勤務医の平均年収は、中央社会保険医療協議会の調査によると約1,445万円とされています。
では年代や性別、勤務先、診療科、都道府県別にみた場合、どのくらいの平均年収になるのでしょうか。
本記事では、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」やDr.転職なびが保有する求人データから、さまざまな指標から見た医師の平均年収をご紹介します。
目次
働き方別にみる医師の平均年収
中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」(令和3年)によると、医療法人や国公立病院、大学病院などで働く勤務医の平均年収(※)はおよそ1,445万円です。
一方開業医の平均年収はおよそ1,704万円で、勤務医と比べて高い給与水準であることが分かります。
勤務医(※) | 1445.3万円 |
開業医 | 1704.5万円 |
(※)中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」(令和3年)をもとに編集部作成
(※)「国立」「公立」「公的」「社会保険関係法人」「医療法人」「その他」「法人その他全体」の「平均給料年(度)額」と「賞与」を合計した金額の平均値を算出。
性別にみる医師の平均年収
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」による男女別の医師平均年収は、男性でおよそ1,514万円、女性で1,138万円となっています。
性別 | 平均年収 | 平均年齢と平均勤続年数 |
---|---|---|
男性 | 1514.8万円 | 45.6歳、6.6年 |
女性 | 1138.3万円 | 39.1歳、4.7年 |
男女計 | 1428.9万円 | 44.1歳、6.2年 |
※厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」をもとに編集部にて作成
※企業規模計(10人以上)のデータを参照。「きまって支給する現金給与額」×12(か月)に「年間賞与その他特別給与額」を合計。
女性医師の平均年収は、男性と比べて400万ほど低い結果となっています。
女性医師の場合は、育児や出産などのライフイベントによって勤務時間や日数に制約が出てしまうケースが多いことなどが背景にあるのかもしれません。
年齢別にみる医師の平均年収
引き続き、厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」にて年代別の医師平均年収を確認したところ、以下のような結果でした。
年代 | 平均年収 | 平均年齢と平均勤続年数 |
---|---|---|
20代後半 | 696.2万円 | 27.8歳、1.1年 |
30代前半 | 969.2万円 | 32.2歳、1.7年 |
30代後半 | 1420.9万円 | 37.5歳、2.7年 |
40代前半 | 1474.6万円 | 42.5歳、5.2年 |
40代後半 | 2005.0万円 | 47.6歳、7.2年 |
50代前半 | 1817.1万円 | 52.5歳、9.5年 |
50代後半 | 1881.7万円 | 57.5歳、12.0年 |
60代前半 | 1824.9万円 | 62.2歳、11.1年 |
60代後半 | 1846.4万円 | 67.2歳、14.7年 |
70代以上 | 1588.8万円 | 74.9歳、17.7年 |
※厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」をもとに編集部にて作成
※企業規模計(10人以上)のデータを参照。「きまって支給する現金給与額」×12(か月)に「年間賞与その他特別給与額」を合計。
全体的には年齢を重ねるにつれ平均年収も高くなり、30代後半では1,000万円を超えるケースが多いようです。
また40代後半の2,000万円越えをピークにして、以降は緩やかに低下していく傾向もみられます。
▼年代別の年収や働き方について、さらに詳しく解説
勤務先別にみる医師の平均年収
続いて、中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」(令和3年)にて経営母体別の医師平均年収を確認していきます。
経営母体 | 平均年収 |
---|---|
医療法人(医療法人である民間病院など) | 1,506万円 |
公立(都道府県立、市町村立、地方独立行政法人立病院など) | 1,472万円 |
法人その他全体(私立大学の付属病院、社会福祉法人、一般社団法人、一般財団法人など) | 1,467万円 |
社会保険関係法人(健康保険組合及びその連合会、共済組合及びその連合会など) | 1,427万円 |
公的(日本赤十字、済生会、厚生連、北海道社会事業協会など) | 1,384万円 |
国立(国、国立大学法人、独立行政法人国立病院機構、国立高度専門医療研究センターなど) | 1,323万円 |
その他(公益法人、医療生協、社会医療法人、学校法人、その他の法人など) | 1,535万円 |
※中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」をもとに編集部にて作成
同じ勤務医であっても経営母体によって医師の平均年収は異なり、なかでも医療法人(民間病院)で働く医師の年収帯は高めの水準であることが分かります。
▼経営母体別にみた医師の「働き方」も分かりやすく解説
診療科別にみる医師の平均年収
次に、勤務医に提示される診療科別・年収額の下限値平均を、医師向けの転職求人サイト「Dr.転職なび」に掲載中の常勤募集の求人票をもとに算出しました。
本記事では、上位10の科についてご紹介します。
診療科 | 求人票における提示年収の「下限値」平均 |
---|---|
美容外科 | 2178.6万円 |
美容皮膚科 | 1838.8万円 |
形成外科 | 1651.6万円 |
訪問診療(内科、精神科、皮膚科など) | 1564.2万円 |
心療内科 | 1485.6万円 |
皮膚科 | 1431.5万円 |
産婦人科 | 1418.0万円 |
整形外科 | 1385.9万円 |
耳鼻咽喉科 | 1378.6万円 |
精神科 | 1336.2万円 |
※2023年5月時点で「Dr.転職なび」に掲載中の常勤医師求人票をもとに、編集部作成。
※診療科別に分別した求人票内の基本給与額のうち下限値の合計をデータ数で割り、目安となる値(「年収平均値(下限)」とよぶ。)を算出。
上記のように、常勤医師の求人票における基本給与額の下限値が最も高くなったのは美容外科で、次いで美容皮膚科、形成外科という結果となりました。
さらに詳しい診療科別・提示年収額ランキングは、以下の記事からご確認ください。
▼実際の医師求人情報をもとに算出した診療科別の「提示年収額」のランキングはこちら
都道府県別にみる医師の平均年収
最後に厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」から、都道府県別の医師平均年収のトップ3とワースト3を確認していきます。
◆都道府県別・医師の平均年収ワースト3
鳥取県 | 585.9万円 |
和歌山県 | 785.7万円 |
富山県 | 862.3万円 |
※厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」をもとに編集部にて作成
一般企業などの場合は、地方に比べて都心の年収の方が高いというケースが多くありますが、医師の場合は異なる実情がみられます。
大都市圏である東京都は994.5万円、大阪府で1167.0万円、福岡県で920.8万円となっており、都心で働く勤務医の平均年収が特別高いという状況ではないことが伺われます。
地方では慢性的な医師不足となっているエリアもあり、医師に対する需要の高さから高額年収が提示される場合もあるでしょう。
また医師が不足していることにより医師一人あたりが担う業務量が多く、労働時間が長くなってしまうことも一因となっているかもしれません。
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医師が年収を上げるためには「転職」も1つの方法
では、医師が「今より年収を上げたい」と思ったときには、どのような方法が有効なのでしょうか。
医師の年収は、勤務先によって大きく変動する
医師の勤務先には、国公立病院や大学病院、民間病院、クリニックなど様々な選択肢があります。
より専門性の高い症例や最新の医療技術を経験できるなど、医師としてのスキルを高められることが大きな魅力の大学病院ですが、年収面では民間病院と大きく差があります。
現在、大学病院に勤務している医師であれば、民間病院に転職をすることで大幅に年収を上げることができる可能性があります。
年収を上げたい医師にとって「転職」は有効な手段
ここで、実際に「Dr.転職なび」を利用して転職を成功させた医師のデータをご紹介します。
「年収アップ」を目指して転職する医師は多い
転職理由として最も多いのは「人間関係」、次いで「収入アップ」、「長時間労働」となっています。
半数以上の医師が、転職によって年収を上げている
続いて、今回の転職で「年収が上がったかどうか」を尋ねました。
週5日勤務から週4日勤務など、働き方の変更等が背景となり「年収が下がった」というケースも24.4%ありますが、半数を超える55.6%の医師は転職によって年収がアップしたと回答しています。
なお、全体のおよそ6割の医師は「300万円以上年収が上がった」と回答しており、中には700万円以上年収が上がったという医師もいます。
2024年4月からの「医師の働き方改革」施行開始まで、あとわずかです。
「医師の働き方改革」では、常勤先・非常勤先での労働時間が減ってしまうことから収入減を懸念する医師も少なくないようです。
この機会に医師転職市場にも精通した「Dr.転職なび」のコンサルタントとご一緒に、ご自身の年収や働き方について考えてみませんか?
◆調査概要
調査日:2021年11月下旬
対象:Dr.転職なびを介して、2020年4月~2021年8月に入職した医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:98