復帰を支援していくことが重点施策として取り組まれることになります。
今回は、2024年度診療報酬改定のポイント解説の第三弾として、「入院医療」に関する診療報酬改定の要点を、株式会社Rakusaiの濵岡さんに伺いました。
あわせて「賃上げ対応」「生活習慣病管理」「医療DX」についての解説記事も公開しておりますので、ぜひご覧ください。
◆調査概要「2024年度診療報酬改定に関するアンケート」
調査日:2024年3月5日~12日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:439