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【施行まで1年半】医療機関における「医師の働き方改革」の進捗を調査

【施行まで1年半】医療機関における「医師の働き方改革」の進捗を調査

「医師の働き方改革」の施行開始まで、残すところ1年半を切っています。

2024年4月に向けて、医療機関では長年の課題とされてきた医師の長時間労働への対応を求められていますが、実際にははどのくらい準備が進んでいるのでしょうか。

本記事では、「医師の働き方改革」の進捗と健康経営の取り組み状況について医療機関へ実施したアンケート調査をご紹介しながら、2024年以降の医師の働き方について考えていきます。

医師の転職時、「医師の働き方改革」の進捗は重視されている

2022年6月に弊社で実施した医師へのアンケートでは、医師の働き方改革の進捗状況を「重視する」「まあ重視する」とした医師は全体のおよそ86%を占めました。

このことから「医師の働き方改革」の進捗状況は、医師が今後のキャリアを検討するうえでも大きなポイントとなっていることが分かります。

▼「医師の働き方改革」についての医師へのアンケート結果はこちらから▼

医療機関の「医師の働き方改革」への準備状況は?

「医師の働き方改革」への準備状況は?

ここからは、医療機関における「医師の働き方改革」への取り組み状況や進捗をみていきましょう。

医師の働き方改革への準備が「順調」な医療機関は、約2割

「医師の働き方改革」への準備状況については、「順調に進んでいる」20.8%、「やや進んでいる」37.5%、「あまり進んでいない」35.8%、「全く進んでいない」5.8%となりました。

約6割の医療機関においては取り組みが進んでいるものの、順調と回答した医療機関は約2割にととどまっています。

医師の働き方改革への準備が「順調」な医療機関は、約2割

なお、約1年前の2021年8月に弊社で実施した医療機関への働き方改革アンケートでは、「準備が進んでいる」と回答した医療機関は66%で、うち36%が「順調に進んでいる」と回答していました。

「順調」の回答割合が減少している要因としては、働き方改革に着手できていなかった医療機関の取り組み開始、働き方改革に必要な取り組みの周知が広まる中で追加の対応に取り組む医療機関の増加、22年度の診療報酬改定や新型コロナ対応といった他業務による遅れ、などが考えられます。

一方で「全く進んでいない」と回答した医療機関は14%から5.8%へ減少しており、ほとんどの医療機関で取り組みをスタートしていることが分かりました。

なお、厚生労働省が2022年6月に公表した「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」においても「副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間をおおむね把握していると回答した病院は39%」となり、働き方改革に向けた準備が進んでいるとは言い難い結果でした。

時間外労働の上限規制に必要な、労働時間の把握が出来ていない医療機関が多かったことから「今回の調査では病院の準備状況等、総合的な評価は困難」という結論になっています。

「医師の労働時間」に関する対応・準備状況は?

医師の労働時間に関する対応・準備状況は?

「長時間労働者への面談指導」を実施する医療機関は4割に満たず

月100時間超の時間外・休日労働を行う労働者は、産業医等による長時間労働の面接指導を受ける必要があります。過労により健康リスクが高まった労働者の状況を把握し、必要な指導を行うことが目的です。

長時間労働医師への面接指導の実施状況について質問したところ、「産業医資格を持つ院内の勤務医師」での実施が26.7%、「院外の産業医」で実施が10.8%となり、現時点で長時間労働医師への面談指導を実施している医療機関の割合は37.5%にとどまりました。

長時間労働医師への面接指導

なお「医師の働き方改革」においては、医師の長時間労働に大きな変化をもたらすと推測される労働時間の上限規制や、追加的健康確保措置の実施が求められることになります。

労働時間の上限規制とは?

労働基準法32条による一般的な業種における法定労働時間は、「1日8時間まで(休憩時間1時間を除く)」「1週あたり40時間まで」と定められています。

この法定労働時間を超過した場合の労働を「時間外労働」といいます。

2024年4月以降に適用がはじまる労働時間の上限規制では、医師や医療機関の特性に応じて上限となる時間が定められ、すべての勤務医は原則「年960時間以下/月100時間未満」(A水準と呼ばれる基準)をベースに労働時間を管理することとなります。

なお、この上限を超えて労働させた場合、使用者は労働基準法違反として罰せられる可能性があります。

追加的健康確保措置とは?

労働時間の上限規制によって定められる水準の対象となる医師の健康や医療の質を確保するための措置として実施が求められるのが、追加的健康確保措置です。

措置の内容は水準によって設定されており、すべての勤務医が該当するA水準の場合には以下の内容となります。

・「産業医などによる面接指導と就業上の措置」(義務)

・「連続勤務時間の制限(28時間)」(努力義務)

・「勤務間インターバル」(9時間以上)」(努力義務)

健康経営への取り組み状況は?

次に、医療機関が従業員の心と体の健康管理のために実施する施策についての調査結果をご紹介します。

9割以上の医療機関は産業医を選任、メンタルヘルスに配慮している

従業員50名以上の事業場においては、産業医の選任義務があります。

産業医の選任状況について質問したところ、「院内の産業医資格を持つ医師を選任」60.9%、「院外の産業医を選任」35.8%、「選任していない」0.8%、「わからない」2.5%となりました。

産業医の選任状況

院内の産業医、院外の産業医を合わせると、96.7%の医療機関が産業医を選任しており、選任義務のない事業場規模の医療機関も含めて、おおむね殆どの医療機関が産業医を選任できていることが分かりました。

応召義務や当直のある勤務形態、中小規模の事業場が多く労務管理や労働法の専門家が配置されづらいなど、医療機関における労働衛生の対応への難易度は一般企業に比べても高いものとなります。

さらに、医療専門職である医師に対する指導やドクターストップなどの判断にも、豊富な労働衛生や法令の知識が求められるため、高い専門性を持った産業医の選任が求められています。

従業員の「働きやすさ」に向けて医療機関が取り組んでいることは?

産業医選任など以外に、働き方改革や従業員の健康管理について実施しているものを質問したところ、TOP3は1位「衛生委員会の実施」、2位「ハラスメント相談窓口の設置」、3位「勤怠管理システムの導入」となりました。

健康管理で実施しているもの

厚生労働省によると、精神障害の労災支給決定件数に占める精神障害発症の原因となった具体的な出来事として、ハラスメントに関するものが最も多くなっていますが、今回の調査結果からはハラスメント対策に対して医療機関の意識が高まっていることが伺われます。

また、勤怠管理システムの導入や有給取得や残業規制などの人事制度改革、多職種とのタスクシフト/タスクシェアといった働き方改革に向けた取り組みを始めている医療機関も増えていることが分かります。

「医師の働き方改革」の進捗を進めるために必要なことは?

「医師の働き方改革」の進捗を進めるために必要なことは?

改革を進めるうえで高い壁となっているのは「意識改革」

働き方改革および従業員の健康管理を進める上で難しいと感じていることについて質問したところ、TOP3は1位「従業員に対する教育/研修の実施」35%、2位「連続勤務時間の制限」25%、3位「勤務間インターバル9時間の確保」25%となりました。

改革を進めるうえで高い壁となっているのは「意識改革」

今回の働き方改革の中心となる労働時間の措置に関する回答が上位を占めましたが、「従業員に関する教育/研修の実施」が最も大きな課題であるということが分かりました。

自由記述回答では、「面談を促しても受けてくれない」 、「必要性の認識不足」、「医師同士の面談を敬遠されがち」、「トップの考えが古い」などの意見があることから、長時間労働を抑制する様々な施策を導入するものの、従業員の意識改革が最も難しいと感じている医療機関が多いと考えられます。

▼働き方改革および従業員の健康課題解決への取り組みについての自由記述

時間外労働の上限規制の課題

・医師が少ない地方病院は、かかりつけ医の機能も持ち合わせつつ救急外来を担っており、インターバル勤務、連続勤務の制限等を厳守すると現在の医療が提供できなくなる。(病院(A水準予定)、100~299名)

・拘束時間のみで考えることには違和感がある。(病院(水準は未定)、1000名以上)

・医療崩壊を招く可能性が高い。(病院(水準は未定)、500~999名)

・中小規模の医療機関が24時間365日稼働する中で、働き方改革を進めることに限界がある。一部の役職者においては、定時で始業・終業は現実的に困難。(病院(C水準予定)、100~299名)

・勤務時間と研修の切り分けが難しい。(病院(A水準予定)、500~999名)

・働き方改革や従業員の健康課題の解決は重要なものであると考えているが、実施するためには増員が必要となる場合もあるため、それを担保する方策も一緒に国から提示してほしい。(病院(水準は未定)、100~299名)

宿日直・休日の対応について

・医師の働き方改革に伴う、労働基準監督署への宿日直許可申請がなかなか難しく、審査基準が厳しいために断念する医療機関もあると聞く。当院はようやく許可が取れた。(病院(水準は未定)、~99名)

・日当直は保健所への届出により勤務扱いとならないが、現状は未届のため連続勤務とみなされる可能性があり、不安である。(病院(A水準予定)、~99名)

・週休日および祝日等の出張医による当直に課題がある。(病院(A水準予定)、100~299名)

▼宿日直許可に関する詳しい解説は、こちらをチェック!

2024年4月に向けた医療機関の動きに、引き続き注目しよう

2024年4月に向けた医療機関の動きを、引き続き注目しよう

労働時間の上限規制などにより、医師のみならず医療業界全体への大きな影響が推測されている「医師の働き方改革」ですが、その意義は医師の健康確保、そして医療の質の確保を実現することにあります。

医療人材不足による過重労働や、命と向き合う24時間体制の勤務形態、医師・多職種・患者さん等の全方位的に複雑な人間関係など、医師の就業環境は心身の不調を引き起こしやすい環境でもあります。

長年の課題とされてきた「医師の長時間労働」に大きくメスが入る医師の働き方改革が始まる2024年4月まで残すところ1年半を切り、今後はますます医師の長時間労働の削減やメンタルへルスケアに取り組む医療機関が増えていくと考えられます。

それぞれの医療機関の働き方改革の進捗や取り組み姿勢に着目しながら、2024年以降のご自身の働き方について考える機会としてみてはいかがでしょうか。

▼調査概要

アンケート実施日:2022/9/7~2022/9/13

有効回答 :120院

対象   :全国の医療機関

回答方法 :Webアンケート調査

回答者属性:

属性

Dr.転職なび編集部

ライター

Dr.転職なび編集部

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